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J.S.バッハ: 鍵盤楽器作品録音集 / スコット・ロス (Harpsichord)

スコット・ロスのエラートへのバッハ録音をまとめたものに、他のレーベルでの実況録音も幾つか含んで、申し分ないセットとなっている。スコット・ロスには真っ直ぐに音楽を推進させる高度な技巧の冴えと力量があって、その結果として極めて自然に清潔で抒情的な音楽が彼の手の中から生まれてくる。
平均律クラヴィーア曲集とパルティータ集は、絶品というべき出来栄え。ゴルトベルク変奏曲が二種類収録されていて、聴き比べられるのも楽しい。もちろんフランス組曲などを彼の演奏で聴きたかったという憾みは残るものの、短いながら眩しく燃焼しつくした一人の芸術家の生涯の、美しい記念として愛聴し続けたい。

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轍の魚さんが書いたメンバーズレビュー

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(全9件)

メロス弦楽四重奏団がベートーヴェン全集を成し遂げた後の、彼らの成就したアンサンブルの至高点の素晴らしさを堪能できる名盤。際立った力感と同時に抑制の効いた情緒表現も楽しめ、さらに全体的にはシューマンとブラームスの音楽がもつ、おのおのの品格が顕わになっている。音楽の動きの起伏が大きいところも決して騒々しくならず、そして緩徐楽章は言うまでもなく清澄な響きに満ちている。
シューマンの弦楽四重奏曲を、彼の作曲の中で重きを置く人はあまりいないだろうが、この演奏で聴いてみると美点の多い佳作だと言える。かつてのポリーニが鋭利な技巧でシューマンの不安定ながらも真摯な気分の揺らぎを明らかにしたのにも似て、完璧なアンサンブルがもたらす鮮烈な表現がいくつもあって素晴らしい。シューマンの音楽にときおり現れる偏執的な音の動きにも切迫感があふれている。
ブラームスの室内楽が好きな私だが、その中では弦楽四重奏曲はやや晦渋で、未だに愛好するまでに至っていない。しかしメロス弦楽四重奏団による演奏では、少なくともより以前の名四重奏団によるものよりもリズムが立っているぶん、新鮮で聴きやすいと思う。また全体的には情緒に停滞しないメリハリのある推進力も、緊密なアンサンブルによって達成されていて、第3四重奏曲などでは緩徐楽章の良さが引き立っている。第1、第2四重奏曲もまだまだ聴きこんで、美点を見つけていきたいものだ。

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シューベルトの弦楽五重奏曲は、この短命の作曲家の傑作群のなかでも、遥かに高く険しい頂きのように思える。
第一、第二楽章は極めて力強い音楽で、構成としては「ハ長調大交響曲」と似ているが、悲愴感と、もっと直接的な感情の吐露が聴きとれる。他の作曲家の誰かを悼むための曲とは全く違う。ここでは正に死に向かう者、作曲家本人の悲しみが渦巻いている。その点でこの曲の感銘において匹敵するのは、モーツァルトのレクイエムだけだろう。
演奏をいろいろ聴き比べているわけではないが、この真摯な四重奏団と世界的に著名なチェリストの演奏に、全く不満はない。

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以前、私はバッハのモテット集やシュッツのクリスマス・オラトリオをこの方の指揮で聴いていたことがあった。いわゆる宗教的楽曲ということの意識があるのか、全体のトーンが穏やかにまとめられていて聴きやすい。どちらかというと管弦楽が合唱の中にうまくブレンドされていて、例えば金管が唐突に強奏されたりすることもない。やや早めのテンポのようだが、物足りなさはなく、むしろ充実した時間を味わえる良い演奏だと思う。

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イ短調ロンドの演奏は、厳粛さと美しさと軽やかさが一切の感傷なしにともに輪舞している奇蹟。
ハ長調ソナタの第2楽章からは、初夏の光と風が感じられる。永遠に瑞々しい、私にとっての宝。

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期待を裏切らない一枚。私にとって新しいのはラモーの曲だけだったが、この人の演奏は同じ曲でも印象が常に新鮮だ。圧巻はソレールのファンダンゴ。極めてスリリングな音楽の疾走!

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期待通りの清冽な演奏。大袈裟さもひ弱さもない、芯のしっかりとした音が、確かな歩調で高みを目指していくかのようだ。

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「伝説」のままに終わらせたくない、類い希な名盤。緻密なアンサンブルと鮮烈な推進力で、ベートーヴェンの真髄に迫っている。私見では、特に短調作品に良さが出ていて、第14番・第15番・ラズモフスキー第2番が素晴らしい。

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シュッツの作品集を聴いて、ラーデマンは並々ならぬ力量の持ち主と感じ、バッハのこの傑作も聴いた。曲の偉大さに甘えず、鋭い推進力で怜悧な印象をもたらしている。合唱団は特に素晴らしい。演奏様式の新旧も超越した、新しい名盤と評価したい。

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スコット・ロスのエラートへのバッハ録音をまとめたものに、他のレーベルでの実況録音も幾つか含んで、申し分ないセットとなっている。スコット・ロスには真っ直ぐに音楽を推進させる高度な技巧の冴えと力量があって、その結果として極めて自然に清潔で抒情的な音楽が彼の手の中から生まれてくる。
平均律クラヴィーア曲集とパルティータ集は、絶品というべき出来栄え。ゴルトベルク変奏曲が二種類収録されていて、聴き比べられるのも楽しい。もちろんフランス組曲などを彼の演奏で聴きたかったという憾みは残るものの、短いながら眩しく燃焼しつくした一人の芸術家の生涯の、美しい記念として愛聴し続けたい。

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