Naxos~2025年6月発売新譜情報(9タイトル)
CD(9タイトル)
■作品詳細
今回は能を題材にした細川俊夫のオペラ《二人静 - 海から来た少女 -》とフルート協奏曲「セレモニー」に、田所光之マルセルによるヘンゼルトのエチュード全集、オーベールの序曲集第8集、フローレンス・プライスのピアノ、ヴァイオリン協奏曲集、ポッペンとケルン室内管弦楽団によるモーツァルトのミサ曲全集第6集、アレクセイ・ショールの作品集第4集など、世界初録音を含むCD9タイトルがリリースされます。
世界初録音
細川俊夫:管弦楽作品集 第5集~二人静 - 海から来た少女 -、セレモニー(日本語解説&歌詞訳付)
準・メルクル(指揮)ハーグ・レジデンティ管弦楽団
能を題材にした細川俊夫のオペラ《二人静 - 海から来た少女 -》と「セレモニー」
能に強い関心を持つという細川俊夫によるオペラ《二人静》。細川はこれまでにも《班女》《松風》《海・静かな海》など、能を現代化したオペラを創作してきていますが、この《二人静》は、能の同名作品を基に、平田オリザが地中海に漂着した難民少女と静御前の悲劇を重ねて新たに脚色した日本語の物語によるものです。《大鴉》(2014)と姉妹関係をなす作品として、アンサンブル・アンテルコンタンポランの委嘱により作曲され、2017年にパリで初演されました。また2021年8月にはサントリーホールの「サマーフェスティバル2021」で日本初演が行われ、深い感動を呼んだのも記憶に新しいところです。アルバムでは初演者の能声楽家、青木涼子とソプラノのイルゼ・エーレンスが幽玄な世界を神秘的に歌い上げています。
フルート協奏曲「セレモニー」は、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団とアンサンブル金沢の共同委嘱により、2021年10月から2022年3月にかけて作曲、初演者エマニュエル・パユに捧げられました。細川はソリストを「人」、オーケストラを「自然や宇宙」と捉え、今回はシャーマン(呪術師)と彼が呼びかける世界を象徴する構図を採用しています。フルートを通じて「息=霊魂・精霊」が音となって現れ、5部構成の儀式的な音楽が展開されます。フルート奏者は、フルート、アルトフルート、ピッコロを持ち替えながら演奏し、最終的に自然に溶け込み「鳥」となるイメージで終わります。パンデミック中に作曲された本作は、終息への祈りも込められた作品です。彼の友人にして良き理解者の準・メルクルが指揮するハーグ・レジデンティ管弦楽団は、ドラマティックな抑揚と繊細な音色を巧みにいかし、作曲家のイメージを余す所なく伝えます。
※作曲者による日本語解説と、歌詞の日本語テキストが付属いたします。
(ナクソス・ジャパン)
アドルフ・フォン・ヘンゼルト(1814-1889):エチュード全集 Op. 2、Op. 5 他
田所光之マルセル(ピアノ)
※国内仕様盤には上田泰史氏の日本語解説が付属します。
【田所光之マルセル、待望のデビューCD。ロシア・ピアノ楽派の栄光の原点、ヘンゼルトのエチュード全集で颯爽登場!】
英『Gramophone』誌で「心と指が完全に一致し、どんな音楽でも自在に操ることができる真の音楽家」と称賛されたピアニスト、田所光之マルセルのデビューCDがNAXOSレーベルより登場。リヒテル、ギレリス、キーシン等など、綺羅星のような名ピアニストを輩出する「ロシア・ピアノ楽派」の礎を築いたとされるヘンゼルトのエチュード全集です。
1814年にドイツに生まれたアドルフ・フォン・ヘンゼルトは 幼少期から音楽の才能を示し、ウィーンでフンメルやゼヒターに師事。ウェーバーの音楽に深く傾倒し、14歳でその幻想曲を演奏してデビューを果たしました。1838年からは移住先のロシアで活動。ピアニストとして高度な技巧を持つ彼の演奏と教育はロシア・ピアノ楽派の発展にも寄与しました。ヘンゼルトは1曲ずつ異なる調性で書かれた練習曲を残しており、その中で技巧の伝授に加えて芸術作品としての価値を追求しています。各曲にフランス語で詩的なタイトルが付された「12の演奏会用性格的エチュード」作品2は、激しい嵐のような情熱を描く第1番、親密な情感が込められた第2番や第3番など、弾き手は内面的な情感を解釈して伝える力量が問われます。第6番の「もしも私が鳥だったら、お前の元へ飛んでゆくのに」はラフマニノフも愛奏した曲として有名。「12のサロン用エチュード」作品9では、第1曲「エロイカ」はベートーヴェン風の力強い音楽、第3曲「魔女のダンス」は悪魔的な情景を想起させるなど、タイトルも曲の性格もより直接的となっていますが、いくつかの曲はタイトルが空白のまま残され、弾き手の想像力に委ねられています。1876年出版の「練習曲 イ短調」は、複雑に交錯するリズムと個性的な旋律が融合、1841年出版の「ゴンドラ・練習曲」は水の描写を巧みに表現した短いながらも印象的な作品です。
