『2013 : ライヴ・フリクション』
2006年にレックと中村達也とのベース&ドラムスによる2人組となって活動を再開したフリクション。昨年発表されたミニ・アルバム『DEEPERS』は、幾多のライヴをへて制作されたスタジオ録音作品だった。そこに収録された5曲のうち3曲がカヴァー(ストゥージズ、ストーンズ、ジミ・ヘン)であり、それはかつてのバンド3/3(さんぶんのさん)時代の指向性をうかがわせもする、レックの音楽的ルーツを十分に感じさせるものでもあった。
しかし、そのアルバムや実際のライヴでの演奏を体験して思い出したのは、レックがかつて『レプリカント・ウォーク』(1988)がリリースされた際のインタヴューで、『スキン・ディープ』(1982)以来の6年のブランクについて、最近では音楽や演奏が楽しくなってきたので、バンドを維持するためにバンドをやることには飽きてしまっていた、という主旨の発言をしていたことである。それは今回の活動再開の成り立ちとも通じているに違いない。その意味では、レックはこの新生フリクションで、プレイヤーとして最高のパートナーと出会い、理想的な再スタートを切ったとも言えるだろう。2人組というのは、演奏者が1対1で真っ向から向き合うことのできる最小形態である。ゆえにライヴでは、あたかも2人の対決するさまを見るような、血気迫る緊張感のある演奏と、しかし、どこか演奏を楽しみ、互いを開いていくような、音楽のダイナミズムを感じることができる。
そして、現在のフリクションによる初のフル・アルバムが、2006年から現在にいたるまでのライヴから選ばれた演奏によって構成されたライヴ・アルバム、2枚組のヴォリュームで、ついにリリースされることになった。
フリクションはこれまでにも、各時期にそれぞれライヴ・アルバムをリリースしているが、やはり思い出すのは、レックが観客を想定できない演奏に、どこか違和感を持ってしまうという発言をしていたことだ。それは、ファースト・アルバム『軋轢』(1980)のレコーディングについての発言だった。よく知られているように、このアルバムは坂本龍一によってプロデュースされ、メンバーをはじめ、実際にフリクションのライヴを体験した人たちには、スタジオでの録音がライヴのダイナミズムを伝えきれていないということや、ミキシングによる音処理の問題など、評判が良くないものでもある。(しかし、僕はそれゆえに、当時フリクションの異色性というものが際立って聴こえていたのだが)。そして、その欠落と落差を明らかにするかのように『ed '79 Live』(1980)が自主制作でリリースされ、それはフリクションの最高傑作であるとする人もいる。このような過去の経験からも、レックには彼らふたりが絶対的な自信を持つ演奏のダイナミズムを、その鮮度を落とすことなく記録することこそが重要だった。それは来る2013年にもわれわれを震撼させるに違いない。