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Arc アーク / 石川慶、他

Arc アーク

石川慶、他

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

◆現代の「隠れた名作」で、記憶に残る映画。これからも多くの人がその良さに気づいていくことになる作品。スタッフ、キャストの豪華さに負けず、とても造りが贅沢。「紙の動物園」などケン・リュウの世界観(SF的ガジェットを駆使しながら、詩的でハートウォーミングな作風)に触れておくと、それに寄り添った映像による詩情を堪能できるが、もちろん予備知識なしに観ても見応えあり。

◆「3度の誕生日」を軸に135年に渡るライフヒストリーを描くため、やや長めの127分。原作同様、「死後の人体の保存(プラスティネーション)→不老不死の技術」というSF的描写が前面に出てくるが、物語の軸は、主人公リナの一生が描くArc=円弧(円周ではなく)である。前半では、若きリナが人生に対して味わった思いを、原作の具体的な描写(若い妊娠後の不当な扱いなど)抜きで、ダンスシーンなどから読み込んで感情移入できるかがポイント。後半は、舞台設定や登場人物に原作からやや大きな設定変更があり、その事でこの映画は、大きく成功している。

◆前半は、まず三東瑠璃振付によるダンスシーンが見どころ。空間に刻み込んでいくような切れ味の鋭い動きに圧倒される。初見の人は、長く続くプラスティネーションされる/されたものの描写や、意味深な台詞にあまり意味を読み込み過ぎず、ストーリーを追うことに集中した方がいい。生と死に関わるが、余計に重苦しかったり、説教くさかったりするところは少しもないので、透明感のある映像美や 独特の推進力を持つ世武裕子の音楽を堪能したい。

◆後半は、撮影監督ピオトル・ニエミイスキによる手撮りのモノクロ描写が続く。「大きく振り返って見上げる」といった振り方を全く安定感を失わずに撮っているところなど実に見事。ここで、いのちの輝きが描かれ、「自分の人生を生きるべき」というメッセージが伝わってくる。ストーリー終盤で核心に気づいた時の驚きは新鮮だろう。

◆主演の芳根京子 は演技力に定評があるが、本作でより成長し、若い時代の奔放さ・繊細さ、人生の拠点を確立した充実期、現実にはありえない「不老の老」まで自在に演じきっている。

◆劇場公開前後に、映画評論では絶賛、一方でSNS上の映画好きからは必ずしも評価が高くなかった本作。「好みが分かれる」といった評価により自分の目で見ないで済ませるのは実にもったいない。

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ピョートル4世さんが書いたメンバーズレビュー

  • 1

(全2件)

Arc アーク

石川慶、他

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

◆現代の「隠れた名作」で、記憶に残る映画。これからも多くの人がその良さに気づいていくことになる作品。スタッフ、キャストの豪華さに負けず、とても造りが贅沢。「紙の動物園」などケン・リュウの世界観(SF的ガジェットを駆使しながら、詩的でハートウォーミングな作風)に触れておくと、それに寄り添った映像による詩情を堪能できるが、もちろん予備知識なしに観ても見応えあり。

◆「3度の誕生日」を軸に135年に渡るライフヒストリーを描くため、やや長めの127分。原作同様、「死後の人体の保存(プラスティネーション)→不老不死の技術」というSF的描写が前面に出てくるが、物語の軸は、主人公リナの一生が描くArc=円弧(円周ではなく)である。前半では、若きリナが人生に対して味わった思いを、原作の具体的な描写(若い妊娠後の不当な扱いなど)抜きで、ダンスシーンなどから読み込んで感情移入できるかがポイント。後半は、舞台設定や登場人物に原作からやや大きな設定変更があり、その事でこの映画は、大きく成功している。

◆前半は、まず三東瑠璃振付によるダンスシーンが見どころ。空間に刻み込んでいくような切れ味の鋭い動きに圧倒される。初見の人は、長く続くプラスティネーションされる/されたものの描写や、意味深な台詞にあまり意味を読み込み過ぎず、ストーリーを追うことに集中した方がいい。生と死に関わるが、余計に重苦しかったり、説教くさかったりするところは少しもないので、透明感のある映像美や 独特の推進力を持つ世武裕子の音楽を堪能したい。

◆後半は、撮影監督ピオトル・ニエミイスキによる手撮りのモノクロ描写が続く。「大きく振り返って見上げる」といった振り方を全く安定感を失わずに撮っているところなど実に見事。ここで、いのちの輝きが描かれ、「自分の人生を生きるべき」というメッセージが伝わってくる。ストーリー終盤で核心に気づいた時の驚きは新鮮だろう。

◆主演の芳根京子 は演技力に定評があるが、本作でより成長し、若い時代の奔放さ・繊細さ、人生の拠点を確立した充実期、現実にはありえない「不老の老」まで自在に演じきっている。

◆劇場公開前後に、映画評論では絶賛、一方でSNS上の映画好きからは必ずしも評価が高くなかった本作。「好みが分かれる」といった評価により自分の目で見ないで済ませるのは実にもったいない。

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◆現代の「隠れた名作」で、記憶に残る映画。これからも多くの人がその良さに気づいていくことになる作品。スタッフ、キャストの豪華さに負けず、とても造りが贅沢。「紙の動物園」などケン・リュウの世界観(SF的ガジェットを駆使しながら、詩的でハートウォーミングな作風)に触れておくと、それに寄り添った映像による詩情を堪能できるが、もちろん予備知識なしに観ても見応えあり。
◆「3度の誕生日」を軸に135年に渡るライフヒストリーを描くため、やや長めの127分。原作同様、「死後の人体の保存(プラスティネーション)→不老不死の技術」というSF的描写が前面に出てくるが、物語の軸は、主人公リナの一生が描くArc=円弧(円周ではなく)である。前半では、若きリナが人生に対して味わった思いを、原作の具体的な描写(若い妊娠後の不当な扱いなど)抜きで、ダンスシーンなどから読み込んで感情移入できるかがポイント。後半は、舞台設定や登場人物に原作からやや大きな設定変更があり、その事でこの映画は、大きく成功している。
◆前半は、まず三東瑠璃振付によるダンスシーンが見どころ。空間に刻み込んでいくような切れ味の鋭い動きに圧倒される。初見の人は、長く続くプラスティネーションされる/されたものの描写や、意味深な台詞にあまり意味を読み込み過ぎず、ストーリーを追うことに集中した方がいい。生と死に関わるが、余計に重苦しかったり、説教くさかったりするところは少しもないので、透明感のある映像美や 独特の推進力を持つ世武裕子の音楽を堪能したい。
◆後半は、撮影監督ピオトル・ニエミイスキによる手撮りのモノクロ描写が続く。「大きく振り返って見上げる」といった振り方を全く安定感を失わずに撮っているところなど実に見事。ここで、いのちの輝きが描かれ、「自分の人生を生きるべき」というメッセージが伝わってくる。ストーリー終盤で核心に気づいた時の驚きは新鮮だろう。
◆主演の芳根京子 は演技力に定評があるが、本作でより成長し、若い時代の奔放さ・繊細さ、人生の拠点を確立した充実期、現実にはありえない「不老の老」まで自在に演じきっている。
◆劇場公開前後に、映画評論では絶賛、一方でSNS上の映画好きからは必ずしも評価が高くなかった本作。「好みが分かれる」といった評価により自分の目で見ないで済ませるのは実にもったいない。

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