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第183回 ─ ロック・フェスの先駆け、〈ウッドストック〉が40年前に残した伝説とは?

連載
360°
公開
2009/08/05   18:00
ソース
『bounce』 312号(2009/7/25)
テキスト
文/北爪 啓之


  69年8月、USはNY郊外で3日間に渡って開催された〈ウッドストック・フェスティヴァル〉。30組以上のアーティストが出演し、40万人を超えるオーディエンスが集った史上空前ともいうべきこの超大型野外イヴェントは、音楽の祭典であると同時にいわゆる〈ヒッピー〉〈ラヴ&ピース〉〈フリーダム〉〈カウンター・カルチャー〉〈ステューデント・パワー〉などのキーワードに象徴される、当時の若者文化を集大成した一時代の巨大なモニュメントでもあった。とにかく有史以来これほど大規模な〈若者の若者による若者のためのイヴェント〉は初めての出来事だったわけで、歴史の教科書に記載されても不思議はないほど画期的なフェスであったことは間違いないだろう。

 もっとも、〈愛と平和〉を謳いつつも、入場者が予想を遥かに超えたこと(当初は1~2万人程度の見込みだったという)による水や食料の不足に始まり、近隣住民への騒音、イヴェント終了後のゴミ処理問題、会場内で起こったレイプ事件といったマイナス要素を孕んでいたことも決して忘れてはならない。そして、フェスの翌年に公開されたドキュメンタリー映画「ウッドストック 愛と平和と音楽の3日間」の成功はロック・ビジネスの巨大化に拍車を掛け、その結果、ロックの持つカウンター・カルチャーとしての側面は次第に薄れていくことになったのである。

 さて、このたび開催から40周年を記念して前述の映画「ウッドストック 愛と平和と音楽の3日間」に約320分にも及ぶ未公開映像を大量追加し、全編リマスターを施した4枚組の豪華DVDボックス(Blu-rayボックスは2枚組)がリリースされる。そのうち170分を占めるライヴ・シーンにはグレイトフル・デッドやマウンテン、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルなどオリジナル本編に登場しなかったアーティストの熱演が盛りだくさんなうえ、サンタナやジミ・ヘンドリックスなどフェスの花形ともいうべき連中の映像も追加されていて圧巻の一言。そして、多くの記録映像や関係者のインタヴューから、伝説と幻想の靄に包まれていた〈ウッドストック〉のまた新たな〈真実〉がにわかに浮かび上がってくるのも確かだ。40年を経たいま、〈あの祭りはいったい何であったのか〉を改めて考えてみるための最高の資料といえよう。

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