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第4回――ACME

連載
MONOBRIGHT a.k.a. サディスティック・ダカ・バンド!?
公開
2011/07/08   20:00
テキスト
構成/編集部

 

MONOBRIGHT_連載_4

 

サディスティックな〈姉さん女房〉が出すお題を元に、残る4人がぶっつけで MONOBRIGHT流のカヴァー曲を提案する短期集中連載もとうとう最終回! 最新アルバムを引っ提げたツアーもファイナルが近付き、いよいよ絶頂を迎えようとしている今回のテーマはズバリ、〈ACME〉でございます!!

 

〈ポップ〉のなかの狂気性

 

ヒダカ「メンバーにとっての〈ACME盤〉。思い付いた方から挙手制で」

出口「僕から。さっきも聴いてたんですけどELOの『Time』が自分にとっての〈ACME盤〉です」

ヒダカ「ELOってBPMやスピードどうこうじゃない……」

出口「どうこうじゃないんですけど、『Time』は確か、シンセを思い切り入れはじめた時期ですよね?  1曲目が“Prologue”っていってSEみたいなのがあって2曲目に繋がるっていう、その繋ぎが別の世界に連れていかれるような感じの、〈あー飛んでく、飛んでく〉みたいな(笑)。で、いちばん最後に“Epilogue”ってのがあって、アタマとケツでちゃんと物語になってるっていう。最初の“Prologue”の歌詞が、光と闇がどうのっていう歌詞で」

ヒダカ「ジェフ・リンって好きだよね、そういうの」

出口「そうですね。〈冷静と狂気の間がなんちゃら〉みたいなことを言ってて」

ヒダカ「毎回よく意味わかんないんだけどね(笑)」。

出口「ポップのなかに狂気性みたいなものがあるよ、っていうことなんだなと、聴きながら思って。聴いてるとすごくトリップ感というか夢の世界みたいなのが」

ヒダカ「ドリーミーな」

出口「そこにすごい、絶頂的な部分を感じますね」

ヒダカ「でーさん、絶対年ごまかしてるでしょ(笑)。ELOでドリーミーだなんて言うの、45歳から上くらいしかいないと思うよ。20歳くらいサバよんでるっぽい、発言がいちいち」

出口「10とか違う親戚のお兄ちゃんがいて、その人から音楽のこと教えてもらったんですけど、いかんせん10離れてるもんだから、時代もズレちゃうわけですよね」

ヒダカ「(笑)まあでも、ELOは良いよね。オリヴィア・ニュートン・ジョンとの“Xanadu”もいい曲だしね」

 

ノスタルジー絶頂

 

桃野「僕は〈田舎ACME〉ってコンセプトで考えると(〈田舎ACME〉についてはこちらのインタヴューで)、ティーンエイジ・ファンクラブの『Bandwagonesque』。

ヒダカ「いいアルバムだけど、絶頂っぽくない(笑)」

桃野「上京してから地元帰ってティーンエイジ・ファンクラブを聴くと、すごい染み方するんですよね。ノスタルジック感というか。そのアガり方というか、〈ノスタルジー絶頂〉みたいなものがすごい引き出されるんですよ」

ヒダカ「街中で聴くよりは、単線の列車に乗って聴くほうがハマるみたいな」

桃野「そういう時のハマり方が尋常じゃないっていうのがティーンエイジ・ファンクラブで。なおかつ決してただのんびりしてるわけでもなくて、速い曲もあるし。2曲目の“Satan”とか、無駄にスピードあるけど、ただそれだけっていう。2分ぐらいの」

ヒダカ「田舎の人たちが抑えてるドロドロを吹き出しちゃった感じ」

桃野「そうそう、本当に完全に田舎心っていうか。自分の気持ちを歌われてるような気持ちになるのがティーンエイジ・ファンクラブの好きなところ」

ヒダカ「スコットランドっぽい感じだよね。ロンドンじゃない」

桃野「それが北海道の根室っていう何にもないところに」

――日本のグラスゴー?

桃野「すごくいい言い方するとそうですけど。(多くの有名アーティストは)輩出されてないです(笑)」

ヒダカ「納得の一枚でした」

 

あっちの世界とこっちの世界をふらふら

 

松下「僕はデヴィッド・ボウイの『Aladdin Sane』かもしれないです。高校生の時にバンドをやりはじめた時に、僕、同級生とバンド組んでなくて、兄貴と兄貴の大学生たちとやってて、その時にドラムの人が、〈これ絶対好きだよ、聴いてみてよ〉って言ってボウイをいろいろ紹介してもらったんですけど、『Aladdin Sane』を聴いた時、ミック・ロンソンのギターもカッコイイのに、すごい変な音階のピアノを弾いてるのが印象的で。あっちの世界とこっちの世界をふらふら、ピアノで行ったり来たりしてるのを、ボーッとして聴くみたいな」

ヒダカ「恍惚感あるよね」

松下「なんか、トランス気味っていうか。あとすごいお洒落に感じたんですよね」

ヒダカ「ミック・ロンソンはハード・ロックっぽいんだけど、もう一人のピアノのマイク・ガースンっていう人は、ジャズとかの、全然ロックじゃない畑の人だからね」

松下「曲中で不思議な絡み方しててなかなか終わらないし、間奏も無駄に長い。長い曲だとトランスじみるっていうか、ボーッとする感覚みたいなのを初めてもらったような気がしますね」

ヒダカ「ハードなギターのあとにいきなり冗長なピアノ・ソロが始まるみたいな。そういう曲あるもんね。“Aladdin Sane”ってタイトル曲自体そうだもんね」

松下「ピアノの位置みたいなのが、キレイなんだけどサイケみたいな。そこらへんの融合感がおもしろい」

ヒダカ「確か、あのアルバムだけアメリカ・ツアー中に書いた曲が多いからそうなった、って何かで読んだかも。『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars』のツアーをアメリカでやってる時に書いた曲が多いから、アメリカのエピソードが多くて。イギリス人が書くアメリカンみたいな、不思議な感じ。恐らくラリってたかも。ジャスティスが一昨年ぐらいにライヴ・ツアーDVDみたいなの(2008年のライヴCD+DVD『A Cross The Universe』)を出してて、それをクボタ(マサヒコ)さんがBEAT CRUSADERSのツアー中に観てたんだけど、フランス人がアメリカ大陸を横断しながら、どこまで本当なのかわからない……女はべらしてたりとか、カジノみたいなとこに入り浸ってたりとかってシーンが挟まってくのよ、ライヴの合間に。それにすごく近い。大陸を見たことないアーティストが大陸で羽目を外して、っていうのが『Aladdin Sane』なんだよね、そもそも。官能的なアルバムですよね」

松下「ホントにキレイですよね」

 

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