メンバーインタビュー掲載!空気公団『夜はそのまなざしの先に流れる』特集

Photo:TAKAMURADAISUKE
1997年結成、2012年で15周年を迎える空気公団のアルバム『夜はそのまなざしの先に流れる』。“穴”をコンセプトに、日本橋公会堂でのホール・ライヴで披露された新曲をその場の空気感と共に収録し、その上にゲスト音楽家を迎えて新たに演奏を重ねて完成させた1枚

空気公団『夜はそのまなざしの先に流れる』
【収録楽曲】
1.天空橋に
2.きれいだ
3. 暗闇に鬼はいない
4. 街路樹と風
5. つむじ風のふくろう
6. 元気ですさよなら
7. にじんで
8. 夜と明日のレコード
9. あなたはわたし
10. これきりのいま
【参加ミュージシャン】
奥田健介(NONA REEVES)
山口とも
tico moon
山本精一
ライヴ盤でもない、スタジオ盤とも違う!? 空気公団のニューアルバムとは!
『夜はそのまなざしの先に流れる』空気公団インタビュー
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時代のサウンドトラックというべき情景を紡ぐ=空気公団の最新作
『夜はそのまなざしの先に流れる』がリリースされる。前作『春愁秋思』では、
ベクトルが外側に向かい、サウンドはより開放的に、言葉はより味わい深い世界へと、
更なる深化を遂げた。そして本作は、2012年7月6日に日本橋公会堂で行われた、
音楽と演劇から成る“一夜のライヴパフォーマンス”を録音し、その音源をベース
に制作、完成された。そこにはライヴ盤でもない、スタジオ盤とも違う、素晴らしい
時間が流れている!アルバムについて空気公団のメンバー3人に話を聞きしました。
-- まず前作の名盤 『春愁秋思』は、とても有機的で躍動感を感じる、
3人編成になってからのバンドサウンドが確立された、という印象を受けました。
山崎ゆかり(以下、Y) : あのアルバムはデモを作らずにリハーサルで音を重ねて録音するという手法で進めたのですが、それは空気公団にとって初めての試みでした。互いがどんな音を出すのかが自分が音を出すタイミングで知れることがほとんどなかったですし、誰かの頭にあることを再現するということではなく、誰の頭にもなかったものを出すということもなかったですから新鮮で緊張感のあるものでした。
戸川由幸(以下、T) : このアルバム以前は禅問答の様に「この人がこう弾いたからベースはこう弾く」みたいな別録りのスタイルでずっと作ってきていたので、全員で一緒に録音するというのは僕らにとってはかなり画期的な方法でした。
窪田渡(以下、K) : そうですね。このアルバムを一発録りで作ろう、と思えたのは、ちょうどこのアルバムの制作を始める少し前からコンスタントにライヴを行うようになって来て、サポートの方も含めて、バンドの演奏に独特の面白い雰囲気が出てきたんですね。それで、どこか良いタイミングでこのバンドのこの音を残しておきたい、という気持ちがあって。そういったこともあの制作方法につながりました。それが無かったらあのような作り方はやらなかったかもしれません。すべてのタイミングが良かったのですね。
-- 今回のアルバムですが、「とても心地よい時間に身を委ねることができる」、そんな印象を受けました。
Y : ありがとうございます。
T : 基本的な雰囲気は夜なんですが、だんだん目覚めて行くみたいな感覚もあるし、いつでも聴いてもらえる作品になったと思います。
K : 前作は「空気公団」というものを客観視しながら、同時に掘り下げているような部分があったのですが、今回の作品は「空気公団」というものの純度を高めながら、同時に大きく広げて行くような所がたくさんある気がします。主観的になって作っている部分が大きかったので、心地よいと言われて、「あ、この作品はリラックスして聴けるんだ」って、安心しました(笑)。
-- 一夜のライヴでアルバムの全新曲を公開レコーディングするという制作方法。
又そのステージ上ではパフォーマー“バストリオ”とのセッションも行われていました。
会場のお観客さんの存在、反応も含めて、この作品にどんな作用を及ぼしたか?お教えて下さい。
Y : 演奏者の目の前には新曲、パフォーマー、観客が居ます。公開レコーディングというより、制作の現場+新曲の世界感レコーディングという感じでしょうか。バストリオのパフォーマンスには、お客さんからみて「あれは自分ではないか?」と思わせるもの、空気、立体を希望しました。
T : 山崎が言う様な狙いももちろんあっての事ですが、個人的にはバストリオがグワーッときたからガーッと行ったみたいな、もしかしたらその逆もあったりして、そういうのも大きかったです。伝わるでしょうか。バストリオにグッときすぎて演奏に集中できなくなるのを気をつけるのが大変でした。
K : 山崎の言うとおり、ステージにはバストリオのパフォーマンスがあって、客席にはそれを見ている大勢のお客さんが居る。そのすべてを感じて演奏することで、初めてOKテイクなんだ、という気持ちでステージで演奏していました。バストリオが居るのと居ないのと、またお客さんが居るのと居ないのとでは、皆の演奏がまったく違いました。これは大きな発見でした。
-- このアルバムで描きたかったこと、表現したかったこと、もしくはテーマみたいなものは、あったのでしょうか?
