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第555回 ─ ALL TOMORROW'S PARTIES

連載
NEW OPUSコラム
公開
2009/11/25   18:00
ソース
『bounce』 316号(2009/11/25)
テキスト
文/村尾 泰郎

奏者と観客の距離が世界一近い(?)あのフェスをご自宅で!

  毎回、ひとりのアーティスト/グループがキュレーターとなり、参加アーティストをセレクトするUKのロック・フェス〈オール・トゥモローズ・パーティーズ〉。今年で10周年を迎えたのを記念して、フェスの歴史/名演の数々を凝縮したドキュメンタリーDVD「All Tomorrow's Parties」が完成した。舞台となるのは海岸沿いにある小さなキャンプ場。大手スポンサーはシャットアウトされているせいか、どこかアットホームな雰囲気なのがいい。同じ宿舎にミュージシャンもファンも宿泊しているため、庭先で突然ライトニング・ボルトやダニエル・ジョンストンが演奏しはじめて、それをファンが取り囲む、なんて微笑ましいひとコマもある。

 もちろん、バトルス、ベル・アンド・セバスチャン、アニマル・コレクティヴ、BOREDOMSなど、個性派揃いのアーティストによる白熱したステージもたっぷり収録。ポーティスヘッドの予想外に激しいパフォーマンスに驚いたり、観客に余裕のダイヴをキメるイギー・ポップに拍手を送ったり。そんななか、アクロン/ファミリーがオーディエンスを引き連れて会場を飛び出し、野外レイヴ状態になるシーンはハイライトのひとつだろう。DVDではそういったフェスの自由な空気をスタイリッシュな演出で捉えていて、音楽と映像の息はピッタリと合っている。何しろ製作を手掛けているのがワープ・フィルムズだけに、クォリティーの高さは文句なし。音楽ドキュメンタリーの新たなクラシックの誕生だ。