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ロザリオのソナタ~人生の神秘 / 中丸まどか、他

火焔太鼓の字面を追っても志ん生の破天荒な面白さは伝わらず、芝浜を読んでも三木助のしっとりとした江戸情緒は表れない。そこが本質に迫る再現芸の難しさであり、だからこそ記述されたものすべてに優れた表現者-インタプリタが求められる。
「ロザリオのソナタ-人生の神秘」と題し17~18世紀初頭に作曲されたバロック期の諸作品を現代に演奏する意味、意義を当CDは見事に応え回答したと言える。しかもコンテンポラリミュージックとして新たな装いで姿を現して。
ロザリオのソナタを中心とする「カトリックとプロテススタント音楽」の併置、「幻想様式」、「ヴァイオリンと大オルガンの対話」のテーマは収録した11曲すべてに細部まで緻密、綿密に行き届いた設計がなされ音楽的に実に美しく解決している。幻想様式のCDは数あるが、ここでは11曲すべてに幻想様式のスピリットで装飾を加え変奏し、即興の演奏をしている。
例えば、第4曲、賛美歌に基づいたソナタはヴァイオリンと大オルガンによる五つのセクションの会話で成り立ってる。大オルガンはストップの選択で色彩豊かにまさに対話する楽器として機能、ガット弦による伸びやかで艶やかなヴァイオリンの自然倍音は心の平安を見事に表している。第6曲、超絶技巧のヴァイオリン演奏を突然遮るようにコルネットのストップで大オルガンがヴァイオリンパートをドラマチックに再現するときヴァイオリンはあたかも苦しみあえぐ苦悩を表現している。第7曲、「嘆きの旋律」はオルガンにより演奏され、メロディ楽器のヴァイオリンはピエタから漏れこぼれる嗚咽のリズムを刻んでいる。インタプリタとして理にかなう音楽的な仕掛けは尽きないが要約するとこのように言えるだろう。
「ヴァイオリンとオルガンの演奏が録音された70分のCD」では決して無い。ヴァイオリンとオルガンの「対話」から生まれる驚くべき純粋な美しさを優れて現代の知性と感性で表現した作曲者の本質に迫る「言葉の無い物語」の記録である。
ブックレットに掲載のオルガンバルコニーのバードアイ写真も新鮮。

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jjfさんが書いたメンバーズレビュー

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火焔太鼓の字面を追っても志ん生の破天荒な面白さは伝わらず、芝浜を読んでも三木助のしっとりとした江戸情緒は表れない。そこが本質に迫る再現芸の難しさであり、だからこそ記述されたものすべてに優れた表現者-インタプリタが求められる。
「ロザリオのソナタ-人生の神秘」と題し17~18世紀初頭に作曲されたバロック期の諸作品を現代に演奏する意味、意義を当CDは見事に応え回答したと言える。しかもコンテンポラリミュージックとして新たな装いで姿を現して。
ロザリオのソナタを中心とする「カトリックとプロテススタント音楽」の併置、「幻想様式」、「ヴァイオリンと大オルガンの対話」のテーマは収録した11曲すべてに細部まで緻密、綿密に行き届いた設計がなされ音楽的に実に美しく解決している。幻想様式のCDは数あるが、ここでは11曲すべてに幻想様式のスピリットで装飾を加え変奏し、即興の演奏をしている。
例えば、第4曲、賛美歌に基づいたソナタはヴァイオリンと大オルガンによる五つのセクションの会話で成り立ってる。大オルガンはストップの選択で色彩豊かにまさに対話する楽器として機能、ガット弦による伸びやかで艶やかなヴァイオリンの自然倍音は心の平安を見事に表している。第6曲、超絶技巧のヴァイオリン演奏を突然遮るようにコルネットのストップで大オルガンがヴァイオリンパートをドラマチックに再現するときヴァイオリンはあたかも苦しみあえぐ苦悩を表現している。第7曲、「嘆きの旋律」はオルガンにより演奏され、メロディ楽器のヴァイオリンはピエタから漏れこぼれる嗚咽のリズムを刻んでいる。インタプリタとして理にかなう音楽的な仕掛けは尽きないが要約するとこのように言えるだろう。
「ヴァイオリンとオルガンの演奏が録音された70分のCD」では決して無い。ヴァイオリンとオルガンの「対話」から生まれる驚くべき純粋な美しさを優れて現代の知性と感性で表現した作曲者の本質に迫る「言葉の無い物語」の記録である。
ブックレットに掲載のオルガンバルコニーのバードアイ写真も新鮮。

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