トン・ゼーやガル・コスタといったブラジリアン・レジェンドのみならず、デヴィッド・バーン、デヴェンドラ・バンハート、フリート・フォクシーズ、そして坂本慎太郎といったアーティストとコラボレーションを重ねてきた現代ブラジルを代表するシンガー・ソングライター、チン・ベルナルデスが『ヘコメサール』('17) 以来のニューアルバムをリリース。
「ブライアン・ウィルソン meets カエターノ・ヴェローゾ」「ブラジリアン・ソング・サイクル」などと絶賛された前作同様のオーケストラル・ポップを見せる一方で、これまで以上にメロディの良さ、「静」と「動」のコントラストが際立ち、ソングライターとして前人未到の域に達していることがうかがえる一枚。カエターノ・ヴェローゾ、ロビン・ペックノールド(フリート・フォクシーズ)も賛辞を寄せるなど、今回のリリースをきっかけに世界的ブレイクも必至だ。
発売・販売元 提供資料(2022/05/23)
なぜ、こんなにも美しい音楽をかけるのだろう。彼の場合、詩やメロディだけではない。爪弾れる繊細なアコースティック・ギターの抑揚はあまりにドラマチック。幽玄なストリングスがそのドラマ性を盛り立て、時折入るハンドクラップはそれまでの静から明確な動を感じさせ、その度にこちらの胸をドキリとときめかせる。高い評価を得た初作から5年。その間に坂本慎太郎やデヴェンドラ・バンハートとのコラボでブラジル音楽ファン以外にもその名を広めたチン・ベルナルデス。厳選された音ひとつひとつが、ナチュラルに地声とファルセットを行き来する歌声がブラジル独特の浮遊感と相まって聴き手を夢の世界へと誘う。
intoxicate (C)小畑雄巨
タワーレコード(vol.159(2022年8月20日発行号)掲載)