(全7件)
シューベルト: ピアノ・ソナタ第20番、第21番
クリスチャン・ツィメルマン
ツィメルマンの紡ぐ、素朴で、端正なシューベルト。彼は、D960の第1楽章のような音楽であっても感情的になりすぎることはなく、落ち着いて歩みを進めていく。誇張的な、技術をひけらかすようなことは決してせずに、ただ一音一音の音色で勝負するかのような演奏。D959、終楽章のあたたかく穏やかな主題ときらびやかな分散和音の対比は鮮やかで、実に美しい。作品の魅力を再発見させてくれる、味わい深い一枚である。
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲、交響曲第5番「宗教改革」、他
イザベル・ファウスト、他
作品をよく研究し、その成果を活かした演奏を行うファウスト。満を持してのメンデルスゾーンの録音もまた、彼女の深い楽曲理解が窺われるピリオド・アプローチによる演奏である。ファウスト一流の透明度の高い音色、キレのある鮮やかな歌い回しを聴くと、往年の名演奏家たちによって歌い継がれてきた「メンデルスゾーン」が、良い意味でリセットされ、新たに生まれ変わったかのようにさえ感じられる。躍動感溢れる快演である。
ベートーヴェン: 交響曲全集
ヘルベルト・ブロムシュテット、他
所謂「巨匠」の演奏、録音には、多くの場合指揮者それぞれの「色」がある。しかし、ブロムシュテットの音楽には良い意味でそれがない。常に最新の研究を反映した楽曲解釈、演奏を行うブロムシュテットにしか成し得ない、説得力に満ちた交響曲全集。これは最早「ブロムシュテットのベートーヴェン」ではなく「ベートーヴェンそのもの」だ。老いてなお輝きを増し続ける巨匠が描く、瑞々しい音楽。疑いの余地なき名盤である。
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集
若林暢
名盤ひしめくブラームスのソナタ集の中でも、一際強い輝きを放っている録音と言ってよいだろう。楽譜に記された音符一つ一つが、丹念に、感情豊かに歌い上げられたブラームス。若林とスタロックのアプローチは決して誇張的なものではないが、若林の稀有なまでの表現力、音楽的語彙の豊富さによって、聴く者の心を惹きつける見事な「歌」に仕上がっている。第2番終楽章の、泣きながら微笑むかのような薫り高い音色は忘れられない。
ブラームス:交響曲第1番/ハイドンの主題による変奏曲<限定盤>
イシュトヴァン・ケルテス
ケルテスのブラームスは、よく整った音量バランス、説得力のあるテンポ選択、丁寧に作りこまれたクライマックスが魅力的だ。彼の突然の死の後に録音された《ハイドン変奏曲》の終曲にも、このケルテスの特長は息づいているように思われる。穏やかに低弦が歩みはじめ、そこに声部が優しく丁寧に重なっていく……。ウィーン・フィルの「本気」を感じさせるこの終曲を耳にする度に、ケルテスがそこにいる、と感じられて仕方がない。
ブルッフ: 弦楽五重奏曲集&八重奏曲
ナッシュ・アンサンブル
今日、数曲の協奏曲を除き、ブルッフの作品はその殆どが忘れ去られてしまっている。本盤に収録されている3曲もまた、1980年代以降に再発見されたものであり、まだ録音も少ない。しかし、ロマン派的書法で作曲されたこれらの楽曲は、作曲家得意の抒情的な旋律とどこか朗らかな音楽の対比が魅力的な、隠れた傑作群である。名手揃いのナッシュ・アンサンブルは、ブルッフの知られざる名品を、生き生きと、鮮やかに歌い上げる。
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲(1903/04年オリジナル版)&(1905年現行版)
レオニダス・カヴァコス、他
シベリウス《ヴァイオリン協奏曲》の二つの版を聴き比べることができる点が本盤の最大の特徴である。カヴァコスは、現行版はもちろん、改訂に際してカットされた部分(第1楽章結尾手前の二つ目のカデンツァや、終楽章におけるもう一つのフラジョレット部分(!)等)を含む初稿版も、その卓越した技術を駆使して鮮やかに歌い上げている。資料的価値があるだけでなく、演奏も大変に魅力的な、シベリウス・ファン必聴の一枚。
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