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インタビュー

インディア・アリー(2)

黒人であることを強調されなくていい

 シンプルで落ち着いた場所に心の安らぎを求める……という発言はそっくりそのまま“Little Things”の歌詞にも当てはまる。そして同曲の最後では〈私には(華やかな)ハリウッドは必要ない〉と締めるのだが、それでいながら曲のベースにルーファス(&チャカ・カーン)の“Hollywood”を敷いているあたりが、何ともニクい。

「それはミュージシャン的ジョークってやつね(笑)。もちろんルーファスは好きよ。そう、で実はあの曲のヴィデオにチャカ・カーンに出てもらおうと思って電話をしたんだけど、結局お互いすれ違いになっちゃって……」。

 チャカ・カーンとは親しいというインディアだが、彼女は同郷のローネイともかなり親しいようで、新作にバック・コーラスとして起用しているばかりか、今回の来日公演にも同行させていた。

「昔、アトランタのクラブで毎週金曜日にインディー・レーベルが主宰するイヴェントがあって、そこで私やエイヴリーのバンドも歌ってたんだけど、そのうちにローネイも歌うようになって知り合ったの。まあ、彼女とは音楽をいっしょにやるというより友達という感覚のほうが強いけど……とっても心の美しい女性よ。料理も上手だし(笑)」。

 また、新作では恋人と噂される(あくまでも噂らしい)ミュージックがヴォーカル・アレンジで参加しているのだが、そういえば彼女、デビュー前にはフィラデルフィアで行われている〈Black Lily〉にも出演していたとか。

「そう。キンドレッド(フィリーの夫婦デュオ)と92年ぐらいからの知り合いで、その後、彼らに誘われて参加したの。フィリーとアトランタって雰囲気から何から凄く似ていて、もしアトランタ以外に住むなら絶対にフィリー。それぐらいフィリーは自分の心に近い場所なの」。

 こう答えるインディアは、インタヴュー中、ソファではなく木製の椅子を選び、裸足の両足を木目調のテーブルに置いていた。ヴェジタリアンでもあるそうで、とにかくオーガニックな雰囲気を漂わせていたのだ。そこで、最後に〈オーガニック・ソウル〉や〈ネオ・ソウル〉という言葉についてどう思うか、訊いてみた。

「あまり好きな言い方ではないけど、私のような音楽を説明する時には必要なことだとは思っている。まあ、〈ネオ・ソウル〉よりは〈オーガニック・ソウル〉のほうがマシかな。ただ、私自身がやってる音楽はソウル・ミュージック。自分のなかではジェイムス・テイラーやボニー・レイットだって心温まるソウルフルなシンガーだし、同じ位置にジル・スコットやミュージックがいるって感じなの。だから私も若さとか黒人であることを強調されるシンガーじゃなくていい。そういえば以前〈スピリチュアルR&B〉って言われて、それはクールだと思ったけど……自分としては〈グッド・ミュージック〉だと思ってるから、できればタワーレコードなんかのショップにそういうカテゴリーがあったら嬉しいわね(笑)」。

 いい音楽に理屈はいらない……。そんなあたりまえのことを、『Voyage To India』は改めて教えてくれる。


シャノン・サンダース『Outta Nowhere』(Southern Way)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年10月31日 12:00

更新: 2003年02月13日 12:12

ソース: 『bounce』 237号(2002/10/25)

文/林 剛