※国内仕様盤には上田泰史氏の日本語解説が付属します。
(ナクソス・ジャパン)
世界初録音
ダニエル=フランソワ・オーベール(1782-1871):序曲集 第8集 - スペインのヴァンドーム、王冠のダイヤモンド 他
ダリオ・サルヴィ(指揮)ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団
かつてロッシーニやスッペに並ぶ人気を誇ったオーベールの音楽は、活気と優雅さ、舞踏的なリズムにあふれています。この序曲集第8集は前作と同じくダリオ・サルヴィが指揮するヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団の演奏です。
1823年の《スペインのヴァンドーム》は、スペイン・トレドを舞台にした祝典的な抒情劇で、オーベールとエロールが音楽を分担。ファンダンゴやボレロなどスペイン風のリズムが全編にちりばめられ、オーベールは後にこの作品の序曲を《フラ・ディアボロ》に再利用しました。《許婚》はナポレオン戦争後のウィーンを舞台にしたオペラ・コミックで、自由や結婚による地位の向上といったテーマを描いています。序曲にはオーストリアの軍歌風の旋律も登場し、パリで成功を収めました。《王冠のダイヤモンド》は、王妃カタリナが宝石を使って国家を救おうとする物語。序曲は勇ましいギャロップやファンファーレで彩られ、バロック風の「サラバンド」では登場人物の葛藤が表現されています。《放蕩息子》は聖書の寓話をもとにしたグランド・オペラ。序曲では主人公の旅立ちと悔い改めが描かれ、第2幕の「バレエ音楽」は聖なる雄牛アピスの祭で披露される5つの舞曲。後にアシュトンによって『レ・ランデヴー』として独立したバレエ作品に再構成され、1933年に初演されました。「シリアに旅立ちながら」はオルタンス・ド・ボアルネが作曲し、フランス第二帝政時代に非公式ながら国歌に準じる扱いを受けていた歌。オーベールによって、金管楽器と打楽器を拡張したフル・オーケストラ用に編曲されています。
(ナクソス・ジャパン)
ゴッフレード・ペトラッシ(1904-2003):管弦楽のための協奏曲 第4番-第6番
フランチェスコ・ラ・ヴェッキア(指揮)ローマ交響楽団
ゴッフレード・ペトラッシはイタリアの作曲家、教育者、指揮者で、ローマのサルヴァトーレ教会で聖歌隊員を務めた後、サンタ・チェチーリア音楽院で学び、教師としても活動、1937年から1940年にかけては、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場の監督を務め、現代音楽のフェスティバルを主宰しました。彼は管弦楽のための協奏曲を全8曲作曲しています。第4番は弦楽器のみで演奏される曲。緻密なポリフォニーが際立つ第1楽章など聴きどころの多い作品です。1956年4月28日にフェルナンド・プレヴィターリが指揮するRAI国立交響楽団によって初演されました。第5番は、ボストン交響楽団の創立75周年記念の委嘱作。1951年に亡くなった指揮者セルゲイ・クーセヴィツキーへの追悼も込められています。第6番は、BBCの「サード・プログラム」の開始記念の委嘱作で、副題「協奏的創意」が示す通り、全体にわたってソロ・パートの活躍の場が多くあります。
(ナクソス・ジャパン)
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791):ミサ曲全集 第6集 - K. 49、65、220、257
クリストフ・ポッペン(指揮)ケルン室内管弦楽団、ケルン大聖堂合唱団&声楽アンサンブル
モーツァルトはザルツブルク宮廷に仕えていた若き日々に、多くのミサ曲を作曲しました。中でも12歳のときに書かれた優美なミサ・ブレヴィス K. 49や、1776年に完成した劇的なハ長調「クレド」K. 257は、宗教音楽に力を注いだこの時期の代表作です。「クレド」ミサは、反復される「クレド」のモチーフを軸に、ドラマティックな構成と舞台音楽的手法を取り入れた独創的な作品で、ザルツブルク時代の代表的作品の一つとされています。ミサ・ブレヴィス K. 65は、1769年にザルツブルクの徹夜祈祷のために書かれたもので、厳粛さや敬虔さを表すとされるニ短調という調性が、宗教的儀式の荘厳な雰囲気を強調しています。一方、ミサ・ブレヴィス K. 220は、サンクトゥスに見られる鳥のさえずりのようなモチーフから「すずめのミサ」と呼ばれ、金管と打楽器が効果的に使われています。全体を通して、明るさと喜び、そして終曲の合唱による深い平安が印象に残る作品です。
