「射撃の成績不振」と「作曲家の創作不振」の読み替えという演出のアイデアが面白そうでずっと買いたかったのだが、レビューが一件もないので買いそびれていたが、そろそろ思い切って買ってみた。どういう「オチ」なのか気になっていたが、「いや、結局は魔弾かいッ」。全体に、暗くおどろおどろしく宗教臭いのが厭、という人には向いている。シャーガーとニルンドのコンビは、最近のバイロイトのビシュコフ指揮の『トリスタンとイゾルデ』のソフトと同じで、実はそちらを先に視聴してしまっていたので、ニルンドのイゾルデに多少疑問を持っていたが、この公演を視聴する限り、容姿も声もイゾルデにぴったりな気がする。やはりバイロイトの暑さにやられたのかも。それはそれとして本盤の感想にもどるが、舞台美術も衣裳もさすがウィーンはとてもお洒落。ただ、オケのウィーン・フィル、正確にはウィーン国立歌劇場管弦楽団は「通常業務」。ネトピルは悪く言えば、自動運転の車の運転手。「オススメ度」は3にしたかったが、歌手陣が意外と頑張っていて、隠者のドーメンは、ティーレマン盤のクーノやバイロイトのヴォータンより声が良く出ていて(吊りものに乗っているのでマイクに近かったか)迫力がある。いずれにせよ、初めてこのオペラを観るという人には間違っても薦められるものではないが、音楽そのものの毀損はないので、選択肢の一つとしてあり得ると思う。