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第174回 ─ 新緑の季節にぴったりの、心躍る新作と共に過ごす1日をシミュレーション!

連載
360°
公開
2009/04/30   16:00
更新
2009/05/20   15:42
ソース
『bounce』 309号(2009/4/25)
テキスト
文/北爪啓之

 出会いと別れが入り交じった桜の時期も過ぎ、まばゆいばかりの新緑に風景が包まれている今日この頃。1年でもっとも心地良い季節です。かつて〈書を捨てよ、町へ出よう〉と言った人もいますが、こんな季節には〈音楽を聴きながら街へ出よう〉を合言葉にしたいもの。さあ、さっそく陽光煌めく朝の街へと出掛けてみましょう。例えば、UKネオアコの鮮烈な音楽性に日本語ならではの文学的香気を融合させて、青年期特有の繊細な心情を軽やかに描き出したghq『Grahambread quicklunch』は、爽やかな朝の空気が少し物憂い昼へと変化していく時間の散歩に最適です。

 また、クイック・ランチを終えた後に訪れた穏やかな昼下がりのカフェ。ここでは大貫妙子を彷彿とさせるリリカルな詞世界を、矢野顕子ばりの美しいピアノの旋律で紡いでいく寺尾紗穂『愛の秘密』を聴きながら、そよ風吹く窓の外を行き交う人々のささやかな秘密をアレコレ想像するのも一興でしょう。

さらに、古き良きアメリカン・ルーツ・ロックの粋を現代に蘇らせた男女デュオ、ハミングキッチンの初作『Strange Tomatoes』は午後の街歩きをより豊かに彩ってくれます。イシイモモコの伸びやかな歌唱と眞中ひろの技巧的ながら柔和なアコギの音は、時に軽快な、時にレイジーな起伏を描いていて飽きさせません。曲に乗せて緑溢れる路地裏や坂を巡っているうちに、気付けば景色は黄昏に包まれているはずです。

 そして夜の帳が下りた頃、灯が揺れるロマンティックな夜景をバックに聴きたいのは、ROUND TABLE単体名義としては4年ぶりの新作『FRIDAY, I'M IN LOVE』。オルガンやエレピの効果的な導入によって煌びやかなソウル/AOR色を増したサウンドは、春から初夏へと向かう時期の夜に特有の昂揚感を、さらに洒脱に演出してくれるはず。

 新緑の季節は、音楽を聴きながら街へ出ましょう。

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