持ってかれちゃう
ヒダカ「では問題の瀧谷さんは?」
瀧谷「ヒダカさんから薦められた、ジュリー・ドリスコール・ブライアン・オーガー・アンド・ザ・トリニティの『Open』っていうアルバムが好きです」
ヒダカ「意外なとこきましたね」
瀧谷「ジュリー・ドリスコールの声とかが」
ヒダカ「和田アキ子風なハリを見せるんだけど、アッコさんほどガサガサじゃないし、不思議な声だよね、あの人。何て言ったらいいんだろう」
桃野「ちょっと持ってかれちゃうんだ」
瀧谷「持ってかれちゃう」
ヒダカ「一歩間違えると演歌っぽい瞬間とかあって」
桃野「コブシが入ってる感がある?」
ヒダカ「コブシはガンガンなんだけど、全然泥臭くないっていうか、割と日本人の琴線に触れる感じはある」
桃野「瀧谷の琴線にも(笑)」
瀧谷「そうね」
ヒダカ「しっとりした曲はほとんどなくて、オルガン奏者と女性ヴォーカルでソウルをやるからすごいノリノリなんだけど、暑苦しくない。JBみたいなトゥー・マッチ感はない。不思議とサラッと聴ける」
瀧谷「そうっす、そうっす」
桃野「〈そうっす、そうっす〉って、さっきから何も発してないけど(笑)。一個、すごい嫌だったのは、タッキーが最初に〈ヒダカさんが薦めてくれた〉って。その意図が、予防線張って〈そこまでツッ込んでくるなよ〉みたいな感じで(笑)」
ヒダカ「タッキーは、一人で家で聴くわけ?」
瀧谷「けっこう聴きますね」
ヒダカ「だいたいは、ドライヴとかで聴いたり。お洒落な感じでね。アシッド・ジャズとかフリー・ソウルの人がDJでかけたりするような音だけど」
瀧谷「最近本番前とかでも聴いてます」
桃野「モチベーション上げるのに?」
ヒダカ「俺たちの前で聴こうよ(笑)。人と聴こうよ」
桃野「タッキーは昔から女性ヴォーカルが好きなんですよ。昔から女の子のバンド入りたいって」
瀧谷「言ってない」
桃野「言ってたよ。なのに、バンド入ると男ばっかりで(笑)」
学校とか会社での〈あるある感〉
ヒダカ「(笑)じゃあ、最後はトオルちゃん行きます。いろいろあるんですけどbounceというよりはMONOBRIGHTのファンの人が聴かないだろう的な意味でいちばん〈ACME〉っぽいのは、オールのベストですね。アメリカの、いわゆるメロディック・パンクの元祖。80年代くらいから活動してる。いわゆるメロコアではなくて、ギター・ポップっぽいコード進行でものすごく速い曲をやるっていう、不思議な世界であまり例をみないバンドかも」
桃野「エピタフ系でも浮いてる存在ですよね」
ヒダカ「エピタフ系なんだけど、純然たるエピタフ系ではないというかね。グリーンデイとかバッド・レリジョンとか、すごい人たちがリスペクトしてるんだけど、その誰とも違う。コード進行が、とにかく変。コード進行は、むしろパワーポップっぽい。ものすごい速いチープ・トリックみたいな」
桃野「それってけっこう理想的なポップさですよね」
ヒダカ「でもあんなに明るくないし、かといってランシドみたいにしかつめらしい感じでもないし。オールってホント、不思議なバンド。しかも曲を書いてるのはドラマーだしね。で、ドラムも変。通常の8ビートじゃない。キメがどんどん入ってくる。だけどそれが曲を邪魔してるわけじゃないし、プログレに聴こえるわけでもないし。オールって世界中のパンク・バンドのなかでいちばんおかしくて、仕組みがよくわかんない。で、ヴォーカルがとりあえずモテない(笑)。〈君に会いたい〉っていうだけを歌ってる。日々の気になることとかを歌う。メッセージ性も何もない。メロコアや青春パンクの元祖なんだけど、そのどれとも違う」
桃野「『Punk O Rama』でしか聴いたことないです」
ヒダカ「TOROPICAL GORILLAなんかがカヴァーしてる“Crazy”っていう曲は、その最たる例なんだよね。全然難しいコード進行じゃないんだけど演奏は高度で、テクニカル。だけどそういうふうに聴こえないっていう。絶対コピーできないから、演奏の手数が多すぎて。TOROPICAL GORILLAのカヴァーもすごかったもん。そもそもTOROPICAL GORILLAも、何人で演奏してるのかわかりにくい。マイナスとマイナスを掛けて結果プラスになってるから、そのカヴァーと合わせて聴いていただきたい。エモいです、とにかく。青春のエモさが詰まってます。さっきのティーンエイジ・ファンクラブと逆で、街中で聴くとすごいハマる。学校とか会社での〈あるある〉な感じを思わせる。ドタバタ感というかね」
桃野「〈都会ACME〉ですね」
瀧谷のいいとこ取り
――では、このなかでカヴァーするとしたら?
ヒダカ「最終回くらい瀧谷さんをフックアップしたほうがいいんじゃない?」
瀧谷「やってみたい」
――ヴォーカルは女性じゃないですけどね(笑)。
ヒダカ「(笑)ジュリー・ドリスコールのカヴァーは意外とないし、おもしろいかも。ブライアン・オーガー自体のカヴァー曲が多いからね。オリジナルよりも、既存のヒット曲をオルガン・モッズみたいにリアレンジしてクラブで演奏するっていうスタイルの人だから、オリジナルが少ないんだけど。あるいはカヴァーを聴いたうえでの再解釈、再構築はおもしろいかもね。勉強になるかも」
桃野「タッキー、いいの持ってきちゃったね」
ヒダカ「なんかやだね、タッキーが誉められるの(笑)」
桃野「だって喋ってないですもん(笑)」
――では、やめます(笑)?
桃野「やめないですけど(笑)、題材はよかったんで。いちばん腑に落ちないラストでしたよ。最終回にして、タッキーがいちばんいいとこ持っていくっていう」
PROFILE/MONOBRIGHT
2006年、桃野陽介(ヴォーカル/ギター/キーボード)、松下省伍(ギター)、出口博之(ベース)、瀧谷翼(ドラムス)の4人で結成し、2007 年にメジャー・デビュー。2010年2月、突如〈2011年の春までに4枚目のアルバムをリリースする〉と宣言し、10項目を掲げた〈DO10!!〉プロジェクトを開始。3枚のシングルに続いてサード・アルバム『ADVENTURE』を発表し、直後の11月には元BEAT CRUSADERSのヒダカトオル(ヴォーカル/ギター/キーボード)が新メンバーとして電撃加入! さらには今年1月に5人組バンドとしての初音源『淫ビテーション e.p.』を、3月にトリプル・タイアップ付きの両A面シングル『COME TOGETHER/DANCING BABE』を送り出し、現在は4枚目のアルバム『ACME』(DefSTAR)を引っ提げたツアーを敢行中! 今後は各地の夏フェスへの出演を予定しています。そんな怒涛すぎる彼らのスケジュールは、オフィシャルサイトでご確認ください!!