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第426回 ─ John Legend

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/11/06   01:00
更新
2008/11/06   19:22
ソース
『bounce』 304号(2008/10/25)
テキスト
文/出嶌 孝次

自由奔放に〈進化〉を繰り広げたポップなニュー・アルバム


  グラミーの2部門を受賞した前作『Once Again』でその地位を盤石にしたジョン・レジェンド。今年に入ってからはすでにライヴ盤『Live From Philadelphia』を発表しているし、自身のレーベルからエステルをデビューさせたり、T.I.やリサ・マフィアと共演するなど、その活躍ぶりには相変わらず目を見張るばかりだ。が、アンドレ3000と組んだ先行シングル、ポップな高速スウィング・ナンバーの“Green Light”を聴いた時には戸惑った人も多かったのではないか。アウトキャスト的な賑々しさにAOR的なメロディーセンス……? 果たしてニュー・アルバム『Evolution』は楽曲ごとに色合いの異なる振り幅の広い作品となっている。豊富なアイデアを制限なく形にしたという言い方もできるが、曲作りに占める自作の度合いが減ったことを思うと、今回は歌い手としての幅を追求したのかもしれない。カントリー調の“Everybody Knows”や、叙情系ロック・バンドがやるバラードみたいな“This Time”など、まるでブルーアイド・ソウル作品を聴いているような感覚に陥る瞬間も多いが、大らかな歌い回しは現在の彼によく似合う。もちろん、リル・ウェイン&T・ペイン化が甚だしいカニエの暴れっぷりにアガる“It's Over”やエステルとのレゲエなどもしっくり並ぶわけで、奔放に作っても〈問題作〉とはいかず、結局は普通にポップなまとまりを作り出せるあたりがジョンのセンスなのだろう。