NEWS & COLUMN ニュース/記事

第490回 ─ FAERIE TALE THEATER

連載
NEW OPUSコラム
公開
2009/05/14   16:00
更新
2009/05/14   17:51
ソース
『bounce』 309号(2009/4/25)
テキスト
文/村尾 泰郎

ミックやキャロキン、ザッパが誘うちょっと不思議な童話の世界!?


  昔々あるところに、変わった女優がおりました。彼女は役者や音楽家を集めて童話のTVドラマ化に挑戦。その奇妙な物語は子供にも大人にも喜ばれたのでした。おしまい――。

 というわけで、ここからは普通の文体で。その〈変わった女優〉とは映画「シャイニング」などで知られるジュリー・デュヴァル。彼女が製作総指揮を務めた〈フェアリーテール・シアター〉は82年から87年までの間に全米でTV放映され、フランシス・コッポラや無名時代のティム・バートンが監督として参加したことでも知られる伝説のシリーズだ。そして今回、ミュージシャンが出演した作品を中心にDVD化されたのである。

 まず〈ミック・ジャガーのナイチンゲール〉は、ミック・ジャガーがドジョウ髭を付けて中国の皇帝に変身。美しい鳴き声を持つナイチンゲールを通じて、人間にとって大切なものが何かを知る。小鳥の声に耳を傾けてウットリする中国皇帝……なんて、デヴィッド・ボウイが嫉妬しかねないエキゾティックな設定だが、加えてヴァン・ダイク・パークスがサントラを手掛けているあたりもモンド心がそそられる。また〈キャロル・キングの3匹の熊〉では、テイタム・オニール演じるヒロインのお母さん役でキャロル・キングが登場。森を舞台にしたアーリー・アメリカンなストーリーが彼女のイメージに合っている。そして、〈フランク・ザッパとクリストファー・リーのこわがることをおぼえようと旅に出た男〉には不気味なせむし男の役でフランク・ザッパが出演。名優クリストファー・リー演じる城主に小突かれながら、唸ったり目を回したりと、かなり役に入り込んでいるようだ。

 とにかく、3人それぞれにリラックスして演技を楽しんでいて、ちょっとした学芸会気分。ぜひ現代の若手ミュージシャンでリメイクしてほしいユニークなシリーズだ。
▼5月2日にリリースされる〈フェアリーテール・シアター〉シリーズのDVDを紹介。