ニール&イライザの松田岳二によるソロ・プロジェクト、CUBISMO GRAFICOのバンド編成ヴァージョンでのアルバム。ポップでセンチな胸キュン・メロディや、ソウルを盛り込んだパンク・サウンドが楽しめる作品。 (C)RS
JMD(2010/06/14)
2004年10月にはCUBISMO GRAFICO名義でアルバム「FOGA」のリリースと、相変わらず活発な活動が目立つ“チャーベくん”こと松田岳ニ氏が、今度はバンド編成でのユニット CUBISMO GRAFICO FIVEで待望の2ndアルバムをリリース!今作は「“Niw!”サウンド・ミーツ・パンク」がキーワード。CUBISMOならではのPOPでセンチな胸キュン・メロディーに、お得意レゲエ、ソウルなどを盛り込んだネクスト・パンクなサウンドに仕上がっています!もちろん前作同様のナイス・カヴァー(今作はヴァネッサ・パラディー「SUNDAY MONDAYS」)も収録!新たなジャンルを開り拓く、聴き応えたっぷりの全13曲!
タワーレコード(2009/04/08)
メンバーのSYUTA-LOW TAGAMIが在籍するFRONTIER BACKYARDもそうだったけれど、このところのNiw!~エスカレーター周辺は、デジタルとバンド・サウンドをクロスオーヴァーさせた秀作揃い。MASTERLOWと並びオールスター・メンバーで構成されたCUBISMO GRAFICO FIVEの新作もまた、秀でた〈バンドで表現するサンプリング感覚〉を武器にシーンへと斬り込み続ける、あるトライブの記録と言えるかもしれない。生音色の導入やニューウェイヴなセンスなど、かたやダンス・サイドと思われていたCUBISMO GRAFICOの最新作『FOGA』とはパラレルな関係にありながら、巷のドス黒いエレクトロ・ハウスや蛍光色のディスコ・パンクと同期しつつ微妙に外した文脈として、無邪気な衝動が投げ出されている。性急感に満ちたパンク・ナンバーをはじめ、仄かに香る十八番のレゲエ~ロックステディ風味やニューソウルのエッセンス、“SPARROW SWARROW”なんてその名のとおりカリプソ風味なインストを織り込み、駆け抜けていく33分。80年代後半から90年代前半のクラブ・シーンとライヴハウス・シーンが未分化だった頃の〈なんでもあり感〉を体言する数少ない存在? いやチャーベ君は、その時代から頭の中でアイデアが出まくっていたに違いないのだから、オリジネイターと言うべきか。リリックのセンスやツボを突きまくりのカヴァーからも、どんなサウンドを奏でても浮かび上がる彼のジェントルな人柄を感じていただけるはず。キラキラと尽き果てぬボーイズ・ワンダー!
bounce (C)駒井 憲嗣
タワーレコード(2004年12月号掲載 (P66))
本作を〈ネクスト・パンク〉なんて評する売り言葉は、まったくもって看板に偽りアリ。だからといって、この作品がヤワなものかと言ったら、それも大間違いだとも思うのです。表立って見えることはなくとも貫かれているのは、オールド・スクールなパンク・ミュージックや初期ニューウェイヴに対する深き知識と愛情、そして憧憬。この10年、シーンの最前線で手練手管のミュージシャンと対峙してきた松田岳二が、破天荒で無軌道で若気の至りの暴発感が魅力であるこれらの音楽を、スタイルに忠実に演奏するのは、かえって嘘にしか聴こえないわけで。もはや若さゆえの馬鹿ではない彼にとって、ある種の客観性(それはCUBISMO GRAFICOとしての活動の核とも思えるのだが)を備えることで、虚構のパンク・ミュージックでありながら、あの時代の音楽が持っていた〈無駄な熱〉と〈馬鹿馬鹿しさ〉を的確に聴かせてくれる。加え、お世辞にも上手いとは言えないけれど軽妙な歌声、そして彼ならではの心の琴線に触れまくるちょいと哀愁を帯びた旋律が重なり合って、恥ずかしいけれど気持ちいい作品に仕上がっているのは、さすがの一言。自家薬籠中の上品なソウル・フレイヴァーやラガ・テイストも、そこかしこに健在。CUBISMO GRAFICO FIVEというバンド・スタイルでありながら、かえって松田岳二というキャラクターの本質が見えるようにも思える一作。個人的には、ほぼインストで、〈S〉で始まる語句を降りかけた“SNOWDOME”が出色の出来。この流れをもう少し聴きたいとも思ったり。
bounce (C)小田 晶房
タワーレコード(2004年12月号掲載 (P66))