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第30回 ─ マザーズ抵抗

連載
踏 切 次 第
公開
2008/06/12   22:00
ソース
『bounce』 299号(2008/5/25)
テキスト
文/次松 大助

次松大助が見つめる、とある町の日常──


  ここ最近月を見ないなぁと思ったら、夜中の2時半頃に東の空の低い辺りに出ていました。そういうことか。

 カリフォルニア州のある高校生たちの実験でおもしろいものがありました。乾電池と割り箸と小型のモーターと輪ゴムを使った〈簡易自停止マシーン〉とでもいうような簡素なロボットで、スイッチを入れるとモーターが作動して割り箸のアームがみずからの乾電池を弾き飛ばし、強制的に停止する、というものでした。

 ところが、この実験を繰り返すうちに約8000回に一度、0.0125%という有意義な確率で、アームが乾電池を弾く前に何らかの理由でロボットが停止することが判明しました(無論、電池の残量やモーターの駆動率は一定以上を保った状態で行われています)。この実験はその後、同州の大学の研究室へと引き継がれ、より誤差の少ないようにアルミ製のアーム、バネなどに取り替えられ、電池とモーターの間に測定機を取り付けて行われました。その結果、やはり8000~1万回に一度の割合でロボットが作業途中で停止することがわかり、ロボットが不可解な停止を見せるその際に、必ずある一定の電気的なノイズが測定機に記録されていることが判明しました。ロボットが一時的に自殺を拒む、ためらうように見える様子から、研究員たちはその電気ノイズに〈マザーズ抵抗(信号)〉と名付け、コンピュータで解析し、次にラットを使った実験を行いました。

 A群のラットとB群のラットを水槽に入れ、それぞれ肢が付く程度に水を浸し、A群の水槽にはマザーズ信号を、B群の水槽には逆相にしたマザーズ信号を一定間隔で流し続けるという内容です。すると、成長途中のラットに限り、A群とB群のラットに変化が見られました。マザーズ信号を受けたラットの体は通常のラットよりも平均して1.25倍大きく成長し、代わりに寿命は4分の3程度、一年満たないうちに死んでしまいました。対して、B群の、逆相に変換されたマザーズ信号を受けたラットは平均の4分の3程度の成長に止まり、代わりに1.5倍もの寿命を持ちました。同大学はさらに2007年度から動物性たんぱく質にこのマザーズ信号を与えるという実験を……。

 ……という、去年のエイプリル・フールに思いついた嘘の話でした。本当にごめんなさい。

今月のBGM

ITZHAK PERLMAN
『Khachaturian : Violin Concerto』

EMI Classics
買った当時(10年近く前)は曲のことも演奏のこともよくわからなくて、やたら早弾きで、暗くて好きになれなかったんですが、これを「トムとジェリー」だと思うとすごく愛らしい短調に聴こえ、一転して好きになりました。

PROFILE

次松大助
99年に大阪で結成されたスカ・バンド、The Miceteethのヴォーカリスト。バンドのアルバム『07』、ソロ・プロジェクトである箱のファースト・アルバム『long conte』が好評リリース中。曲作りや練習に明け暮れる日々。その他の最新情報は〈www.miceteeth.net〉にて。