
今月のスナップ:メガネは上野氏御用達の露店にて取材直前に購入!
ブロンクス「でも、ZZ PRODUCTIONも本当にいいクルーだよね。SDPとスタイルは全然違うけど、どこか似てる部分があると思う。ホントに仲が良いし。ムカつくことがあったら、絶対にその場で言うでしょ?」
上野「そうっすねえ。CRIME 6(STERUSS)と俺が泣きながら殴り合ったり(笑)。絶対揉めるんすけど、そうやって遺恨を後に残さない」
ブロンクス「ヒップホップ集団って、みんな自分勝手でお互いに不満を溜め込んじゃって、結局仲悪くなって空中分解とかよくあるからね。あと、SDPとZZに共通するのは、ラップとかやってないギャグ担当みたいなメンバーが普通にクルー内にいることだよね、ギャガーが」
上野「関係ないヤツがいるっていう(笑)。そこはクルーとして重要っすよ。ラッパーとかDJだけだったら堅苦しい。〈なんであいついるの?〉って訊かれて〈いや別に。なんでそんなこと訊くの?〉みたいな」
ブロンクス「どれだけバカな奴を抱えてるかっていうのがクルーの器だと思うよ(笑)。ZZはみっちゃんがいるから信用できるところは相当あるからね。で、そういうやつが、みんなのテンションを左右するし、大事だよ」
上野「この間の〈フジロック〉でも、STONE DA(DEEP SAWER)がDJ BAKUさんにテキーラをおごってもらった瞬間にゲロを吐きまくって(笑)。BAKUさんも〈彼、ハンパないねえ!〉って。〈あれでラップは結構上手いんで、使ってやってください〉って言っておいた」

問題のスクーター。向かって左が上野氏、右がNORIKIYO氏所有のもの
ブロンクス「知り合いでもないのに耳元でいきなりフリースタイル仕掛けるよりも、そうやって生き様を見せたほうが速攻で仲良くなれるよね」
上野「ホントそうですよ。イヴェントの〈SAG DOWN〉とか出るようになった時、俺とキー君は原チャリで行ってたんすけど、キー君ってナンバーを段ボールで作ってましたよね(笑)」
ブロンクス「俺、その写真持ってるよ。W上野の原チャリはマジでジャンクでとにかく酷かった(笑)」
上野「俺の原チャリは、ドリームハイツに停めてたら、吉野のオヤジのクルマが突っ込んでボロボロになっちゃんたんすよ。で、ナンバーとか針金で無理矢理括りつけて(笑)」
ブロンクス「……まあ、こうやって話してきたけど、俺らだって24時間バカなことやってるわけじゃないし、1人の時はシリアスにもなる。『EXIT』はそういう部分がよく表れたアルバムだよね」
上野「確かに。でも、今度出たSD JUNKSTAの『GO ACROSS THA GAMI RIVER』はキー君をはじめ普段のSDPのノリがそのまま出たアルバムっすよね」
ブロンクス「そうそう。逆に、シリアスなことばっか考えてるわけでもないっていう」
上野「だから、さっきの話じゃないけど、クルーを作るならギャガーを入れろってことですね(笑)。最近よく話すんですけど、地元のドリームハイツの連中でも、結構ヒップホップをやめていってるんですよ。同い年のやつらにしても、後輩にしても。でも続けてたら、SD JUNKSTAみたいなクルーになれたかもなって。もちろんそれは運命だからしようがないんだけど」
ブロンクス「やめちゃ駄目なんだよ。俺なんてラップもグラフィティーもしょっちゅうサボってるから一向に上手くならないけど、絶対やめたなんて言わないもん。みんな恰好付けたいからさ、サボってるのが気まずくてすぐ〈やめるわ〉って言っちゃうんだろうね」
上野「いや、ホントそうですよ」
ブロンクス「B-BOYなら絶対に家族とか仕事の事情で活動できなくなる時期ってのが来ると思うんだよね。でも、周りの目を気にしてやめるって言っちゃうのはバカだよ。〈SLAM DUNK〉の安西先生じゃないけど、諦めた時点で終わっちゃうからね」
上野「俺らだって、ライヴがない時期なんて死ぬほどありましたからね。でも、やめるとは言わなかったから、いまだにやって来れてるってのは絶対ある。ライヴがなくてもやり続けるのが重要ですよ。別にサボってて普通ですからね。最近、この歳になってまた、みんなで共同生活するようになってきたんですよ。で、関係ないやつもいっしょにいて、とりあえずそいつらが〈今日はレコーディングでしょ〉とか言って、ビールをケースで買ってきたり。それだけでいいんすよ」
ブロンクス「中途半端にラップやってるやつは妙なプライドがあって、カッコ良くできなさそうだとフリースタイルに入って来なかったりするじゃん。でも、そうやって普段から周りにいるやつって余計なプライドがないから、ラッパーでもないのにスルッとフリースタイルに入って来るしね」
上野「そうそう。〈楽しそうだから、俺もやっていい?〉って」
ブロンクス「それこそがヒップホップだよね。そうじゃないと一生やっていけない。成功しなかっただけで解散するんなら、やっていける確率は宝くじみたいなもんだよ」
上野「そんなこと考えてるんじゃねえよっていう。若い子ほど、そういうことを深刻に考えがちですよね」
ブロンクス「別にレコーディング・アーティストになんなくてもいいんだから。バンドをやってる人たちは金にならなくても長いスパンで音楽とつきあう方法を知ってるよね。そういう意味でもとにかくいろんな音楽を聴かないと駄目」
上野「で、やったらやめるって言うな、と。別に苦痛でもなんでもないっすからね。楽しくワイワイやってるんだから。しかし、最初ミスター・キキの話になっちゃったときはどうなることかと思ったけど、ちゃんと繋がりましたね。キキもやり続けてきたから、こうやって連載で紹介されて(笑)」
ブロンクス「だから、キキから学ぶことはあるよね。始める時は気張るなってのと、変に気取ってやめるなと」
上野「そうっすね。ZZだってみんな金なくて汚い格好してるけど、でも毎日仲間といるだけで楽しいZE!っていう。悪口とか思いつく暇なんてないすから。MIC大将に会いたくなって電話しちゃったり(笑)」
ブロンクス「結局『EXIT』の話はあんまりできなかったけど(笑)、でも最後は良い話に落ち着いて良かったよ(笑)」
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