Y : さっきの質問に通じるのですが、「あなたはわたし」ということでしょうか。人にぽっかり空いている穴をのぞきこんでみたら、本当にいろんなものが見えてくる。でもその穴をふさいでいる人も多い。自分でもそれがなんなのかよくわからないのだけど、穴をのぞきこむと自分に通じることはわかりました。あと、空気を録音するということも重要でした。
T : 音楽的な事で言えば、ライヴの緊張感のある演奏を、スタジオ盤に閉じ込めるという目標はある程度達成できたかなと思います。演奏者それぞれライヴでしか出てこない演奏が出来たと思いますし、そこはともさん、奥田さん、エンジニアの中村さんにも本当に助けられました。
K : 人の中に存在する「穴」。それを単にネガティブな側面ではなく表現するということ、でしょうか。ただ、その一方で、音の表現としては空気公団が持つ鋭利な、するどい部分を出せるテーマでもあり、その部分をどのようにしたら引き出せるのか?がもう一つのテーマだったのかもしれないなと、今になって思います。
-- 詩、メロディ、サウンド、全てが揃った、空気公団としか言いようのない音楽になっていると思います。
Y : 関わる方が、「空気公団」というものを理解して作ってくれているんだと思っています。
T : 僕はあまりベーシストという意識も無いですし、単に空気公団の一員という気持ちで日々制作をしています。多分他の2人も似たようなところがあって、そういう3人が演奏するとそれがもう空気公団になっているという事なのかなと思います。
K : 一つのテーマが大きくあって、それに沿って制作してくやり方は、いつもミニアルバムで行っていたやり方だと思うのですが、今回はフルアルバムでそれを行ったような気がします。なので、アルバムに収録されたどの曲も、向いている方向はぴったり一致している。その結果なのかもしれません。だけど、これはなかなか難しい質問ですね。なぜ空気公団としか言いようのない作品になったのか、分からない部分がたくさんあります。
-- 山本精一さんがゲストヴォーカルで参加していますが、どんな経緯で決まったのか教えて下さい。
Y : 男性ボーカルにはあこがれがありまして、中でも山本さんにはずっといつかいつかと思っていました。「天空橋に」はこのテーマの始まりの部分で、「これきりのいま」はテーマの最後。山本さんしかいないと思いました。引き受けて下さるかお願いしたところ快く引き受けてくれて、更にイメージが増しました。
T : 昔から、いつか山本さんに参加して頂きたいと話していて、それが実現して本当に嬉しいです。15年もやってるといい事があるんだなぁと思いました。歌入れは京都でやって頂いて、送られてきたテイクを聴いた時は本当に感動しました。
K : 山本さんに参加いただくことは、山崎からの提案でした。そして、実際に録音されたテイクを聴いた時は、本当に衝撃でした。一つの風景を色々なカメラで撮影したように、楽曲の持つ世界が広がった気がしました。
-- 空気公団の歌詞に出てくる、風景、男女の姿、僕や君は、どこから湧いてくるのでしょうか?
Y : 今回の場合は、夜、電車に乗っていてふと人をみたら「穴」が空いてて「おや?」というのが始まりでした。僕はそこでこの「穴」は何なのかと思い、遠回りをして目的地を目指し…というのがこのアルバムです。電車は椅子にぽつんぽつんと人が点々としていて、ホームには別れる人や手を振る人いろんな人がいて、それぞれにぽっかりと「穴」が空いている。その状況を覚えています。私はそのとき、花束を持っていませんでしたが、このテーマの主人公には花束を持たせたいと思いました。夜、電車に花束を持った男がいて、彼はふときづいてしまったことに疑問を持ち遠回りをして彼女の家を目指す。
-- 山崎さんは、ご自分を「詩人」であるという意識はありますか?
