MOGWAI『The Hawk Is Howling』Matador/ HOSTESS(2008)
捻れて、潰れて、歪んで……といったサウンドの機微、千変万化するメロディー、他のバンドとは一味も二味も違うポスト・プロダクション、破壊的なまでの暴力性、そして甘美なカタルシス──進化を繰り返してきた彼らが、新たな局面を迎えていることがはっきりと聴き取れる。アンディ・ミラーをプロデューサーに迎えたこの新作は、形骸化してしまったポスト・ロックの意味をふたたび問う内容だ。アメイジング! (冨田 明宏/ 2008年10月号掲載)
THE SPECIALS『The Specials』2 Tone/Chrysalis(1979)
スカに興味を持ったリスナーならどのルートを辿っても必ず行き着くであろうこの金字塔には、パンク魂を注入したエネルギッシュな2トーン・ビートが満載! スカ一辺倒というわけではなく、ダブやレゲエをベースとした楽曲も多く収録されているので、ジャマイカのストリート・ミュージックをスタイリッシュに採り入れたUKならではのダンス・ロック集という機能性も。反骨精神を飄々と爆発させる独特の〈チャラさ〉がムチャクチャ格好良い! (土田真弓)
TOM TOM CLUB『Tom Tom Club』Sire(1981)
トーキング・ヘッズのベーシスト=ティナ・ウェイマスとドラムスのクリス・フランツによる、おしどり夫婦ポップ・ユニットであるトム・トム・クラブ。トーキング・ヘッズがデヴィッド・バーン主導による急進的な音楽革命を決行しつづけるなか、そのシリアスな革命の嵐から逃れて、一時、肩の力を抜いて純粋に音楽を楽しみたいと思ったのかどうか、このユニットではパーティー感溢れる陽気でポップなサウンドを展開。ヘタウマなラップが楽しい“Genius Of Love”がグランドマスター・フラッシュ&ザ・フューリアス・ファイヴをはじめ、マライア・キャリー、2パック、バスタ・ライムズなどにサンプリングされたことでもわかるとおり、ジャンルの枠を超えてトム・トム・クラブの(真面目な)お遊び音楽がトーキング・ヘッズと共に愛されたのは、まさに当時の先鋭的なNYサウンドを代表するひとつであった証といえるだろう。(ダイサク・ジョビン)
WAR『The World Is A Ghetto』Avenue(1972)
チカーノたちから大きな支持を得た西海岸のミクスチャー・ファンク・バンド。力まずファンクするスロウな表題曲、ラテンやスカの匂いもする“The Cisco Kid”という2大ヒットを含むこの3作目には、陽気なようでいて仄かに哀しくもある彼らの音世界が集約されている。(林 剛/2008年9月号掲載)
グッドラックヘイワ『Patchwork』Galactic(2008)
2007年の〈フジロック〉でも大盛況だったSAKEROCKの伊藤大地と同バンドの元メンバー、野村卓史のインスト・デュオによる2作目。フルートやスティールパン、フィドル、ノコギリなども賑やかに加わっているが、基本はドラムと鍵盤(と口笛)だけ。なのにこの怒濤の展開はナニ?とワクワクしっぱなしで、摩訶不思議グルーヴがお祭りを見ているような昂揚感を煽る。和気あいあいとしたムードが反映された音楽は楽しいものです。(松岡 真紀子/bounce 2008年01月号掲載)
砂原良徳『No Boys, No Cry Original Sound Track Produced by Yoshinori Sunahara』キューン(2009)
8年ぶりのオリジナル作品は、映画「ノーボーイズ、ノークライ」のサントラ。映像と結び付くことで完成するような、アブストラクトな楽曲が多くを占めるなか、“Sunset Blue”のエレガントなハーモニーや“Transport”のミニマムな構築美などに、彼の作品を貫く強烈な個性が見て取れる。また、生楽器系のシンセ・サウンドを主軸にしたハイファイな音像が何とも新鮮だ。iLLが歌うダンサブルな映画主題歌も収録。(澤田大輔/bounce 2009年08月号掲載)
ゆらゆら帝国『REMIX 2005-2008』ソニー(2008)
ハーヴィーや瀧見憲司といった異端DJたちから思わぬ(?)賞賛を浴びた、ゆら帝のセルフ・リミックス群。それらのコンパイルでは飽き足らず、ほぼ同量の未発表リミックス曲まで投入した2枚組が登場した。クラウト・ロックから出発し、カルトなディスコの重力場をくぐり抜け、かろうじてダンスフロアに到達……といった具合のフリーク・アウトしまくったトラックが大集合。以前コンピに収録されたスーサイドのカヴァーも! (澤田 大輔/bounce 2008年07月号掲載)