90年代以降のインディ・ロック・シーンに大きな影響を与えたカリスマ・バンド、ピクシーズ。円熟味を感じさせつつも、陰惨なフォーク、ボールルーム・ポップ、そして暴力的なロックが直感的に入り混じったサウンドに、ダークなバーレスク的狂詩世界が絡んだダークで美しい最新作『DOGGEREL』完成――!今秋には"リベンジ"来日公演も決定!!アナログLPはゲートフォールド仕様のレッド・ヴァイナルで発売!!
90年代以降のインディ・ロック・シーンに大きな影響を与えたカリスマ・バンド、ピクシーズ。2004年に再結成した彼らは2014年に23年振りとなるスタジオ・アルバム『INDIE CINDY』を発表した後、2016年の『HEAD CARRIER』、そして2019年の『BENEATH THE EYRIE』とコンスタントにアルバムをリリースしてきた彼らが、新たなアルバムを完成させた!
1986年に米ボストンで結成されて以来、USグランジ/オルタナ・ムーブメントを牽引してきた彼ら。狂気を孕んだ歌詞と、ディストーションや轟音ギターを響かせながらも奇妙なまでにポップなサウンドで、多くの熱狂的ファンを獲得した彼らは、カート・コバーン(ニルヴァーナ)をはじめトム・ヨーク(レディオヘッド)、パールジャムなど様々なアーティストにも影響を与えていった。5作のアルバムをリリース後、バンドは1993年に一旦解散するが、2004年4月に再結成。2014年に23年ぶりとなったアルバムを発表したが、オリジナル・メンバーのキム・ディール(ベース)がバンドから離脱。新メンバーとしてパズ・レンチャンティン(A Perfect Circle、Zwan等)がバンドにツアー・メンバーとして参加、2016年には正式メンバーとして迎えられた。
その彼らの約3年振りとなるスタジオ・アルバム『DOGGEREL』。彼らにとって通算8作目となる本作は、これまでとは少し違う形で制作されたという。スタジオでラフ・アイディアを出しながら形にしていくというこれまでのやり方ではなく、ブラック・フランシスはあらかじめ40曲ほどを用意してレコーディング・セッションに臨んだとのこと。そして2022年冬、バンドのメンバーは過去2作も手掛けたプロデューサー、トム・ダルゲディとヴァーモントにあるギルフォード・スタジオにメンバーと合流、レコーディングを開始した。その模様は、先日バンドの公式YouTubeチャンネルにアップロードされたアルバム・トレイラーにも収められている。(1/2)
発売・販売元 提供資料(2022/06/10)
1stシングルとなるのはピクシーズらしい轟音ギターと王道クラシック・ロックの間をいく「There's A Moon On」。そして完成したアルバムは、円熟味を感じさせつつも、陰惨なフォーク、ボールルーム・ポップ、そして暴力的なロックが直感的に入り混じったサウンドに、不貞や放蕩の亡霊に憑りつかれ、宇宙の力に奔走されながら、全能の神でさえも想像しえなかったデジタル時代の死後の世界を思い描きつつ、さらに嵐が近づく予感も感じさせる、混沌とした狂詩的世界そのもの。50年代風ポップに暗喩に満ちた文学的な詞を盛り込んだ「Haunted House」や、モリコーネ風デザート・ロックとも表現できそうな「Vault Of Heaven」、そして爽やかなフォーク・ロッのメロディが響く「Pagan Man」から、ピクシーズらしいエッジが効いた緊張感あふれるロックとシュールな詞が組み合わさった「Nomatterday」やザ・フーを彷彿させるような疾走感溢れるロック・ナンバー「Dregs Of The Wine」まで、アルバムにはタイトル『DOGGEREL』が意味するように、美と闇からなる集合体が、滑稽で韻律不整な音世界を作り出しているのだ。
今作で初めてソングライティングのクレジットに名を連ねたギタリストのジョーイ・サンチャゴはアルバムについてこう語る。
「俺たちは成長した。2分以下の曲をもう作らなくなった。今じゃ、ちょっとしたブレイクもあるし、より一般的なアレンジも取り入れている、ただ俺たちなりの捻りはこれまで通りだけどね」
そしてブラック・フランシスも次のように付け加える。
「とてつもなく壮大で大胆、そしてオーケストレーションされたものを作ろうとした。パンクっぽいものを演奏するのは本当に大好きだが、そういったものは人工的には作れない。他のやり方があるんだ、俺たちは自分たちが今体験している超特別なパワーを使って他のことを成し遂げることが出来るのだ」
アルバム発売後の今秋には、一度延期・中止となってしまった来日公演が遂に実現となる。一筋縄ではいかないバンドの一筋縄ではいかない大胆でダーク、そしてアグレッシヴな新作『DOGGEREL』を引っ提げてやってくる彼らのライヴ・パフォーマンスにも注目だ!(2/2)
発売・販売元 提供資料(2022/06/10)
2014年以降、順調にリリースを重ねてきた延長で鳴らす轟音オルタナ・ロックに、もはや90年代の頃のスリルはない。しかし、紅一点ベーシスト=パズ・レンチャンティンのハーモニーも含め、安定のピクシーズ節を聴き続けられるなら、それも悪くない。円熟を印象づける一方で、アコギで新しい音像を作ったり、ジョーイ・サンティアゴ(ギター)が初めて作詞・作曲を手掛けたりとバンドは確実に前進している。
bounce (C)山口智男
タワーレコード(vol.467(2022年10月25日発行号)掲載)