マタチッチの「シェエラザード」?と違和感を感じる人はきっと多いだろう。どうしても「マタチッチといえば硬派、ブルックナー」みたいな印象があるから。でも1958年当時の彼は、指揮者としてはまだ駆け出しに近い状態で、レパートリーもしっかり定まってはいなかった。またクロアチアにおけるナチ協力者として長く活動を制限された境遇にあった。だからたぶん「これ、やって下さい」と与えられた仕事をせっせとこなしていたのだろう(あくまで想像)。でもこの「シェエラザード」、意外に様になっていて良いんです。頑張ってしっかり艶のある音を出している。それでいて硬派の匂いもそこそこ漂っている。(「古くて素敵なクラシック・レコードたち」(村上春樹)」より)