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インタビュー

Ben Folds

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年04月28日 16:00

更新: 2005年05月12日 19:08

ソース: 『bounce』 264号(2005/4/25)

文/桑原 シロー

ベン・フォールズがソロ2作目となる新作を発表した。深みを増した楽曲群から見えてくるのは、ピアノを相手にステップを踏む〈ポップの魔術師〉の真摯な姿だ!!


「僕の歌の自己採点かい?(爆笑) 聴く人にお任せするよ。まぁ、ピアノ一台でのツアーも長くやってるし、少しはマシになったかも」。

 とにかく、スロウな曲でのふくよかな歌唱が素晴らしいのである。かつてと比べて歌の表現力が格段に向上しているし、楽曲を普遍的な領域へ運んでいく力も増している。つまり、たまらん感動作なのである、このベン・フォールズのニュー・アルバム『Songs For Silverman』は。

 2001年のファースト・ソロ・アルバム『Rockin' The Suburbs』は、自分でドラムもやるし、ギター・ロックっぽくも展開するし、明確にベンの新機軸を打ち出した作品だった。〈自分がどこに行けるのか試したい〉──アルバムからはそんなベンの声が聞こえてきたものだった。その後は正真正銘ソロ・ライヴ・アルバムをリリースしたり、限定で5曲入りEPを3作連続でリリースしたり、足もとを確認しつつ自分のペースでここまでやってきた。そして今回、ベン・フォールズ・ファイヴ時代のスタイルがふたたび用いられることになる。

「結局レコーディングに入れば、ピアノとベースとドラムの編成になるんだよな。それがいまの僕の〈声〉なんだ。すべてを一人でやっちゃう手もあるけど、そういうサウンドはいまなぜかしっくりこないんだ」。

 ベースはジャレッド・レイノルズ、ドラムスはリンジー・ジェイミソン、二人ともベンとはご近所さんで、彼の音楽を理解している演奏仲間だ。リラックスして素直な気持ちで音楽に打ち込んだら、こんな結果(スタイル)になった。ここにはまったく変な狙いなどは存在しない。当然ながら〈ベン・フォールズ・ファイヴ再編!〉なんていう面白ニュースにはなりません。

 ところで、2004年春にいったん完成させていたアルバムがあるという話だが、それを白紙に戻した理由を訊きたい。

「よく訊かれるんだけど、そんなに深刻な話でもないんだ。まぁ、一人ってことに固執する時期もあったけど、そういう作業が長く続くうちに、またバンドをやりたくなって。もっと衝動的に作りたくなったというか、一人ぼっちに飽きたというか……。前作では、意識的にひたすら以前とは違うことをめざした。だからギターをふんだんに採り入れたけど、僕はギターをてんで理解していないとわかったんだ(笑)」。

 このあっけらかんとしたところが、まったくベンらしいというか……。なにより、気が楽になって何でもアリって気分を獲得し、すんなりとレコーディングが行われたってわけだ。ポップで人懐っこい〈ベン印〉のメロディーとサウンドはもちろん健在。それよりもカントリー風味などを採り入れたりと、メロウな味わいの曲が増えており、先に書いたヴォーカル力のレヴェルアップ具合がはっきりとわかる。あのアル・ヤンコヴィック先生(以前から友達だったらしい)が誠実なコーラスを聞かせる“Time”や、エリオット・スミスの死を惜しんで作られた“Late”などには最高点の採点を差し上げたい。

「昔と違って声を張り上げればいいってわけでもない。今回はそのスタイルにふさわしくない曲調のものも多いからね。でも、これまでヴォーカルについての質問や批評ってあんまりされなかったな。シンガーとしては無視されてるってことなのかもね。もっと自己主張するべきかな(笑)」。

 なにより感じるのは、〈いま自分が作るべき音楽、書くべき曲〉と思える楽曲が隈なく収められているってこと。音楽家として自覚的な創作活動を行っている現在のベンが、このアルバムから見えてくるところに感動するのだ。

「ここ何年か、まるで方位磁針みたく、あっちに振れ、こっちに振れって感じで試行錯誤を繰り返してきた。そしてその時々で〈あぁ、僕はついに辿り着いた〉と思うんだけど、またすぐべつの方向をめざしてしまうんだ。決してそこに嘘はないんだよ。やっぱり、いろいろ試したい欲も出てくるわけ。でも、常にありったけの正直さをもって音楽を作ってるし、いいと思う音楽を作ってることに迷いはない。今回トリオに戻ったのもそういうことの表れかもね。原点回帰と言われるけど、そうなのかもしれないって僕自身も思うんだ」。

 やっぱ、ベン、あなたは誠実なミュージシャンだよ。現実やさまざまな問題を正面に見据えた音楽作りを、(俺なんかに言われなくたって)これからも行っていくのだろう。また泣かされました。
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