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第160回 ─ アッコちゃん、T・ボーン・バーネットとのお仕事はどうでしたか~?

ところで、T・ボーン・バーネットって何がスゴイの?

連載
360°
公開
2008/11/13   07:00
更新
2008/11/13   18:21
ソース
『bounce』 304号(2008/10/25)
テキスト
文/桑原 シロー

 ルーツ・ミュージックへの深い造詣と、ねじれたポップセンスが共存する独特の米国音楽を創造する男――T・ボーン・バーネットの特徴を書くとこうなる。近年はプロデューサーとしての顔が定着した彼だが、仕事ぶりは年々実験精神旺盛になっているような印象だ。大物として安住せず、絶えず味わい深く、新鮮なサウンドの追求を行う姿勢に、多くの音楽家からのラヴコールは絶えない。そんなT・ボーンの経歴をざっとおさらいしよう。70年代初頭から音楽活動を開始した彼は、ボブ・ディランが75年に行った伝説的なツアー〈ローリング・サンダー・レヴュー〉のメンバーに抜擢されて注目を集め、自身のグループ=アルファ・バンドで数年活動したのちにソロへ転向。一筋縄ではいかないユニークなロック/ポップス作品を次々と発表する。特に87年『The Talking Animals』は、ビートルズ風サイケやデカダンなタンゴ、ニューウェイヴ的ポップスなどがゴチャ混ぜになった、T・ボーン趣味満開の傑作。そして80年代以降はプロデュース業が盛んになり、その評価を決定付けたのはエルヴィス・コステロの『King Of America』を手掛けたことだろう。

 ここでは、これまで常にフレッシュなサウンドを提供してきた彼の、数多あるプロデュース・ワークからその一部を紹介しよう。
▼関連盤を紹介。

ROY ORBISON 『Mystery Girl』 Virgin(1989)
映画「ブルーベルベット」で使われた彼の曲“In Dreams”で脚光を浴び、見事復活したロックンロール・スター。そのバックにはT・ボーンの存在があった。この遺作ではU2のボノらと共に愛情深くバックアップ。レトロな味を演出してロイの黄金期のサウンドを蘇らせた。

THE WALLFLOWERS 『Bringing Down The Horse』 Interscope(1996)
90年代を代表するフォーク・ロック・バンドの、大ヒットした2作目。60's的なデザインを施しながら、オルタナの手触りも持たせたサウンドは老若男女に支持され、グラミー賞も獲得。T・ボーンの優れたバランス感覚が発揮された一枚。

CASSANDRA WILSON 『Thunderbird』 Blue Note(2006)
自己の世界を広げようと邁進し続けるカサンドラとT・ボーンの実験精神が合致した傑作。どこか奇妙にねじれたブルースやリズム&ブルースなどを用意し、彼女のさまざまな表情を引き出す技が見事。セクシーな側面にスポットを当てた演出力もあっぱれ。

ROBERT PLANT/ALISON KRAUSS 『Raising Sand』 Decca(2007)
USルーツ・ミュージックへの探究心が旺盛な御大と現代ブルーグラスの歌姫によるコラボ作をバックアップ。ブルースもカントリーもツェッペリンも呑み込んだ、とんでもなくスケールのデカイ世界を難なくまとめ上げた彼の手腕が光りまくる。

JOHN MELLENCAMP 『Life, Death, Love And Freedom』 Hear Music/ユニバーサル(2008)
ドスの効いた迫力ある歌が満載なヴェテランの新作。ここでのT・ボーンは主役に重厚で渋味たっぷりのフォーキー・サウンドを着せ、これまでにないほどの凄みを引き出している。ボブ・ディランの近作へのシンパシーも。