このアルバムタイトルは、ロシアによるウクライナ侵攻で混沌とする世界情勢の中にあって、1枚のアルバムに、1曲の歌に一体何ができるのか、などと振りかぶることなく、しかし深く心を寄せていることを伝えようとするものなんだろう。直接的な表現はなくても、遥かな地に寄せる祈りのようなものが込められた美しいアルバムだと思う。
「島より」は、みゆきさんが若い頃から歌のモチーフとしてきた悲しい愛と別れが究極の形で昇華された曲で、極めて美しい。女の悲しい心象風景が眼前に広がっていくようで、胸を打たれる。「十年」は、濃密なドラマが極めて狭い音階の中に凝縮された曲で、歌いこなすのは至難の業と思うのだけれど、見事な表現力で圧倒される。
このアルバムは、みゆきさんのアルバムの中でも「EAST ASIA」と並ぶ傑作だと思う。