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インタビュー

Spencer Dickinson

ブルースを、ロックンロールを、その剥き出しのエモーションでアップデイトする男 、ジョン・スペンサー。新たなる挑戦作は、ノース・ミシシッピ・オールスターズのディッキンソン兄弟との合体ワザから繰り出される、ワイルド&リラクシンな一撃だ! !

 最近ちょっとゴブサタ感のあったジョン・スペンサー。まぁ、どっかの国をツアーしては、相変わらず各地でブルースを炎上させているのだろう……な~んて思ってたら、〈ミシシッピまで出向き、古い納屋を使った手作りスタジオでレコーディングし てた〉との情報入手。なんとも怪しげにしてクールな話じゃありませんか! ガレー ジ・パンクならぬ納屋パンクか!? ジョンいわく「なかなかファンキーな場所」で密 造されていた新作『Spencer Dickinson』、そうこれこそがジョン・スペンサーとデ ィッキンソン兄弟のニュー・プロジェクト〈スペンサー・ディッキンソン〉のデビュ ー・アルバムなのです! えっ? そのディッキンソン兄弟って誰だって? ジョンの紹 介によると――「コーディーとルーサーのディッキンソン兄弟はノース・ミシシッピ ・オールスターズってバンドをやっていて、日本では有名じゃないかもしれないけど 、アメリカではとても人気があるんだ」。

数年前、ジョンは彼らのショウを初めて観て「ガツン! とやられた」ばかりか「この2人といっしょにレコードが作りたい!」と思うまでの惚れ込みようで、2000年に入ってジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン(以下、JSBX)が長期休暇 に入るとともに、このプロジェクトに取り組むこととなったのだ。さて、この兄弟を 語る前に紹介せねばならない人物がいる。それはほかでもない、彼らの実父ジム・ディッキンソン(ジェイムズ・ルーサー・ディッキンソン)である。

「ジム・ディッキンソンっていうのはメンフィスの伝説的なプロデューサーなんだ 。ジムはピアニストとしても有名で……ボブ・ディランやローリング・ストーンズなんかとも仕事をしている。俺はジムのファンで、彼はずっと憧れの存在だった。いや 、憧れ以上かもな。彼の一挙手一投足、呼吸までもが音楽そのもので、ソウルを感じるんだ。彼の中には綿々と刻まれてきた歴史があって、そこに培ってきたものがある 。そこには次世代に伝えていくべきものがあるんだよね」。

そんなジムのソウルを伝承せんとジョンがタッグを組んだのが、その実息たちとあ らばまさに鬼に金棒! わかりやすく言えば力道山の息子・百田兄弟とジャイアント 馬場のタッグみたいなものである(わかりやすくないか……)。

「彼らはずっと音楽の中で育ってきててさ。それは父親の影響だけじゃなく、ミシシッピという土地が持っている独特の音楽環境――カントリー・ブルースをはじめ、 素晴らしい音楽がプレイされてきた環境――で育っているからね」。

だからこそ本作はロックンロールのルーツに根差したうえで、ロックの過去と現在 と未来を同時に見せつけてくれる内容となっている。

「ほとんどの曲は3人でプレイしながら作った。このアルバムは3人の感性を形にしたものなんだ。それにJSBXとは違う、僕らしい実験的なものが出来たし、リラックス しながら伸び伸びやれたよ」。 

この凶暴な共謀ともいうべき本作の爆発感はJSBXと同質ながらも、よりプリミティ ヴでスピリチュアル。JSBXが魂を揺さぶる音楽ならば、本作では魂そのものが揺れ動 いているかのような衝撃あり。まぁ、とはいえ勢いまかせでガレージーな熱演一辺倒 なだけではなく、録音場所の納屋に差し込む陽光を思い浮かべさせるレイドバックし たリズムの曲もあったりする。ともかく、このジョンとディッキンソン家のブルース ・ブラザーズの合体による化学反応は、巷でまた新たなエクスプロージョンを巻き起こすこと間違いなしだ!!

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年05月16日 22:00

更新: 2003年03月03日 23:24

ソース: 『bounce』 227号(2001/11/25)

文/恒遠 聖文