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小泉今日子

タグ
女性アイドル
連載
360°
公開
2012/10/31   17:59
更新
2012/10/31   17:59
ソース
bounce 349号(2012年10月25日発行)
テキスト
文/久保田泰平

 

すべての道は彼女に通じる!? なんてったってアイドルなKYON2の30年

 

今年3月にデビュー30周年を迎えた小泉今日子が、4年ぶりのフル・アルバム『Koizumi Chansonnier』を発表しました。のちに〈花の82年組〉と呼ばれたアイドルとして、松本伊代、堀ちえみ、早見優、石川秀美、中森明菜らと同期でシーンに登場。〈KYON2〉の愛称で親しまれてきた彼女は、常にトレンドのそばに身を置き、ポップソングを通じて新しい自分を見せ続けてきた人。そういう意味では、いまなお〈アイドル〉。すべての道はコイズミに通じる──と言うと大袈裟かもしれないけれど、ラディカルなパフォーマンスやヴィジュアル、カッティングエッジな音楽性をチャームとするような〈アイドル〉の起源は、KYON2だと言っても過言ではありません。

82年、“私の16才”でデビュー。チャートで初めてのTOP10入りとなった4枚目のシングル“春風の誘惑”までの楽曲は70年代の残り香がするもので(“私の16才”と次の“素敵なラブリーボーイ”はカヴァー曲)、この頃のKYON2はまだ、数多いるアイドルのなかのひとりだったと思います。そんな彼女が頭ひとつ抜け出しはじめたのは、ヘアスタイルをショートに切り替えた83年春の“まっ赤な女の子”あたりから。“艶姿ナミダ娘”や初のNo.1ヒットとなった“渚のはいから人魚”などファニーなテイストを含んだ楽曲群を立て続け、80年代という賑やかな時代を象徴するアイドルとしてその快活なキャラクターを広めていったのです。彼女の周りでは必ず楽しいことが起きている──キョンキョンは、いつもそう思わせてくれました。

そして、極めつけは85年の“なんてったってアイドル”。〈清く正しく美しく〉のイメージがいま以上に大切にされていた当時、アイドルの本音をカミングアウトするという設定のこの曲をきっかけに、KYON2は〈なにかやらかしてくれるアイドル〉としてより多くの支持を集めていきます。突飛なことをやっても〈やらされてる感〉をまったく感じさせず、新作に合わせて自分自身をプロデュースしていく能力に長けていたKYON2は、“木枯しに抱かれて”(86年)のような純愛バラードを歌っても、バンドを従えて威勢の良いステージングを見せても、とにかくサマになるんです。アルバム制作においてもみずからプロデュースに関わるようになり、87年の『Hippies』あたりからは、自身の感性に引っ掛かった旬のアーティストを作家陣に招く、というのが恒例になっていきました。

そんなKYON2の本領がさらに発揮されるのは80年代の終わり、つまりはアイドル・ブームが沈静化してから。その名の通りハウス・ミュージックをモノにした『KOIZUMI IN THE HOUSE』(89年)では作家陣に近田春夫や小西康陽を迎え、『N°17』(90年)ではDJ/プロデューサーとしてグッと注目を集めはじめていた藤原ヒロシを、Koizumix Production名義で93年に発表した『Banbinater』ではオリジナル・ラブやコーネリアスらを、96年の『otokonoko onnanoko』ではプロデューサーに菅野よう子を迎えるなど、貪欲にポップ・ミュージックの〈Now〉とコミットし続けていったのです。そんな彼女のキャリアをあえて誰かと比べるならば、やはりマドンナかな。デビュー年がいっしょということもあるけれど、自己分析能力やトレンドをキャッチする感性、現場感覚に優れていて、いくつになっても華がある。そして、ずっと〈アイドル〉であり、ひとりの女性としても魅力的で……というわけで、新作を聴こうっと。

 

▼関連盤を紹介。

左から、松本伊代のベスト盤『オールウェイズ I・Y・O [30th Anniversary BEST ALBUM]』(ビクター)、中森明菜のベスト盤『ベスト・コレクション 〜ラブ・ソングス&ポップ・ソングス〜』(ワーナー)

 

▼小泉今日子の近年の参加作。

左から、Jazztronikの2008年作『JTK』(Knife Edge)、観月ありさの2011年作『SpeciAlisa』(avex tune)、TOKYO No.1 SOUL SETの2011年作『全て光』(tearbridge)、2011年のカヴァー集『モテキ的音楽のススメ Covers for MTK Lovers盤』(ソニー)

 

▼小泉今日子のベスト盤。

左から、『Kyon30〜なんてったって30年!〜』『コラボレーキョン』(共にビクター)