(ナクソス・ジャパン)
アレクセイ・ショール(1970-):作曲家のノート 第4集 - 音楽の巡礼、マンハッタンの四季
ジョン・ワーナー(指揮)マッシミリアーノ・カルディ(指揮)ドミトリ・ヤブロンスキー(指揮)キーウ・ヴィルトゥオージ
NAXOSの人気シリーズ、現在ニューヨークを拠点に活動するウクライナ出身のアレクセイ・ショールの作品集。第4集はチェロとヴァイオリン協奏曲を中心に、多彩な小品を収録した1枚です。
チェロ協奏曲第1番「音楽の巡礼」は、過去の音楽様式への敬意と現代的な感性が融合した作品。第1楽章は新古典主義風に始まり、やがてロマン派の技巧的なスタイルへと展開。第2楽章では、チェロが主役としてオーケストラを力強く導き、緊張感を湛えた情感豊かな音楽が繰り広げられます。終楽章では独特なリズムによるタンゴが登場し、古典的な音楽に現代的な刺激が入り混じったユニークな結末を迎えます。
ヴァイオリン協奏曲第3番「マンハッタンの四季」は、ヴィヴァルディやピアソラの「四季」作品の伝統を受け継ぎながら、現代の大都市マンハッタンを舞台に、春夏秋冬の移ろいを色彩豊かに描いた作品です。どの楽章も親しみやすい旋律と表情豊かな音楽が魅力で、技巧的なソロときらめくオーケストラの音色が見事に溶け合い、最後は希望に満ちた「春」で締めくくられます。ヴァイオリン・ソロは、2008年のロン=ティボー・コンクール第1位のシン・ヒョンスです。
「フェニックス」は神話に登場する不死鳥の再生と変容のテーマが込められた作品。抒情的かつ技巧的なヴァイオリン独奏は、2024年からウィーン交響楽団のコンサートマスターを務めるドゥミトゥル・ポチタリ。
「フローズン・ガーデン・ワルツ」は、バレエ《クリスタル・パレス》の一部として作曲された、冬の儚く静かな美しさを描いた小品。「聖エルモの舟歌」は、ヴェネツィアの舟歌に着想を得た作品で、独奏ヴァイオリンが水の揺らぎを思わせる旋律を奏で、甘美なハーモニーを奏でるオーケストラとともに瞑想的な雰囲気を生み出し、穏やかなクライマックスの後、音楽は夕暮れの水辺のように静かに終わります。
「シューベルタンゴ」は、アルペジヨーネ・ソナタを始めとしたシューベルトの優美な旋律と情熱的なタンゴのリズムを融合させたユニークな作品。印象的で忘れがたい音楽です。
(ナクソス・ジャパン)
フローレンス・ベアトリス・プライス(1887-1953):ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番、ピアノ協奏曲、茂みの中の踊り
ジョン・ジーター(指揮)マルメ歌劇場管弦楽団、ファニー・クラマジラン(ヴァイオリン)、ハン・チェン(ピアノ)
「黒人女性初の交響曲作曲家」と呼ばれるフローレンス・プライス。近年はその作品がBBCプロムスで演奏されたり、グラミー賞を受賞したりして大いに注目されています。その協奏的作品をすべて収めたアルバムが登場。ヴァイオリン協奏曲第1番は、演奏された記録はなく、誰のために書かれたかも明らかではありません。チャイコフスキーの協奏曲を思わせるスケールの大きな作品で、長大な第1楽章では独奏ヴァイオリンが新たな旋律を次々と提示していゆきます。第2楽章はカンタービレの旋律とブルースの要素が特徴。第3楽章は複雑なリズムによるパッセージで構成されています。ヴァイオリン協奏曲第2番は、友人ミニー・ジャンバーグのために書かれた単一楽章の作品で、彼女の作品としては黒人音楽的要素は控えめです。プライスの死後、1953年に初演され、その後しばらく忘れられていましたが、2009年に草稿が発見され、再び演奏可能となりました。「ピアノ協奏曲」はプライスの作品の中でも特に人気が高いもの。シュナーベルとシカゴ響によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を聴いた体験から大きな影響を受けたとされています。明確な3部構成で、とりわけ中間部でのソロ・オーボエとピアノの美しいデュエットが印象的です。「茂みの中の踊り」は、アフリカ系アメリカ人の伝統舞踊やリズムを取り入れた色彩豊かなピアノ組曲。ここではウィリアム・グラント・スティルの管弦楽編曲版が演奏されています。
