さまざまな角度から独自のR&Bマナーを追求してきた男がデビュー5周年……ベスト盤とフル・プロデュース作で魅惑の世界に酔え!!

歌やリリックのスタイルだったり、サウンドのあり方だったり、この地で育まれてきたR&Bはおおよそそうした表層的な部分のみで語られがちだ。が、本来R&Bにもっとも欠かせない〈エンターテイメント〉という側面を核心に据えながら、音楽的な魅力をマルチ・アングルで伝えてきてくれたのがHI-Dというシンガー/プロデューサーである。そんなシーンの第一人者であり、夢先案内人である彼もメジャー・デビューから5周年を迎え、新たなステージに向かって一気に加速しはじめた感がある。初夏のシーンを大いに賑わせたDJ PMXの“Miss Luxury”における客演でほとんど主役級のパフォーマンスを繰り広げた姿も記憶に新しいなか、今度はこれまでのキャリアを集大成したベスト・アルバム『Special List』がリリースされた。いままでいかに彼がR&Bにこだわってきたか、こだわったばかりに立ち塞がってきた壁をいかに打ち破ってきたか、さらにR&BはただR&Bであるだけで十二分にポップであるということをいかに証明してきたか……それらが同作にはクッキリと刻み込まれている。その足跡があまりに鮮やかであるばかりか、新たにレコーディングされた3曲では、ファンには忘れられない名バラード“君がいるから”のアンプラグド・ヴァージョン(むろんヴォーカルも録り直している)というビッグ・サプライズも含めて、いっそうクリアにアップデートされたHI-Dの姿を堪能することができるだろう。
また、それと同時に、HI-Dが総監督となったプロデューサー・アルバム『Special Calling』もLUIRE誌の監修でリリースされている。サウンドも彼自身のフル・プロデュース、そして彼自身のキャスティングによって女性シンガー/ラッパーが集まったコンピ的な体裁の同作でパフォームするのは、青山テルマ、山口リサ、ARIA、BROWN SUGAR、MIKU(YA-KYIM)、宏実、ANTY the 紅乃壱、ASAMI、CHIHIROという何とも豪華な顔触れである。この華燭の宴はまさしくR&B的なるエンターテイメントを具現化したものと言っていい。こうしたエンターテイン感覚が溢れ出てくるあたりもHI-Dの凄さである。彼自身のオリジナル新作に向けての期待も高まるばかりだ。
▼『Special Calling』に参加したアーティストの作品を一部紹介。