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第39回 ─ えろすの効能

連載
踏 切 次 第
公開
2009/03/26   17:00
更新
2009/03/26   18:17
ソース
『bounce』 308号(2009/3/25)
テキスト
文/次松 大助

次松大助が見つめる、とある町の日常──


  ソフマップ店頭において、「小生、家族にバレぬよう自室にて一人、えろDVDを心ゆくまで鑑賞したくっ、このたびノートPCを買いに来ましたっ!!」と小声で叫ぶと店員がすかさず「承知っ」と案内してくれました。シュタッ……という効果音と共にPC売場に着くと、ことパソコンの扱い、知識に秀ですぎた人特有の悪意のない含み笑いを携えて、「この機種の凄いところは2機のドライヴが映像の重さを判断して自分でどう動くべきか選んでくれるんです。あとパフォーマンス優先か省エネ優先かも選べます……(含笑)」。

 機種と言ったかドライヴと言ったか、なんだったか忘れましたが、ともかく難しい専門用語はなるべく使わず懇切丁寧に説明してくれたので、大変にわかりやすかったです。「じゃあコレくださいっ」というと、ヴン……という効果音と共にレジ・カウンターに到着し、渡された分割払いに必要な書類を埋める作業へ。住所、氏名、年齢、生年月日を記入し、職業欄の〈フリーの動物評論家〉に◯を付け、支払い回数を70万回に設定。2ギガを4ギガにするという作業があるので後日の配送になるとのことなので、「しからば本日はこれにて御免っ!」と告げ、ガタンゴトン……という効果音と共に帰宅しました。翌々日、猫が子猫をくわえて家を訪れたので煮干しをあげ、サインをし、PCを受け取り、明朝6時頃までかかっていろいろなものをインストールしました。

 しかしPCに強い人は、どういった経緯でPCに強くなるのでしょう。僕は機械類全般において、向き合えば向き合うほど悪意に満ちた外国人と議論しているような気持ちになり、懸命に説明書を読んでみてもその都度〈そんなムツカシイこと訊いてんちゃうねん、どアホ!〉とつい憤慨してしまい、保育園から繰り返される〈アホって言うもんがアホじゃ〉という格言の小舟に乗って太平洋へ放り出される駄人(だじん)なので、甚だ不思議です。そこでPCに対して恐れのない人たち(主に男性)の特性をデータ化し、届いたばかりのPCで解析していくと、ある傾向が浮かび上がってきました──〈えろす〉です。六角グラフの中の〈内向的えろす〉の項目が、テントを張ったように膨らんでいます(失礼)。確かにそういう人にえろす質問をすると、水を得た鮫のような速度でキーボードを叩き、さまざまなものを見せてくれます。なるほど、(そればかりではあるまいが)そういう目的のために熱心に勉強したのか。どすけべめ。

 では小学校高学年や中学校での教育にも褒美的えろすを導入してはどうか。それこそ橋下知事による大阪教育改革に一役買うのでは。〈男子生徒の異常な学力向上と一部の品性の欠落〉、ニュースとしてはおもしろそうですが。

今月のBGM


THE CARPENTERS
『Twenty-Two Hits Of The Carpenters』
 
A&M/ユニバーサル
PCはアルバムの録音作業のために買いました。この連載はたまに家族も読むのです。カーペンターズ大好きです。解説者の名前が〈小倉ゆう子〉だということもこのCDの特筆すべき点です。

PROFILE

次松大助
99年に大阪で結成されたスカ・バンド、The Miceteethのヴォーカリスト。バンドのアルバム『07』、ソロ・プロジェクト=箱のファースト・アルバム『long conte』が好評リリース中。現在は曲作りや練習に没頭する日々。その他の最新情報は〈www.miceteeth.net〉にて。