(ナクソス・ジャパン)
世界初録音
ヨハン・ジモン・マイール(1763-1845):歌劇《アモール・ノン・ア・リテーニョ》(3枚組)
フランツ・ハウク(指揮、チェンバロ)コンチェルト・デ・バッスス、ジモン・マイール合唱団
ジモン・マイールの《アモール・ノン・ア・リテーニョ》は、1804年にミラノ・スカラ座で初演された歌劇です。スペインのサモラを舞台とし、作曲当時の名歌手たちを揃えたこの上演は大成功を収め、後に《La fedeltà delle vedove(ヴェドーヴェの堕落者)》として改作され、さらに人気を博しものの、その後は上演機会に恵まれず、忘れられてしまいました。夫を亡くしたばかりのルイージア(プリンチペッサ)を巡って展開されるこの物語は、彼女に言い寄るコミカルな求婚者たち、そして彼女の心を射止めようと策を弄するドゥーカの姿が描かれています。ドゥーカは哲学者や騎士に変装してルイージアに接近し、ついには彼女の愛を勝ち取り、二人の求婚者モリオーネとフルスベルゴも、それぞれルイージアの侍女エレーナとラウリーナと結ばれ、最終的に作品はタイトルにもなっている「Amor non ha ritegno(愛にはためらいがない)」の合唱で幕を閉じます。この上演でルイージア役を務めたのは、バロック音楽と現代音楽の両分野で活躍する韓国出身のソプラノ、イェリー・スー。愛に目覚めていく女性像を表情豊かに演じています。ドゥーカ役は名テノールのマルクス・シェーファーが担当し、モリオーネ役にはドイツ・リートやカンタータの録音で知られるダニエル・オチョアが配されています。さらに、フルスベルゴ役にはニクラス・マルマンが起用され、コミカルな歌唱で物語に華を添えています。ヨハン・ジモン・マイールの作品紹介に力を注ぐフランツ・ハウクとコンチェルト・デ・バッススの好演も、大きな聴きどころとなっています。
(ナクソス・ジャパン)
フランツ・リスト(1811-1886):ピアノ曲全集 第66集 モーツァルトとドニゼッティのオペラ・トランスクリプション集
コンスタンティン・シェルバコフ(ピアノ)
【コンスタンティン・シェルバコフが弾く、リストの華やかなオペラ・トランスクリプション集】
リストは1830〜40年代、当時のオペラ人気に着目し、裕福な中流階級が自宅でその魅力を楽しめるように多くの編曲やパラフレーズを発表しました。これによりモーツァルトやドニゼッティの作品を広めるとともに、自身の超絶技巧と作曲家としての才能を示しました。物語性より音楽的表現を重視したこれらの作品は、生涯を通じて彼の重要な収入源でもあったようです。ドニゼッティのオペラによる《ルクレツィア・ボルジアの追想》は、1840年に初版が出版され、1848年にリスト自身によって大幅な改訂が施された作品。さらに1880年頃、ジュゼッペ・ブオナミーチがリストの許可を得て構成を簡略化し、冗長さを排した完成度の高いバージョンを作成しました(本録音はその版によるものです)。モーツァルトの《フィガロの結婚》の主題による幻想曲は、もともと《フィガロ》と《ドン・ジョヴァンニ》両方の主題を用いた幻想曲として構想されましたが、未完に終わり、自筆譜も不完全のまま残されました。リストを敬愛したフェルッチョ・ブゾーニは、その《フィガロ》部分のみを編曲し、《ドン・ジョヴァンニ》の要素を省略した形で1912年に出版しました。《ルチアとパリジーナの2つのモティーフによるワルツ・カプリース》は、ドニゼッティの2つのオペラからの主題を1曲にまとめた作品です。1842年の初版では、それぞれの主題が異なる調で提示され、後に同じイ長調となり二重唱のように組み合わされ、エネルギッシュなコーダにはリスト自身の主題も加えられており、華やかに締めくくられます。後年の改訂版(8.570137に収録)では若干短縮されましたが、ここでは初版が演奏されています。《ドン・ジョヴァンニの回想》は、1841年に作曲された非常に技巧的でドラマティックな作品。モーツァルトのオペラから墓地の場面、「お手をどうぞ」の二重唱とその変奏、華やかな「酒の歌」といった複数の場面が巧みに引用され、オペラのストーリーにリストならではのヴィルトゥオジティが融合しています。
(ナクソス・ジャパン)
2025年5月発売タイトル
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2025年05月22日 17:00