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第179回 ─ UGKのラスト・インタヴュー……でも、テキサスは死なない!

第179回 ─ UGKのラスト・インタヴュー……でも、テキサスは死なない!(2)

連載
360°
公開
2009/06/10   18:00
ソース
『bounce』 310号(2009/5/25)
テキスト
文/升本 徹

  「新作用のレコーディングはすでにピンプと始めてたんだ。素材も十分あったし、アルバムとして形にするだけのテーマや構成もある程度きちんと出来上がってた。ただ単にアルバムを出せるだけの曲数があった、っていうんじゃなくて、ちゃんとまともな完成度に仕上げられるだけのものがあったんだ。ファンにも聴いてもらいたかったし、グループ最後の作品として納得できるものになるなって思ったんだ」。

 その言葉はハッタリではない。先行カットとなった“Da Game Been Good To Me”はUGKらしいブルージーな作りで多くのファンを狂喜させたが、本作には他にも聴きどころが詰まっている。ハードなファンク・ビートをバックにラスト・アルバムとは思えぬ健在ぶり(?)を誇示する“Still On The Grind”や、アイズレー・ブラザーズ“Here We Go Again”をサンプルし、そのフレーズをロナルド・アイズレー自身が歌い上げた贅沢な“The Pimp & The Bun”、レイドバックしたトラックにピンプ節が炸裂する“She Luv It”、E-40ら馴染み深いメンツが顔を揃えた“Use To Be”などなど……そのなかでもバンがスペシャルなコラボとして挙げたのは、スリーピー・ブラウンが参加したスモーク・チューン“Swishas & Erb”だ。この曲ではスリーピーが在籍したソサエティ・オブ・ソウルの“Peaches N Erb”をリメイクしている。

 「ピンプはよく言ってたんだ、〈良い曲ってのは92年にリリースされたものだろうと2000年だろうといつだろうと、良い曲であることに変わらない〉ってね。あの曲は聴いた瞬間に気に入って、前から(プロデュースした)オーガナイズド・ノイズに〈あれが俺らのいちばん気に入ってる曲だから、いつかあの曲で誰かにラップさせたいと思ったらいつでも声をかけてくれよ〉って言ってたんだ」。

 『UGK 4 Life』と冠された本作は、先にバンが述べたようにUGK最後のオリジナル作になるようだが、だからといって特別な何かがあるわけでもないし、ウェットなムードなども漂わせちゃいない。エイコンが参加した“Hard As Hell”という飛び道具こそあるものの、それ以外は従来とまったく変わらぬ、UGKが築き上げたとも言えるオーセンティックなテキサス・ヒップホップ、ソウルフルなサウンドをベースとしたラフでロウな2人のラップを聴かせてくれているのだ。

 「今作は確実にコアなファンのことを考えて作られている。最近ファンになってくれた人たちのことも忘れちゃいないけど、俺らをデビュー当時から追っかけてきてくれたファンなら確実に楽しんでもらえるアルバムだね。長くファンをやってきた人ほど、より味わい深く聴けるものになっているんだ」。

 もうこのコンビでオリジナル・アルバムがリリースされることは二度とない、というのは非常に残念なことではあるが、最後までUGKというグループのスタイルを頑なに貫き通し、ピンプ不在ながら、このようなベストの形での最終章を発表してくれたんだから、われわれファンもそれを祝すのがスジだろう。『UGK 4 Life』という表題に偽りはまったくない。            

▼『UGK 4 Life』に参加したアーティストの作品を一部紹介。