ウマ~いお皿を届ける老舗レーベルに再注目を!
大学生だったマイケル・ロスとDJのマット・ダイクが87年にLAで設立したインディー・レーベル、それがデリシャス・ヴァイナルだ。まだ西海岸のヒップホップが歯牙にもかけられてなかった時代、トーン・ロックやヤングMC、デフ・ジェフといった面々がヒットを連発することでレーベルはすぐに注目を集めたんだよ。NY産のブツと比べれば開放的で下世話で単純明快、しかも売れる、ってことで当時のヒップホップ好きからは本気でバカにされてたんだが……似た体制から生まれたビースティ・ボーイズの2作目とかは大傑作扱いだぜ? んで、数年してギャングスタ・ラップが西の主流になるとポップ路線は失速し、ダイクもレーベルを去っている。だが、90年代以降のデリシャス・ヴァイナルはファーサイドらと契約し、一転してNY産品に通じる良作を送り出すツウ好みなレーベルに変貌していくんだ。故J・ディラの才能を育んだのもここだし、創立20年を突破してまだ健在なのも凄いだろ。まあ、時代によってまったく表情が違うレーベルなんだけど、共通してるのはどれも〈美味い皿〉ってことなんだよな。
YOUNG M.C.
『Stone Cold Rhymin' -Deluxe Edition』 (2009)
オリジナルが89年作だから、20周年を記念したデラックス盤ってことか。このヤングMCはUK生まれでNY育ち。世界を踊らせた“Bust A Move”を筆頭に、イキの良いラップとザックリしたネタの絡みがとにかく楽しいぜ。今回はリミックスも山盛り収録でイイね! ちなみに本人はすぐに失速し、後に『Return Of The 1 Hit Wonder』なんて自虐的なブツも出してたんだ。元気にしてるか~?
THE PHARCYDE
『Labcabincalifornia』 (1995)
NY信者も唸らせたLAアンダーグラウンドの代表格さ。この2作目ではQ・ティップの代わりに抜擢されたJ・ディラが“Runnin'”“Drop”などの6曲を担当していて、彼にとっても初期の金字塔と言えるぜ。構成員のファットリップもデリシャス・ヴァイナルからソロ作を発表してたな。
THE BRAND NEW HEAVIES
『Get Used To It』 (2006)
アシッド・ジャズからUKデビューしたこのバンドは、US進出にあたってデリシャス・ヴァイナルと契約したんだ。その縁はエンディア・ダヴェンポートが復帰した本作でも継続。コンシャス系ラッパーとの共演も盛んで、90年代のレーベル・カラーを一気に塗り替えた重要な存在だぜ。
TONE-LOC
『Loc-ed After Dark』 Mercury(1988)
レーベルの看板アクトで、大ヒットしたエロ・アンセム“Wild Thing”を含むこの初作は全米1位を奪取! NY信者の〈LA産=バカ&売れ線〉という頑迷な偏見を生んだ一枚だが……直後にビースティを手掛けるダスト・ブラザーズの無邪気なサンプリング遊戯がゴミかどうか、聴いて確かめてくれ。
THE WASCALS
『Greatest Hits』
ファーサイドの弟分として93年にデビューするも、結果的にアルバムを出せなかった不運な奴らだ。兄貴たちの傑作『Bizarre Ride II The Pharcyde』を手掛けたJ・スウィフトによる佳曲の数々はこのベスト盤でチェックできる。疑似90年代モノとは似て非なるジャジーな味わいだぜ!