キャッチーに磨きをかけた勝手サウンドの粋なクールネスに溜め息

結成10周年を迎えた昨年はカヴァー・アルバム『LET'S GET LOST』、そして今年7月には初挑戦となるオダギリジョー主演映画「たみおのしあわせ」のサントラ『ゼン・サマー・ケイム』をリリース。そして今回、2年ぶりとなる待望のオリジナル・アルバム『マイ・ライフ...』を完成させた彼ら。ダンディズムに貫かれたフィルム・ノワール風の歌詞にシビれる歌モノと、そこに挿み込まれたスリリングに展開するクール&ホットな高速ジプシー・ブラス調&高速スウィング・インスト・ナンバー、そしてトム・ウェイツばりの酔いどれブルースなど、どの曲も簡潔で一切の迷いなし。タイトで軽快で斬れ味抜群の全13曲すべてにおいて、懐の深い〈勝手流サウンド〉がこれでもか!と炸裂している会心作となった。
これまで〈ジャズ・パンク〉という形容もされていた勝手サウンドだが、今作ではアレンジ構成の精巧さ/明確さ、ポップさやキャッチーさを増したサウンドによって、誰もが楽しめるシンプルなスタンダード感を醸し出している。また、心なしか以前よりも言葉とメロディーを丁寧に発する武藤昭平(ドラムス/ヴォーカル)の歌声が、より心の奥に突き刺さってくるという印象も受ける。哀愁や混沌、痛みを感じさせる世界から、聴き進めるうちにだんだんポジティヴさと得も言われぬ生命力と希望の光が見えてくる。そんな物語を描き切る歌詞も流石で、サウンド同様、コイツらは相変わらずいちいちキザでカッコ良すぎるぜ。
▼勝手にしやがれの作品を紹介。