いろいろな表情を見せるノラ・ジョーンズに会いに行こう!

いまもパッケージの写真を見ているだけでキュンとしてくる。このノラ・ジョーンズの表情(女性の方々なら、〈このジュード・ロウ様の表情!〉とうっとりしていることでしょう)。ウォン・カーウァイ監督にとって初の英語作品となった映画「マイ・ブルーベリー・ナイツ」がDVDで登場した。あのノラ・ジョーンズが主演した作品として話題になったわけだが、とにもかくにもそのノラがたまらなくチャーミング。そもそも、走ってるノラ、怒鳴ってるノラ、泣きそうなノラ、眠ってるノラ、ましてやキスしてるノラなんて、いままで観ることがなかった……ばかりか想像すらあまりしたことがなかったのだが、そういういろんな彼女の表情が画面いっぱいに広がっているというだけで、なんだかフワ~、ポワ~ッとした気分になってくる。そんなノラの演技は、いわば〈演技をしないという演技〉であって、脇を固める役者陣がいずれも達者な名演技を見せているだけに、なおさら彼女の〈演技しない力〉が良い味わいなのだ。
誰かが〈これは気分を味わうための映画だ〉と書いていた。実際、物語として特別な大事件が起こるわけではない(小事件は起こるが……)。恋愛に関してもすご~くドラマティックなわけではない。が、その〈すぎない〉感じが程良い。独特の色彩を帯びた映像への、音楽の乗せ方がまた良い。音楽監修を行ったのはライ・クーダーで、自分探しの旅の景色にハマりすぎ。冒頭のノラの曲“The Story”も良いが、個人的にいちばんグッときたのがデヴィッド・ストラザーン演じる哀れな警官のエピソードで流れていた、オーティス・レディングの“Try A Little Tenderness”。哀愁トゥナイトな気分になるのです。