
今月のスナップ:自身がディレクションしたという〈RESORT LOVER〉Tシャツを着こなす上野氏
ブロンクス じゃあ駆け足で『homebrewer's vol.2』に行こうか。これにはSD JUNKSTAも上ちょも参加してるけど、この“女喰ってブギ”は書き下ろし曲?
上野 ライヴの曲としてはあったんですよ。でもトラックはなかったので、新しく作ったんです。
ブロンクス 俺らSDPと上ちょがつるみ始めたのもこの前後だよね。だから、これを聴いてみんな「(上野氏が)こんなラップするんだ、ウケんな~」って言ってた。本当に〈vol.2〉が出る頃にはみんな知り合いになっていた。
上野 SD JUNKSTA、RAGING RACING、Romancrew、STERUSS……みんな知り合いですもんねえ。
ブロンクス まぁキー君(NORIKIYO)は出張中で、収録された“コノハナシ”にはスリック・リック・スタイルでの参加だったけど(笑)。九州のRAMB CAMPもいるし東京のNIGHT CAMP CLICKも入ってる。
上野 NIGHT CAMP CLICKはすごいですよね。DEMIさん(NIPPS)もいるだけあって、制御不可能というか。
ブロンクス 凄い東京っぽい人たちだよね。気怠そうでやる気あるのかないのかわからないんだけど、スニーカーとスキルはちゃんと磨いてるというか。
上野 このコンピが出たことで、俺もいろんなところから呼ばれるようになったし、何よりも、これでCDを作る気になれたのが一番デカかった。
ブロンクス 〈vol.1〉と〈vol.2〉で『悪名』と『続・悪名』って感じだよね。
上野 俺らの世代の『悪名』がこれですね。
ブロンクス そしていま、コンピ『CONCRETE GREEN』シリーズが新たな才能を夜に紹介してるという。そう考えると何年かおきに重要なコンピっていうのが出てるんだね。今度SDPが主催する諭吉レコードからも『YUKICHI DE PYLAMID』っていう新しいコンピの定期的なリリースが始まるから、それもチェックして欲しいな。
上野 コンピが出ると繋がりが見えますからね。アーティストの見本市みたいなもんだし。
ブロンクス しかし、いまじゃ考えられないけど磯部君って当時はシーンの高田文夫みたいな存在だったよね。
上野 影響力もすげえあったし、磯部君信者もいましたからねえ(笑)。
ブロンクス あのとっ散らかして消えてった感はあの人ならではだよね。古川さんはきれいにフェイド・アウトしていったけど。まあ、今は「BLAST」的な専門誌もないし評論家はシーンには必要ないってことなのかもね。
上野 ファッション誌の誌面とかでディスられても困りますからね(笑)。
ブロンクス このコンピは出た時はアンダーグラウンドだったけど、いまのシーンの中心にいる才能を発掘したって意味で、実は「BLAST」が残した最大の遺産なんじゃないかな。最近はネット上で批判的なレビューを書いて自分の嫌いなアーティストを邪魔しようとするやつも多いけど、そんな暇あったら、コンピ作ったりイヴェント企画しろよっていう。
上野 そうかもしれない。いまのネットのレビューはただの書き逃げですもんねえ。
ブロンクス 俺らがヘッズだった頃は普通にUSのシーンの動向も気にしてたけど、このコンピが出た頃から日本語ラップのみのマニアっていうのが増えたじゃん。
上野 ヘッズじゃなくてマニアっていう。学校に友達はあんまりいないけど、CDはたくさん持ってるみたいなね。
ブロンクス そうそう。昔はB-BOYはそれなりにオシャレで格好良いってイメージがあったけど、ネットを中心にひねくれた日本語ラップオタクが増え始めてからB-BOYのステイタスがちょっと下がった気がする。
上野 そういえば、磯部君は日本語ラップの本を書くとかで、いま俺らの大切な資料を貸し出し中ですからね。
ブロンクス そうだ。俺と上ちょの15年モノのスクラップ・ブック。しかもこの連載取材の時に貸したんだよね。
上野 だから「そろそろ返してください」って、この連載から訴えよう(笑)。磯部く~ん!!
ブロンクス 資料返却して下さ~い! こんな終わり方じゃ俺らが一番日本語ラップ・オタクみたいじゃん(笑)。
▼サイプレス上野の関連作品を紹介