Y : 特に考えたことがないですけど、歌詞に対してはいろいろ思います。
見えてないものをどうやって見せるかということも思います。
-- サウンドもとても素晴らしいのですが、“歌詞とサウンドの関係について”、お話を聞かせ下さい。
T : 行間を音で説明してしまいすぎない様には、注意しているという程でもないですが、頭の片隅には置く様にしています。ただ、昔は音数を減らして減らして隙間を作ってたりもしましたが、今はそういう事でもないのかなと思ったりしています。歌詞の中の人をある種ほっといてる感じでも別にいいのかなと。それぐらいが丁度いいと感じています。
K : アレンジ上、歌詞がきちんと耳に飛び込んでくるように、と、意識的に考えています。だいたい、歌詞が聴き取れない部分があると、そこはたいてい響きやリズムが悪くなってますね。歌詞は楽曲の大きな指針なので、シンセの音色などもそれに導かれて作っています。アレンジ上、それくらい大事な存在。歌詞の世界とサウンドをうまく融合させていくのが、映画のサントラを作っているみたいで、醍醐味を感じる部分なんですよ。
-- 今回、当日のライヴではパフォーマー“バストリオ”と共演するなど、異なる表現分野のアーティストと数多くコラボレーションをしていますが、そうしたスタンスはどういった経緯で生まれているのでしょう?
Y : 音には顔がないので、音の顔がみたいなと思います。
演奏者がうろうろするより音楽が人みたいにすっと立っているほうが好みです。
T : バンドをやってるという意識が薄くて、どちらかと言うと空気公団をやっているという認識です。なので、所謂バンドの在り方に最初から乗れていない部分があって、普通にライヴをやる様になったのも結成してだいぶ経ってからですし、こういう形態でライヴなり表現をするのも特殊という意識が無いというのが正直なところです。
K : 何かを一緒に表現するのであれば、その表現の形態は別に音楽でなくても良い、と思っているからなのかな、と思います。そう考えれば、八百屋さんとか飲み屋さんとか、そういう方(?)とも何か出来るはずで、実現したら面白いなと思っています。(しかし、その時は何をするのでしょうね?)
-- いま世の中は、経済の調子が悪く、震災が起きてしまったり、政治が混迷していたり、そんな中で音楽を作ったり、届けていて、“音楽の力”についてどう感じていますか?例えば、あくまで娯楽の一つという捉え方でしょうか?
Y : 音楽は大げさすぎですが唱えるというのか祈りみたいなものに思います。
人のどこかに刺激を与える見えないお化けみたいなところもあります。
T : 娯楽は生きていくのに一番必要な物では無いかもしれませんが、精神的にきつい時に音楽やお笑いや漫画や、遊園地や野球場や、そういう娯楽が助けてくれた事はたくさんあります。もし空気公団がそういう存在で居られたら、ありがたいと思います。
K : 音楽はもちろん娯楽の一つではありますが、世の中がシビアに進んでいく中で、音楽の持つ力も色々な方向に膨らんで行くのだろうなと思っています。
-- 今後のライヴ活動について、ライヴではどんなアプローチをしてみたいと考えていますか?
Y : さっき、自分のパートがよくわからない云々という話をしていたので、よりわからなくなるようになったらいいなと思いました。歌は、道筋として。
T : 今はまだ新しいアルバムの空気感が3人の中に濃く残っている感じがあるので、これをうまく伝えられたらいいなと思います。
K : 楽曲の根本の部分が変わらなければ、楽器の表現方法はたくさんあると思います。たとえば、少ない編成の演奏とかも、良さそうだな思っています。今回の新曲を、色々な場所で演奏することで、楽曲自体が大きく変化して行くと思うのですが、どう変化して行くのかが今から楽しみですね。
-- それでは最後にTOWER RECORDS ONLINEをごらんの皆様に一言メッセージをお願いします。
K : 空気公団の新作はきっとあなたに何か特別な気持ちをおこさせるに違いありません。音楽の奥深さと、自分の時間を楽しんでもらえればと思っています。
T : 読んでくれてありがとうございます。良かったら新しいアルバム聴いてみて下さいね。
K : 良い作品になりました。ぜひ楽しんで聴いてくださいね。
空気公団ニューアルバム発売日記念LIVE情報
空気公団、Ustreamでライヴ生中継が決定!!
2012年11月21日(水)に行われる『空気公団ニューアルバム発売日記念LIVE』が、Ustreamで生中継される。より多くの人に“新たな空気公団”を見てもらいたいということでリアルタイム配信されるもので、公演チケットはすでにソールドアウトとなっている。アルバム発売日に『夜はそのまなざしの先に流れる』をPC画面から堪能する事ができる!
●『空気公団ニューアルバム発売日記念LIVE』 Ustreamライヴ生中継!!
2012年11月21日(水)@西麻布「新世界」
21:00~22:00 Ustream生放送!!
空気公団チャンネル:http://www.ustream.tv/channel/kukikodan
ゲスト:tico moon、山口とも
Info空気公団オフィシャル・サイト:http://www.kukikodan.com/