石野卓球『A Pack To The Future』 キューン(2005)
〈IN THE BOX〉から約2年ぶりとなる石野卓球のミックスCD。相変わらずの多忙っぷりだったせいもあり、待たされた感じはあまりしないが、ライヴ録音だった前作のアッパーな雰囲気とは対照的に、ブリーピーな最新トラックを中心とした選曲でジワジワとアゲていくミックスは現在進行形。ハティラスやエリック・プライズ、ゾンビ・ネイションの別名義による激殺アシッド・トラックで畳み掛ける後半には流石の一言です! *ケチャ(「bounce」2006年1-2月号掲載)
JEFF MILLS『Les Three Ages』 MK2(2004)
ここ最近は地であろう学究肌のアート指向を全開させているジェフ教授の新たな挑戦はかつてフリッツ・ラング「メトロポリス」でも試みた無声映画のサントラ! そして今回の相手はかのバスター・キートンの初主演映画「キートンの恋愛三代期」! 内容のほうは最近の教授らしくデトロイト色が濃厚で、あのシンセが飛び交う安心の出来! CDオンリーのものと、このサントラを乗せた映画本編が観られるDVDとのセットがあります。*石田靖博(「bounce」2004年12月号掲載)
JORIS VOORN『Balance 014』 EQ(2009)
いまやあたりまえのように量産されているミックスCDの歴史に新たな1ページを刻むべく、ヨリス・ヴォーンが革新的な作品を作り上げた。100曲以上ものトラックを解体/再構築し、まったく別の曲として聴かせた超絶ミックス! 新旧問わず選ばれたトラック・リストを見ているだけでもワクワクできる選曲で、それらをどう料理しているか考えただけでテンションが上がってしまうはず。そのスゴさは自分の耳で確かめろ!! *石井隆弘(「bounce」2009年3月号掲載)
KEN ISHII『WARRIOR ON THE DECKS-PLAY PAUSE AND PLAY 2』 Sublime/ミュージックマイン(2009)
ジャパニーズ・テクノゴッドが活動15周年を迎え、プロレスラーから侍にヘ~ンシン! DJたるものレコード・バッグには盛り上がり必至の〈鉄板皿〉を必ず忍ばせているわけで、そんな己のバッグの中身を惜しげもなく披露したような、年輪を窺わせるミックスCD第2弾がこちらです。カール・クレイグ“Throw”やポール・マックのラテン・テクノ、自身のトラックも投下。デトロイトを軸に新旧織り交ぜた燻し銀プレイに拍手です! *田中将稔(「bounce」2009年7月号掲載)
Language『Slower Than Summer』 Madoromi(2009)
i-depやnote nativeとも交流の深い2人組ユニットが、ヴォーカルにKaoriを迎えて完成させた初作は、心地良い浮遊感を主体とする〈スロウ・ハウス〉を提唱したもの。チルアウトとテック・ハウスの中間というか、ゆったりめのビートに清涼感のある歌声が泳ぐサウンドは、フロアで熱くなった身体を冷ますかのよう。トリッピーで幻想的なオーパスIII“It's A Fine Day”のカヴァーも収められた、暑さも吹き飛ぶクールな一枚。*郡司和歌(「bounce」2009年9月号掲載)
LEN FAKI『Berghain 03』 Ostgut Ton/OCTAVE(2009)
前回のマーセル・デットマン仕事もヤバかった注目ミックス・シリーズの第3弾には、〈WIRE〉参戦経験もあり、主宰するフィギュアやポディウムも好調のレン・ファキが登板。プラネタリー・アサルト・システム(ルーク・スレイター)の大名曲“Surface Noise”にローラン・ガルニエやベースメント・ジャックスなんかも使いつつ、自身やレディオ・スレイヴの投入で最新型に仕立てた硬質なミニマル・ミックス! *石田靖博(「bounce」2009年5月号掲載)
metalmouse『Tales About Sheep』 stair(2007)
シーンに突如として現れ、〈和製アンダーワールド〉と評されたファースト・アルバム『Sea Train』でスマッシュ・ヒットを飛ばした次世代ダンス・ミュージック・クリエイターの2作目。叙情的でキャッチーなメロディーはそのままに、よりスケール・アップした音楽性が楽曲の幅を広げ、壮大な世界観を作り上げた意欲作。疾走するビートにファンタスティックな泣きメロのシンセが交錯する“Spring Rains”にトキメキを隠せません! *田中将稔(「bounce」2007年4月号掲載)
MODERAT『Moderat』 Bpitch Control(2009)
エレン・アリエン姐さん率いるビッチ・コントロールからモダートなる超強力新人が登場!! と思いきや、何と!何と!あのモードセレクターとアパラットによる奇跡のコラボこそがこのユニットの正体だったのである。ハッキリ言ってこの組み合わせだけでもう反則じゃない?と思ってしまうぐらい相性の良さは抜群で、お互いに妥協なく細部にまでこだわって作った感じがヒシヒシと伝わってくる傑作だ。特に歯切れの良いリズム・トラックがアルバム全体をビシッと締めていて、最後までダレることなく聴かせるあたりはスゴイ。また独特のコード感で展開していくシンセ・リフも両者の持ち味が良く出ていて最高!! 早い話がすべてにおいて完璧な、素晴らしいアルバムってことです。ティキマンも参加してるぞ! *石井隆弘(「bounce」2009年5月号掲載)
TOBY IZUI『TOBY IZUI PRESENTS RESONANT : RECORDINGS』 YENZO(2004)
日本一、いや世界一愛嬌のあるテクノDJと言えばもちろんTOBYですが、彼が最近話題のTRAKTOR(パソコン上でDJミックスができるソフトウェア)使いの第一人者ということはあまり知られておりません。本作は、TOBYがそのTRAKTORを使用してベルギーのレゾナントの音源を惜しげもなくデジタル・ライヴ・ミックスした一枚。聴き手をグイグイ引っ張り込むような歯切れの良いミキシングはもちろん健在。最後に光悦。*ケチャ(「bounce」2004年9月号掲載)
2000 AND ONE『Heritage』 100& Pure(2009)
まだ2009年になって間もないが、早くもクリック部門年間ベスト級の大強力盤! かつてマイクロファンク名義で大ヒット“Pecan”をリリースし、90年代半ばからデジャックス・アップ・ビーツ(!)などの別名義でも活躍した超ヴェテラン、ディラン・ハーメリンによる2000アンド・ワン初のアルバムだ! タイトルからしてリル・ルイス“French Kiss”の2009年版っぽい“Spanish Fly”、トライバル気味なドラムを良い意味であっさりめに仕上げた“Dat Na Poku”、同じくドス黒ハウスを薄味テック・ハウスに調理した“Wan Poku Moro”、90年代ハード・ミニマルをクリック化した“Mejiro”のように、テクノ黄金期の感じをクリック・ハウス以降の手法/感覚でアップデートした、全曲フロア殺しの傑作! *石田靖博(「bounce」2009年4月号掲載)