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第8回 ─ 〈WIRE09〉復習編 各アクトの詳細をレポート!

連載
オレらの夏フェス 予習・復習帳 '09
公開
2009/09/02   18:00
更新
2009/09/02   19:42
テキスト
文/石田 靖博、北野 創、佐藤 譲

現場の熱気をそのままお届け! 編集部が注目したアクトのステージングをたっぷりとレポートいたします!!

18:00~
■CHRISTIAN SMITH @ MAIN FLOOR

  昨年に続いての登板となる北欧テクノ界のヴェテラン、クリスチャン・スミス。今年はトップバッターの大役を任されて気合いも充分だった模様で、プログレッシヴな硬質テックを中心に、ブレイクをガンガン多用した大バコ映えするミックスを披露! ラストのティモ・マース“Jetstream”では、ブンブン唸るサイレン音をエフェクターでいじくり倒し、挙句の果てには曲の判別もできないほどに高速回転させて、フロアに大狂乱を巻き起こしていましたよ。*北野

19:10~
■MODERAT @ MAIN FLOOR

  片やダンスホールからダブステップ、グライムを飲み込み、トム・ヨークも一目置く、ベルリン随一のビート・マエストロへと成長したモードセレクター。片やエレン・アリエンとの共演や傑作『Walls』を経てベルリン随一の美メロ・マエストロとして成長したアパラット。アブストラクトから出発した2組が合体したユニット、モダートのライヴは、互いの長所が余すところなく発揮されたものとなった。ボトムの利いた“A New Error”にはじまり、アパラットが繊細なヴォーカルを披露する“Rusty Nails”やギターとシンセの昂揚感がスパークする“Porc”など、ブリアルに昂揚感を加えてメロディアスに仕上げたような、トム・ヨークのソロ作にダイナミズムを加えたようなそのスタイルは、他の〈WIRE〉出演アクトと重なるようで重ならない孤高さも含め、際立った存在感を放っていた。*佐藤

19:55~
■DJ TASAKA @ MAIN FLOOR

  新作『SOUL CLAP』で自身のファンクネスをよりソウルフルに、エモーショナルに表現したDJ TASAKA。冒頭のスエノ・ラティーノはそんな彼のモードを表明した曲なのかもしれない。得意のスクラッチは影を潜め、アルバムに通じるディープでしなやかなトラックを中心に、随所でロイヤル・ハウス“Can You Party?”やサン・ジェルマン“Rose Rouge”など、オールド・スクールなネタを混ぜ込んでいく構成。マイクロオフィスで培ったジワジワとビルドアップするスタイルは“Heart Shaped One”による見事なフィナーレで結実したように思う。TASAKAの新たな季節の到来を祝いたい。*佐藤

20:20~
■JOSEPH CAPRIATI @ SECOND FLOOR

  ぶっちゃけノー・チェックでしたが、あのダブファイア主宰の配信限定レーベルからのリリースもあるし……と観に行ったらこれが大正解! 基本は硬質なクリック寄りのテクノだが、ダブファイア的な音空間デカめのトラックと、途中でカマす大仰なブレイクでフロアをアゲる、つまりコクーン的最新DJスタイル! 20時台から来る猛者最高、イタリア面最高、大バコ系クリック絶好調! *石田

21:05~
■GUI BORATTO @ MAIN FLOOR

  そのメロディアスかつドラマティックな作風で幅広い支持を得ているブラジルの精鋭、グイ・ボラットは、今回はライヴ・セットにて登場。幻想的で少しメランコリックな雰囲気の楽曲群がフロアに心地よいムードを漂わせるなか、やはり大歓声が沸き起こったのは代表曲“No Turning Back”と“Beautiful Life”のイントロが流れ出した瞬間。人生の美しさと儚さを同時に表現したような感動的なメロディーに包まれながら、満面の笑みで思い思いに踊り騒ぐオーディエンス、タバコをくわえながら楽しそうに機材を操るグイ。それらすべてのシチュエーションが感動的に胸に響き、思わずマジ泣きしそうになりました! *北野

21:30~
■JEFF MILLS @ THIRD AREA

 長い行列に加わって〈THIRD AREA〉に向かうと巨大なモニターがオーディエンスの前に立ちはだかり、ステージ手前では謎の科学者たちがモニターと交信している。しばらくするとモニターに2006年から宇宙に旅立っているはずのジェフ・ミルズが登場し、スペシャルDJパフォーマンスを開始した。序盤はスペーシーなシンセをふんだんに盛り込んだトラックを組み合わせながらゆっくりとフロアを揺らしていく。やがてミックスの途中、フロアのオーディエンスに目を向けジェフが挨拶をすると、宇宙とフロアが中継で繋がってることがようやく認識できたのか、オーディエンスはさらに身体を大きく動かしていく。無重力のせいか時折カメラが逆さになっているのがおもしろい。中盤から終盤は徐々にテンポも上がっていき、大きな盛り上がりを見せたこの日のスペシャル・セット。以前から〈将来はホログラフィーが普及し、DJの概念も変わってくる〉と言っていたジェフらしい、未来を開拓する攻めのパフォーマンスだったと言えるだろう。*佐藤

21:50~
■ELLEN ALLIEN @ MAIN FLOOR

  ビッチ・コントロールの首領であり、これまでに5回出演し、すっかり〈WIRE〉の常連となった感のあるエレン・アリエンは、自身の新曲となる“Lover”など、ビッチ・コントロール直系の凝った構成のトラックをかけつつ、巧みなエフェクト使いで観客をしっかり煽っていく貫禄のプレイ。アルバムとなると比較的地味な作風になることが多い彼女だけど、DJでは女性ならではの繊細さとキュートさがいいバランスとなって華やかに盛り上がってしまう。ブースで見せるプリチーなダンスに今年も魅せられました。*佐藤

23:00~
■GABRIEL ANANDA @ MAIN FLOOR

  アルバム『Bambusbeats』が某誌における卓球の年間チャートに選出されてから、ついに〈WIRE〉の〈MAIN FLOOR〉でのライヴまで辿り着いた注目の新鋭。上述の作品は全面でハウス~テクノ・フリークが大好きなパーカッション+4つ打ちのフォーマットだったが、ライヴでは必殺パーカッシヴ・テクノは当然のこと、ハード風味や歪みベース、ノスタルジックなメロディーやアンダーワールド“Rez”を思わせるトランシーなシンセなど、基本の4つ打ちをいかにおいしく聴かせるか、という工夫が嬉しい職人仕込みのテクノ・コース! ステージとセットの大きさのギャップ最高、中途半端なロン毛最高、パーカッシヴなテクノ絶好調! *石田

▼文中に登場したアーティストの関連作を紹介


ガブリエル・アナンダの2008年作『Bambusbeats』(Karmarouge)

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