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第171回 ─ Saori@destinyのチューンナップする運命

連載
360°
公開
2009/04/02   16:00
ソース
『bounce』 308号(2009/3/25)
テキスト
文/出嶌 孝次


  世相のことはよくわからないけど、カオスはやはり続いているみたい。もちろんSaori@destinyの話です。昨秋のホントに素晴らしいアルバム『JAPANESE CHAOS』から半年も経たずにミニ・アルバムが登場というハイペースぶりも嬉しいのですが、しかもタイトルが『WOW WAR TECHNO』って……! 首謀者(?)はもちろんプロデューサーのTerukadoということなんでしょうが。

「タイトルはけっこう前から先に決まっていて、Terukadoさんは〈TECHNOって言葉もこれで最後かな~、だったら極めつけいってみよう〉みたいなことを仰ってました。この発想力にいつもビックリしています(笑)」。

 ちなみに例の“WOW WAR TONIGHT”は小さな頃に聴き覚えがあったそう。ともかく、キャッチーな〈違和感〉や〈引っ掛かり〉を挿入してくるTerukadoならではの振り切れた作風は表題曲から全開です。ジュリアナ的なデス・テクノっぽい声ネタの挿入が、往年のハイエナジーを思わせるサウンドの雰囲気を享楽的に演出していて、これは問答無用にフレッシュ! 90年代を代表するtrf(現TRF)のヒット曲“EZ DO DANCE”のカヴァーも違和感ゼロですね。そんなヴィヴィッドなサウンドと好対照なのが、前作で顕著だった〈ネガティヴなポジティヴさ〉をうっすら漂わせる彼女自身の詞世界。ふとした喪失感をキュートな歌声に纏いながら、人が言わないことをストレートに言葉にしてる気もします。

「作詞する時は、できるだけあやふやに濁すことはやめよう、リアルでいようと思っていますね。ふだんあまり表に出せない感情を綴っていけるので、Saoriの本音をわかってもらえる場所だと思います。今回は前作以上に歌詞で〈Saori@destiny〉を表現できたと思うので、曲に対しての思い入れも強くなって、完成した時の感動も倍になりました」。

 じゃあ、わたしの感動は4倍です。今回は彼女自身もお気に入りだという美しいバラード“弱虫ハート”があったり、前作で抜擢されたヒゲドライバーに続く外部クリエイターとのコラボとして、月刊プロボーラーの参加もあります。しかし、またもこんな充実作になろうとは。

「制作をスタートした頃から〈3歩前進しよう〉っていうTerukadoさんの言葉がいつもあって、それは色濃く出ましたね。ジャケもスーパーカーが映ってるし(笑)」。

 そう、ジャケも重要。「〈ヴィジュアルが凄いね〉って半ば引く友人も数名(笑)」だったという『JAPANESE CHAOS』に続いて今回のアートワークも相当な破壊力です。これは「みんながやってる80'sじゃない80'sを切り取ろうというのがテーマでした」ということですが、今度はお友達がOKか気になります。

 今後はクラブでのライヴ・パフォーマンスもたくさん決定していて、「作品は3歩踏み込めたので、ライヴも以前より3歩踏み出せるものにアップデートしていきたいです」とのこと。みんなでWOW WARしようぜ!

▼関連盤を紹介。


Saori@destinyの2008年作『JAPANESE CHAOS』(D-topia)、trfの93年作『EZ DO DANCE』(avex trax)

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