突然の活動休止宣言から丸2年。10月21日にリリースされたタワーレコード限定販売の特別編集盤『ONExMORExSUMMERxSHIT!!!』と、同日に開催されたレコ発ライヴをもって、NATSUMENがとうとう復活した。活動再開の報が大きな話題を呼んだという事実からは、この日を待ち望んでいたファンがいかに多かったかが窺えるが、同時に今回のニュースで初めて彼らの存在を知ったリスナーも多い様子。そんなわけで、まずはこの異形のバンドの軌跡を振り返ってみることにしよう。

2002年、元BOATの首謀者であり、現在はプロデューサー/ギタリストとしても活躍する奇才=AxSxE(ギター)とアイン(ギター)、BEAT CRUSADERSのマシータ(ドラムス)を中心に結成されたNATSUMEN。そこへ山本昌史(ベース)、蔦谷好位置(キーボード)、カッキー(トランペット)、加藤雄一郎(アルト・サックス)、INADA(テナー・サックス)が加わって本格始動し、フリージャズ、プログレ、ハードコア、ヘヴィー・メタル、ハード・ロックなどをランダムに放り込んで攪拌したかのようなエキセントリックなインストゥルメンタルを大展開。カオティックなライヴ・パフォーマンスでオーディエンスを圧倒、中毒者層を拡大する。そんななか、2005年1月には限定編集盤『KILL yOUR WINTER!!!』を、3月にはファースト・アルバム『Endless Summer Record』を発表し、8月の〈SUMMER SONIC〉〈RISING SUN ROCK FESTIVAL 2005 in EZO〉に出演。翌年1月にはセカンド・アルバム『NEVER WEAR OUT yOUR SUMMER xxx!!!』をリリースし、7月の〈FUJI ROCK FESTIVAL '06〉と8月の〈ROCK IN JAPAN FES. 2006〉へ立て続けに出演。フジロックにおける約4,000人を熱狂させたステージは、いまも語り草となっている。しかし、最強のライヴ・バンドとして君臨し続けると思われていた同年の10月21日に突然活動休止を宣言。以後、NATSUMENは完全にシーンから姿を消す。
そして2008年8月、今度は活動再開を突如として発表。以下に続くのは、その復活の日を臨場感たっぷりに感じ取ってもらえるであろう、新作レヴューとライヴ・レポートである。
特別限定編集盤『ONExMORExSUMMERxSHIT!!!』(TOPMEN/RESERVOTION)
奇才集団による約2年9か月ぶりの新作は、タワーレコード限定販売の特別編集盤。真夏の空気感を濃密に膨らませるフィールド・レコーディングから攻めっぷりも甚だしいインプロヴィゼーションまでを絶妙にエディットした本作は、湧き出る衝動とインスピレーションをそのまま音像化したかのような、あまりにも激烈で生々しいインストゥルメンタル集だ。タイトルそのままというか、獰猛なシャウトとファストコアの断片をカットアップした“One Shit”で幕を開けたかと思えば、怒涛の勢いで“No Reason up to the Death”へ突入。ピアノとブラス・セクションのユニゾンでダンディーにキメ、ファンクやらハード・ロックやらがグッチャグチャに入り乱れる混沌の淵を彷徨い、クライマックスでは楽器すべてが一体となって昂揚感漲るメロディー上を激走するという展開で、NATSUMEN節が全開! そして怪談風の(?)妖しい雰囲気が漂うインタールード“080110”を挟み、流れ込んでゆくのは軽快なツイン・ギターとパワフルな人力ブレイクビーツが流麗にテンポ・チェンジを繰り返す“Live in the Waterfall”。さらには蝉の鳴き声のなか、錆びたブランコが揺れているような金属質の音色が浮遊する“070917”を経てカオティック・ハードコア“The Shit”へと休む間もなく駆け抜け、高笑いと共にエンディング。混沌としたサウンドをクールに響かせない(いい意味での)アクの強さと、破綻スレスレで楽曲の体を成しているスリリングなバランス感覚が最高!な一枚だ。
1. One Shit
2. No Reason up to the Death
3. 080110
4. Live in the Waterfall
5. 070917
6. The Shit
▼NATSUMENの作品を紹介

2005年作『Endless Summer Record』