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第489回 ─ SCOTT HERREN

連載
NEW OPUSコラム
公開
2009/05/07   16:00
更新
2009/05/07   17:44
ソース
『bounce』 309号(2009/4/25)
テキスト
文/北野 創

同時期に4作品って、どれだけ働き者なのよ!?

 数々の名義を使い分けながら活動の幅を広げてきた才人、ギレルモ・スコット・ヘレン。本命ユニットとなるプレフューズ73で新作『Everything She Touched Turned Ampexian』を発表したばかりの彼が、間髪入れずになんと3つのプロジェクトでそれぞれ1枚づつアルバムを完成させた。

 まずは、同じくプレフューズ73名義で発表する日本企画盤『Meditation Upon Meditations』。スキットを含む全29曲を職人的なエディット技でザクザクと繋ぎ合わせた、J・ディラ『Donuts』へのオマージュ的な逸品だった先の〈Everything〉に対し、〈Meditation〉では得意のカットアップ・ファンク中心のトラックを詰め込み、〈プレフューズらしさ〉を前面に押し出している。続いて、いつの間にかフォークトロニカ・ユニットへと変貌していたサヴァス&サヴァラスの『La Llama』。こちらは、エプスタイン名義で活躍するロベルト・カルロス・ランジが正式メンバーとして加入し、ミナス産の作品にも通じる浮遊感溢れたサウンドが渦巻いていて、非常にメランコリックな仕上がりに。そしてラストは、ヘラの超絶ドラマーであるザック・ヒルとの双頭ユニット=ダイヤモンド・ウォッチ・リスツのお披露目盤『Ice Capped At Both Ends』。フリーキーなドラミングや幻想的にたゆたうコーラス、ドローンなどが、時に奔放に、時に精緻に絡み合った、激アシッドなポスト・ロック作品で……ってスペースが足りない!

 近年はフライング・ロータスら後進の台頭も目覚ましいなか、今回の新作ラッシュを通じてまだしばらくはスコット・ヘレンがシーンを先導することになるだろうと確信させられた。