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第8回 ─ ディグの精神を身につけよ! ~BUDDHA BRAND『人間発電所』

連載
サ イ プ レ ス 上 野 の LEGEND オブ 日 本 語 ラップ 伝 説
公開
2008/07/03   18:00
更新
2008/07/03   18:16
テキスト
文/東京ブロンクス

希代のエンターテイナーにして、ヒップホップの未来を担うラッパー、サイプレス上野の月刊連載! 日本語ラップへの深~い愛情を持つサイプレス上野と、この分野のオーソリティーとして知られるライター・東京ブロンクスの二人が、日本語ラップ名盤を肴にディープかつユルめのトークを繰り広げます。今回取り上げるのは、BUDDHA BRANDの96年作『人間発電所』。ゲストには〈Da.Me.RECORDS〉を主宰するラッパー、ダースレイダーをお迎えしました!

●今月の名盤:BUDDHA BRAND『人間発電所』
DEV LARGE、CQ、NIPPS、DJ MASTERKEYの4人組=BUDDHA BRANDのメジャー・デビュー作となったEP。タイトル曲のほか、シャカゾンビをフィーチャーした“大怪我”など7曲を収録。“人間発電所”は、加藤ミリヤが2003年に発表した“Never Let Go”で大胆にサンプリングされたことでも話題を集めた。(bounce.com編集部)

ブロンクス 今回は臨時講師として、最近DEV LARGEさんとも仲の良いダースレイダーに来てもらいました!

上野 『人間発電所』に入っている曲は、“ILL伝承者”“人間発電所”“大怪我”……。“人間発電所”はむちゃくちゃクラブ・ヒットでしたよね。あと“大怪我”は2ヴァージョンある。シャカゾンビの方に入ってるのが〈輸血MIX〉で、こっちが〈ILL JOINT STINKBOX〉。

ダース “大怪我”はマスタードン・コミッティの替え歌だよね。

ブロンクス 「ナナナナ~」ってやつね。EL DORADO*1周辺って替え歌のサビが多かったよね。
*1 DEV LARGEが主宰していたレーベル。

ダース “El Dorado Throw Down”からして、(アフリカ・)バンバータの“Zulu Nation Throw Down”だもんね。

上野 (D.Lの)“盲目時代”もそうですよねえ。

ダース NIPPSのリリックだって、要するに向こうのラップの翻訳なんだよね。有名な〈知ったふりしろ〉も〈Act Like You Know〉でしょう。〈いかれた言語感覚〉とか言われてたけど、あれは英語のパンチラインを日本語に無理やり訳すってとこから生まれてる。

ブロンクス でも、その元ネタにしてるのがウルトラ・マグネティックMC'sなんだから、やっぱりいかれてるって言っていいんじゃないかな。ウルトラはいかれてるからね。

ダース 〈Like~〉って日本で最初に使ったのもブッダ(・ブランド)じゃないかな。

上野 〈Like 小学生のPUSSY〉*2とか。そうですねえ。
*2 “人間発電所”のリリック。

ブロンクス それは俗に言うメタファーってやつだよね。当時NYで主流のラップのスタイル。

ダース うん。それを忠実にやってるグループなんじゃないかな。替え歌だってもともとは、NYのオールドスクールの発想なわけじゃない。

上野 その影響で、当時はみんなが自分のスタイルを何かに例えてましたからね。〈まるで~〉とか言いまくってた(笑)。

ブロンクス ブッダ人気で、当時ウルトラの音源が再発されてたよね。ブッダが使っていた〈ILLMATIC BUDDHA MC's〉って名前がそもそもウルトラだし。

ダース DEV LARGEさんって勝新とかの声ネタをいっぱい使ってたじゃない。あれはウータン・クランが93年くらいにカンフーのネタをがんがん使ってるのを聴いて「やばい、早く日本の声ネタを使わないと先を越される」って思ったらしい。

上野 日本のやつに使われるんじゃなくって、ウータンに使われると思ったんだ。その危機感もすごいですね(笑)。

ブロンクス 確かにブッダは映画ネタもめちゃくちゃ多いよね。「御用牙」とか「110番街交差点」とか……。

ダース ブッダはNYで同じ部屋に住んでた時代があって、その頃に映画を一緒に見てたんだと思う。だからその辺もウータンと一緒なんだよ。あの人たちも、RZAとGZAが少林寺映画とかを「これ面白いぞ」ってみんなに強引に見せてたらしい。それがリリックにいっぱい出てきてるわけで。


『人間発電所』オリジナル盤のジャケット

上野 素晴らしいなあ。『人間発電所』は……96年かあ。衝撃の〈腹に万札〉ジャケ。

ダース あれと同じ写真を、俺もオショウと撮ってた。千円札を使って「安いよ~」とか言いながら(笑)。あのジャケはMASTERKEYがちょっと前かがみで内股気味になってるじゃない。「なんでこんな格好してるのかな」って思ったら、ちゃんと元ネタに合わせてる。

上野 細かいなあ(笑)。いやあ、すごいっすね……。

ダース その辺はほんとにすごいんだよ。でもさ、そういうネタを感じさせるアートワークっていうのも減ってきたよね。

ブロンクス 最近は一周したのか、ヒップホップからネタを持ってくることが多いよね。サンプリングって言うよりパロディーみたいな。

ダース どこから持ってくるかってのが重要だったわけだからね。ブッダはその点、劇画も読んでるし、映画も見てるしっていう。

上野 明らかに太刀打ちできない貯蔵量を感じさせてましたからねえ。指黒同盟とかやってましたよね。

ダース そういう名前も彼らはいっぱいあるからな。A.K.Aを多用する。大峠雷音とか仏陀の旦那とか。

上野 どまぐれ気質なハスラー坊主とか。ILL竿師、イルコスギーってのもあった(笑)。

ダース あのA.K.A感もいまはないよねえ。

上野 そういうヒップホップの見せ方っていうのをいろいろ教えてくれた。

ブロンクス わざと怪しい雰囲気を醸し出してるところはあったよね。

ダース そうそう。なんだかよくわかんないんだ。「ブッダ・キャンプには何人も修行してるやつらがいて……」とか言って。

上野 DJ雪印さんとかNUMBさんとかですよね。

ダース みんなDJなんだよね。ラッパーいないなあって(笑)。

ブロンクス まあでも当時のNYだと、日本人はラッパーよりDJの方がやりやすかったんだろうね。

ダース CQさんも、もともとはNYのビル1軒が丸ごとクラブみたいなところの雇われDJだったんだよ。しかも、クラブのマネージャーもやってたんだって。