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第373回 ─ DLG

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/07/03   02:00
更新
2008/07/03   18:33
ソース
『bounce』 300号(2008/6/25)
テキスト
文/佐々木 俊広

伝説のサルサ・ユニットが再結成! みんな待ってましたよ~ 


  80年代からのマーク・アンソニーやインディアといったスターの台頭を受け、マスターズ・アット・ワークによるニューヨリカン・ソウルの爆発前夜……NY発のクロス・カルチュラルなラテン・ミュージックが幾度目かのピークに達しつつあった96年にRMMの名プロデューサー、セルヒオ・ジョージの後押しによって登場したダーク・ラテン・グルーヴ(DLG)。アイドル的なルックスで人気を博したヴォーカリストのヒューイ・ダンバーと2人のMCによる、サルサを土台にしながらヒップホップにレゲエ、R&Bをスマートにミックスさせたサウンドは〈レゲトンの遠縁〉と言えるかもしれない。90年代に3枚のアルバムを残して長らく活動停止状態だった彼らだが、このたび8年ぶりとなる新作『Renacer』を引っ提げて再結成となった。

 オリジナル・メンバーの2MCは変わらずだが、劇的に変化したのは女性ヴォーカリスト、ミス・ヤヤの加入。ヒューイと比較しても遜色ない、どころかジャジーなバラードからミッドテンポのメレンゲ、レゲエ曲にまで柔軟に対応する様はすでに貫禄十分だ。そんな彼女の華のある歌声によって超ポップに味付けされた今作を聴くと、セルヒオが再結成を思い立ったのも実は彼女の存在があったからでは?と勘繰ってしまうほど。加えてネス、ナポレス(フラグメント・クルー)といった同世代の仲間たちも駆けつけて、新曲はもちろん“Juliana”“No Morira”などの自身のヒット曲、そしてラウラ・パウジーニ“Quiero Decirte Que Te Amo”、セリア・クルース“Toro Mata”、クリスティーナ・アギレラの“Pero Me Acuerdo De Ti”などかつて彼らがカヴァーした曲を〈焼き直し感〉を微塵も感じさせずに再演。いままで以上に抜けの良い音が痛快だ。そのように多彩な楽曲を披露しようともサルサの本質、そしてDLGとしてのアイデンティティーは揺るがないことを証明してみせた『Renacer』。〈温故知新〉という言葉はこのアルバムにこそ相応しい。


DLGのニュー・アルバム『Renacer』(La Calle)

▼ダーク・ラテン・グルーヴの作品を紹介。