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GALACTIC

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360°
公開
2010/03/26   23:10
更新
2010/03/26   23:19
ソース
bounce 318号 (2010年2月25日発行)
テキスト
文/ハヌマーン

 

ギャラクティックのミュージック・ギャラクシー

 

 

原点回帰、と捉えるべきなのだろうか。およそ2年ぶりとなるギャラクティックのニュー・アルバム『Ya-Ka-May』は、彼らを育んだニューオーリンズのミュージシャンを数多く迎えた、NOLAオールスターズ作品に仕上がってきた。ほぼ全曲にラッパーをフィーチャーした前作『From The Corner To The Block』にてバンドの新生面をアピールした彼らは、どのようにして今回のアプローチに至ったのだろうか? まずはその歩みから辿ってみることにしよう。

 

NOLAサウンドの更新者として

ファンキーでファンタスティックな〈ファンカスティック・ジャム・バンド〉を自認するギャラクティックは、当初8人組として94年に活動をスタートしている。そもそものきっかけはワシントンDCのパンク・シーンに属していたジェフ・レインズ(ギター)とロバート・マーキュリオ(ベース)の両名がルイジアナ州ニューオーリンズ(NOLA)に移り住んだこと。プロフェッサー・ロングヘアーやドクター・ジョン、そしてもちろんミーターズといったNOLA産のサウンドに魅せられて、ニューオーリンズ・ファンクを現代的な感覚で披露すべく結成されたのだった。96年にはファースト・アルバム『Coolin' Off』をリリースし、2作目の『Crazyhorse Mongoose』(98年)を発表する頃には現在にまで至るバンド・メンバーが揃っている。ジェフとロバートに加えて、地元ニューオーリンズ出身のスタントン・ムーア(ドラムス)にオマハ出身のリック・ヴォーゲル(キーボード)、そして最後に加入したLA出身のベン・エルマン(サックス/ハープ)の計5名、そこに世代が上となるシンガーのセリル“ハウスマン”デクロウを加えた6人体制で、ギャラクティックは徐々に支持を広げていくことになった。

 その大きな推進力となったのは、地元の若手ではNo.1のドラマーと評されたスタントンの力強いプレイであり、NOLAの伝統に則ったセカンドライン・ファンクとヒップホップ的なループ感を強調したアーシーなサウンドを融合したスタイルは、ジャム・バンド・シーンからの大きな支持を獲得する。それはまた、ミーターズの時代から連綿と受け継がれてきた土着的なファンク・サウンドが、ロック・フェスなどの多様なシチュエーションに向けて見事に更新されたということを証明するものでもあったのだ。

しかし、やがて変化が訪れる。ライヴなどでさまざまな異分野のアーティストたちと共演を重ね、またメンバー個々が興味の幅をめいめい拡大していくことによって、バンドにおける進取の気性はかなり旺盛なものに育っていった。その結果、彼らはライヴ活動とスタジオでの作業を完全に別物として捉え、スタジオではテクノロジーも積極的に導入して新しい試みをどんどん実現させていこう、という方向性で結束を新たにするのだった。ハンサム・ボーイ・モデリング・スクールやゴリラズを手掛けて当時注目を集めていたダン・ジ・オートメイターをプロデューサーに起用し、2003年の『Ruckus』を野心的にまとめ上げたのもその流れに沿うものだっただろう。結果的に、年長者でオーセンティックな歌唱を持ち味としていたハウスマンは(体調不良を理由に)2004年に脱退を表明することになった。

 

