この復刻は、壮絶無比の重量感のある内容に仕上がっている。ターナボートLPの音作りに極めて似ている。インターバル細部から、マグネットフォン・コンツエルト当時のスタジオの緊張感が伝わり、よくこの録音が残ったものだと感心した。50年前、LPが米国から来た時の興奮が蘇る。秘曲洞の砂田観二氏から、ウラ二ア盤と同レベルの復刻があり、日本で初めてのブラームスPCのフィシャーの共演も勧められた。音楽の生成は真剣を使った試合のような演奏だった。どちらも今日、歴史的名盤となった。砂田氏(オイストラフと親交があり、世界初の二キッシュの第五をクレテンザでLP化した人)は、若い音楽愛好家を育てる力があった。「音楽の真の価値(本物)を、人生の早い段階で知ると」経験則から「その後は、自ずから優勝劣敗がはっきりしますよ」と云っていた。平林直哉氏のシリーズも近い将来全集にして、次世代を担う若い人達に深く浸透してもらいたい。日本音楽の需要と供給の質的レベルの格段の向上が期待できる。誠に心の躍る復刻だと想う。