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第406回 ─ AZIMUTH

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/09/11   01:00
更新
2008/09/11   18:15
ソース
『bounce』 302号(2008/8/25)
テキスト
文/出嶌 孝次

極上のメロウ・グルーヴでレイドバック……

 日本でアジムスといえば、ラジオ番組「クロス・オーバー・イレブン」のテーマ曲云々という評価がいまなお支配的ではある。が、この40年以上のキャリアを誇るブラジルのフュージョン・トリオは、そんなFM気分だけで消費されるべき存在じゃない。特にファー・アウト移籍後は同時代のクラブ・ミュージックと相互に影響し合う形で前進を続けてきたわけだし、近年はアルチュール・ヴェロカイの復活に助力したり、メンバーのイヴァン・コンチ(ドラムス)がマッドリブと組んだジャクソン・コンチ名義で『Sujinho』を発表したり……やはり彼らは新しいリスナーにも親しまれるべきだろう。

 で、そんな好機に登場した新作『Butterfly』は、40年かけて培われた多様な〈アジムス感〉が凝縮された充実の一枚となった。クールなボサノヴァも粋なサンバもレイドバックしたムードにうっすら覆われ、演奏の円熟味がグルーヴにまろやかな陰影を与えている、そんな様子が美しく、メロウな夏の終わりだけを何度でも追体験できてしまうような名品だ。なお、件のテーマ曲“Fly Over The Horizon”を含む79年作『Light As A Feather』など、往年の名品も新作に合わせてリイシュー。そちらのエア・グルーヴ路線も当然悪いわけがないよ。

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