注目のオンド・マルトノ奏者、大矢素子
待望のCD!
坂本龍一によるマルトノのためのオリジナル楽曲
フランス電子音楽界の巨人パルメジアーニによる秘曲も収録!
魅惑の電子楽器、オンド・マルトノのアルバムの登場。
オンド・マルトノは、モリス・マルトノが1920年代に開発した電子楽器(「オンド」はフランス語で電波や波。マルトノの電波、といった意味の楽器)。小型オルガンのような、鍵盤(とその前にワイヤーが張ってある)がついた本体と、大小様々のスピーカーの組み合わせで、つやのある弦楽器のような音色から、宇宙空間をただようような神秘的な音、時には爆発的な音まで、様々な音色が出る魅惑の電子楽器です。誕生してまもなく100年ほどの楽器ですが、メシアンをはじめ大作曲家たちによるオリジナル楽曲が多く書かれているほか、映画やTVCMなどでもしばしば使われているなど、注目の楽器といえるでしょう。
演奏するのは大矢素子。これまでに東京オペラシティ「B→C」に登場、また、2017年の日本音楽界の話題をさらった公演「メシアン:アッシジの聖フランチェスコ」(カンブルラン指揮、読響)でもオンド・マルトノを演奏。さらに、映画『レヴェナント:蘇えりし者』(2016)において坂本龍一作曲の楽曲を演奏しています。オンド・マルトノ研究で博士号を取得してもいる、まさに演奏と研究の両面でマルトノ界の最先端をいく注目の存在です。
収録作品は、坂本龍一がマルトノのために書いたオリジナル楽曲(Rebirth 2)をはじめとする、マルトノのオリジナル作品たち(パロリブルは、坂本龍一は1985年発売のCD「未来派野郎」においてアナログシンセで録音していますが、もともとはマルトノの音色を想定した楽曲)。ディスク冒頭に収録の池辺晋一郎の「熱伝導率」では、マルトノの醍醐味のひとつともいえる強烈なグリッサンドやポルタメントが多用されており、一気にマルトノの世界へと引き込まれます。坂本龍一の「Rebirht 2」は、アカデミー賞主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)・監督賞・撮影賞を受賞した『Revenant:蘇えりしもの』の劇中音楽。映画でも、実際に大矢素子が奏でるマルトノが流れ、映画の世界を盛り上げておりました。他にも近藤譲のミリ単位の高度なアンサンブルが求められる世界初録音曲『原因と結果』など、注目のプログラムです。
共演陣は、アンサンブル・ノマドで百戦錬磨の活躍と実力をみせるギターの佐藤紀雄とヴィオラの甲斐史子。電子音響は東京現音計画の有馬純寿。ピアノの松本望は作曲・ピアノの両面で活躍する俊英。現代音楽シーンのみならず、日本の音楽界の要となる奏者たちが集結しています。
大矢素子執筆のブックレットでは、楽器の歴史および奏法についても写真付きで紹介。
マルトノの魅力を味わい尽くせ、マルトノ通への道も開かれる稀有なアルバムです!
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キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料(2019/07/11)
映画『レヴェナント:蘇えりし者』の音楽を制作していた時、監督からの要望でオンド・マルトノを使いたいということになり、日本で大矢さんに出会った。僕は10代の頃からメシアンや三善晃の曲などでこの楽器の音を聴き、なかなかエロティックで神秘的な音だなと思っていたのだが、本物の楽器に接したのはこの時が初めて。今回のアルバムでは、その時に弾いていただいた「Rebirth 2」という曲と、30代の時にアナログシンセを使ってこの楽器を模して作った「パロリブル」という曲を収録していただいた。両方ともサイン波なので、音自体を似せるのは容易いが、表現力は大矢さんの方が一枚も二枚も上である。
坂本龍一(音楽家)
(2/2)
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料(2019/07/11)
オンド・マルトノは不思議な楽器だ。空気中の気配をつなげて音楽にしている、そんな印象を聴くものに抱かせる。エクトプラズムのような前々世紀の科学をあらぬ方向に牽引した疑似科学的な概念が一方では人間の想像力を刺激した。空間に漂う官能的な音を響かせるオンド・マルトノもこうした想像の産物の一つかもしれない。本作は、まだまだ不可解なこの楽器に眠る素質を見極め、能力を覚醒させるための作曲家と演奏家の、音の新しい手触り、あるいは懐かしい触感を愛でる試み。オンド・マルトノ奏者、大矢素子と邦人作曲家たちが開くこの楽器の魅力に感応するとともに、終曲の未来派野郎のセンチメントに感動。
intoxicate (C)高見一樹
タワーレコード(vol.141(2019年8月20日発行号)掲載)