野心的なアプローチ

現在と同じ5人編成になってからを新生ギャラクティックと捉えるなら、彼らはまさに意志統一を図りながらガツガツと創作活動に挑むユニットに生まれ変わったと言える。その奮闘が最初に実を結んだのは、アンタイに移籍して先述のように多数のラッパーを招いた『From The Corner To The Block』(2007年)だ。前作からは4年の月日が経っているわけだが、その間にはかの〈カトリーナ〉による地元の被災という悲劇もあって、必然的に物の見方や意識を改めさせられる部分も大きかったことだろう。ゆえに、ギフト・オブ・ギャブ(ブラッカリシャス)やリリックス・ボーン、ブーツ・ライリー(クープ)、レディバグ・メッカといったアンタイ好みっぽいコンシャスな面々以上に、NOLAから成り上がったジュヴィナイルの登場は不可欠だったろうし、元ワイルド・マグノリアスのビッグ・チーフ・モンク・ボドルーやトロイ“トロンボーン・ショーティ”アンドリュースといったローカル・アーティストの参加は意義深かったのだ。

そういう意味では、アンタイからの2作目となる今回のニュー・アルバム『Ya-Ka-May』も確実に前作のある流れを継承しているものだと言えるし、原点回帰のように思えるアプローチであっても、相変わらずのギャラクティックらしいクリエイティヴな部分はきっちり重視されている。彼らはまだまだ前進しているのだ。

 

新しいニューオーリンズの音

 オープニング・ナンバーの“Friends Of Science”に続いて飛び出してくるのは、最近だとラファエル・サディークとも競演していたリバース・ブラス・バンドとの“Boe Money”。NOLAに固有の文化とも言えるブラス・バンド表現をここで提示しながら、続いてのナンバー“Double It”ではコチャニ・オーケスター(マケドニアのジプシー・ブラス・グループ)の楽曲をサンプリングに使用して、ジプシー・ブラスとNOLAのブラス音楽の親密な関係をうっすらとアピールしているのがニクいところだ。そこからは多彩なNOLAの声が強靱なグルーヴを彩っていく。“Heart Of Steel”にフィーチャーされているのは60年代から活躍するニューオーリンズ・ソウルの女王=アーマ・トーマス。ファンキーな“Wild Man”にはビッグ・チーフ・ボー・ドーリス。“Bacchus”にはピアノ演奏も含めてアラン・トゥーサン。いずれもパフォーマー個々の味わいをしっかりとバックアップするアレンジが素晴らしい。

その後は、前作でも“Tuff Love”をパワフルに彩っていた地元シーンのキーマン、トロンボーン・ショーティがイキイキとトロンボーンをプレイする“Cineramascipe”を経て、またも〈声〉のコーナーへ。ジョン・ブッテが歌う“Dark Water”では、美声シンガーとして認知される彼がアグレッシヴな振る舞いを見せていて少し驚かされる。それに続いての“Do It Again”では、90年代半ばにマニー・フレッシュと組んでローカル・ヒットを放ったこともあるファットな女傑ラッパーのチーキー・ブラックをフィーチャー。ブーティーなラップ・スタイルに合わせたバウンシーな当然ながらお手の物か。以降も、NOLA産ロック・バンドであるモーニング40フェデレーションのメンバーや、ソウルフルなブルースマンのウォルター“ウルフマン”ワシントンらが代わるがわるマイクを握っている。

こうして内容を見ればわかるように、偉大な先人たちもローカルの無名勢も一体化させることで、彼らは新しいニューオーリンズ・グルーヴを有機的に作り出すことに成功した。スタントンをはじめとするメンバー個々の活動には相変わらず目覚ましいものがあるが、この先も意欲的にバンドとしてさまざまな領域にトライしてほしいし、変化を恐れない彼らならきっとやってくれるはずだ。『Ya-Ka-May』がその可能性を信じさせてくれる。

 

▼『Ya-Ka-May』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

左から、ジョン・ブッテの2008年作『Good Neighbor』(Boutte Works)、アーマ・トーマスの2008年作『Simply Grand』(Rounder/Decca)、ジェイムズ&トロイ・アンドリュースの2006年作『12 & Shorty』(Keep Swingin')、アラン・トゥーサンの2009年作『The Bright Mississippi』(Nonesuch)、ウォルター“ウルフマン”ワシントンの2008年作『Doin' the Funky Thing』(Zoho)

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