上野 そういえば、オジロって〈地元球団推し〉もめちゃくちゃ早かった。横浜ベイスターズのキャップをウェッサイ仕様で被って。
ブロンクス そういう部分でのオジロの影響は本当にでかいね。「これからはフッドだぜ!」みたいな(笑)。まあ、みんなが気付くのが遅かっただけなんだけどね。昔は「宇田川町でレコード買って、初めてB-BOY」とか、そういうノリだったから。
上野 東京中心だった。
ブロンクス みんな自分のフッドよりも、渋谷とか池袋とか、そういうところでライヴするほうがメインだったと思うんだよね。
上野 そうですね。「渋谷〈FAMILY〉でレギュラー持ってます。地元は横浜です」みたいな。
ブロンクス そういう時代から「地元にいるんだったらイヴェントも地元だろう」みたいな流れに変わった。当時の横浜はオジロだけじゃなくて、RUDEBOY FACEとか、CORN HEADとか、同年代でいけている人がすごいいっぱいいたよね。先輩たちも無視できない横浜の一大若手勢力というか。
上野 ROMERO SPとかもありましたよね。風林火山のF.U.T.OくんやMACCHOくんやRUDEBOY FACEが参加していたクルー。あの絶妙な関係。いやあ、すごかったっす。
ブロンクス 風林火山もSDPに絶大なる影響を及ぼしてるからね。風林火山のANY-TOさんのモノマネさせたら(SDPのメンバーは)みんなハンパないよ(笑)。あんま知られてないけどJAMBO-MANさんは日本で最初のグラフィティー・ライターの一人だし。
上野 そうっすよね。まあ、なにしろMACCHOくんは俺たちの街のヒーローですよ。“ROLLIN'045”なんて〈横浜市歌〉って感じですもん。普通のやつも知ってるし。
ブロンクス 『ROLLIN'045』はトータルで見て、本当に完成度の高いアルバムだったよね。
上野 (曲目を見ながら)いやあ……全部いいっすね。アートワークもかっこいいし。
ブロンクス でも俺らリスナーよりもアーティストの方が、早くからMACCHOくんのヤバさには気づいてたんじゃないかな。
上野 ZEEBRAさんとか超推してましたからね。
ブロンクス じゃないと、高校卒業したばっかのアーティストの音源に参加なんてしないよね。あと、“AREA AREA”のプロモ・クリップで頭でクルクル回ってるのが、当時FLOOR MASTERSだったSDPのブレイクダンサーのSHANくんなんだよね。それから、“Juice”のクリップの冒頭でグラフィティーを描いて警察から逃げてるのが、さっきも話に出てたKANEくん。SDPは普段、MACCHOくんたちとつるんでるわけじゃ全然ないけど、同じ神奈川だけあって、ちゃんと押さえてくれていて、お呼びがかかる。で、みんな「やったオジロだ!」って超喜んでる。
上野 いやあ、MACCHOくんは年齢的にはそんなに離れてないけど、本当に別格ですよね。
ブロンクス 東京の般若、名古屋のTOKONA-Xと一緒の存在だと考えてもらうのが一番わかりやすいかもしれない。
上野 高3のときにコンテストに出たんですけど、MACCHOくんがゲスト・ライヴだったんですよ。そのときはもう若頭筆頭みたいな存在でしたよ。で、その冬の〈鬼だまり〉*1でMACCHOくんが俺のことをちゃんと覚えていてくれたんですよね。「おお、元気?」とかってすげえ優しく接してくれて。
*1 雷家族が主催するイヴェント。
ブロンクス 〈045〉*2と〈184・045〉*3との関係はどうなの?
*2 OZROSAURUSと、その周辺の横浜シーンのスタイルやコミュニティーをこう称している。
*3 サイプレス上野とロベルト吉野を筆頭とするZZ PRODUCTION周辺のシーンが提唱するスタイル&コミュニティー。
上野 俺らの〈184・045〉は、先輩のMACCHOくんたちとは違うやり方をやらないとなあっていうところで付けてるんですよね。だからMACCHOくんたちは兄貴って感じだし、直接そう言ってますからね。
ブロンクス MACCHOくんとライヴで共演したことはあるの?
上野 この間、初めてあったんですよ。Lafayette(アパレル・ブランド)のパーティーで並びでやらせてくれて、マジで感動しました。俺の紹介でMACCHOくんが登場という。記憶力がすごくて、俺が出たコンテストのこともちゃんと覚えていてくれるんすよね。「お前もよく続けてきてるよなあ」とかって言われたり。MACCHOくんの紹介しながら自分の感情が入りすぎて。思い出話とかしちゃって。
ブロンクス 最近、上ちょ(上野氏)はライヴ中に熱くなることが多いよね。
上野 どうも感情的になりやすいんすよ。
ブロンクス それ、ヒップホップのネクスト・レヴェルだと思うよ。俺らは〈エモラップ〉って呼んでるけど(笑)。でも上ちょが男泣きしてると、逆にみんな大爆笑という(笑)。
上野 いやー、お恥ずかしい。MACCHOくんは、もう宝みたいなもんですよね。ライヴの時も年功序列的に行ったらDSがトリで当たり前なのに、やっぱMACCHOくんが後で。先輩からしても「実力的にヤバいんだからしょうがねーだろ」みたいな。
ブロンクス NYで言えばナズだよね。秘蔵っ子というか鬼っ子というか。あと“AREA AREA”で〈ここからそこ/エリアからエリア〉って言ってるだけあって、“YOUNG GUNZ”(OZROSAURUS featuring. M.S.A.D.O., MAGUMA MC'S)では地元を越えたコラボレーションがある。五分の兄弟として、色んな地方の筆頭の人たちと一緒にやり始めたのはMACCHOくんとかTOKONA-XとかMAGUMA MC'Sで。
上野 その辺の人たちはオレらのヒーローですよね。
ブロンクス 俺はマジでさんピン世代の人たちより思い入れが強い。……アルバムのこと、まだほとんど話せてないな(笑)。『ROLLIN'045』は“AREA AREA”が出た後だったから、もう良いのは分かってたんだよね。でもその予想のさらに上を行った。イントロからして傑作の雰囲気が充満してる。ロールプレイング・ゲームのオープニングみたいな。
上野 MACCHOくんが、このCDの〈場〉を支配しているなっていう。単にビートの上でラップしてってレヴェルでは全然ない。
ブロンクス これは多分……できすぎだと思うんだよね。その後のOZROSAURUSの作品も、もちろん好きだけど、やっぱこのアルバムだけは別格だと思うし。あと個人的にMACCHOくんだと“My Dear Son”がメチャクチャ好きなんだよね。子供の曲。
上野 サード・アルバムの『Rhyme&Blues』の曲だ。このアルバムもスゲェ良かったな。やっぱ。
ブロンクス 『Rhyme&Blues』の前にバイク事故があったんだよね。あの時はマジでイヤな噂が流れてきたりもして。でも、まだ完治してなくて杖を突いているくらいの時にライヴを見たら、すげーカッコよかったんだよ。
上野 まさに不死鳥のごとく復活しましたからねえ。やっぱりドラマを持ってる人ですよ。