「もともと公私共にお付き合いがあって。僕も、ラップの人だと思っていたんですけど、『建設的』に入っている“だいじょーぶ”という曲が、いとうさんがファルセットで歌うラヴァーズ・ロックで。ラヴァーズのパイオニアでもあったんだ!って」(ザッキー、ギター/ヴォーカル)。
「俺が日本語でラヴァーズをやってきたことは、いままで誰にも省みられなかったから。そんな求められ方をされたのが嬉しかった」(いとうせいこう、ヴォーカル)。
いとうせいこう&POMERANIANS≡というユニットは、日本語ヒップホップのパイオニアとして知られるいとうせいこうが、ダブ~レゲエにおいても先見性があったことがPOMERANIANSによって再度〈発見〉され、〈世の中に知らしめないと〉という思いからスタートした。このたびリリースされたアルバム『カザアナ』は、ラヴァーズ・ロックのスウィートさ、肉体に直接訴えるダブ感、それら裏打ち音楽の説得力がポップスのフィールドで表現されたものだ。いとうとPOMERANIANSがせめぎ合い、エンジニアのDUB MASTER Xやかせきさいだぁ≡といったゲストが、両者にないものをさらにプラスしている。テーマは、タイトルにも使われている〈風〉。それは、いとうの提案によるものだったという。
「歌詞を書いているうちに、〈風〉という言葉が何度も出てくるようになって。ダブって、音というより振動でしょ。原始的で、変化をもたらすものだから、風みたいなもので。あと、最近のポメは凝り固まって自己規定が狭くなっているように感じたから、〈カザアナを開ける〉っていうのはポメへのメッセージでもあるわけ。四方を見渡せばもっと広い世界があんだぞ、大人のダブ界は本当にヤベエんだぞって。まあ、今回はいい勝負ができてると思うよ。ポメが調子に乗らないように言っておくと(笑)」(いとう)。
「やりたいんだけど、どう表現したらいいのかわからないことを、いとうさんとDUBさんが形にしてくれた。いとうさんが大人気ないくらい真剣にくるから、こっちも遠慮なんかしてられなかったし。大人の方法論も勉強になったし、大事なのは気持ちだってことも学びました」(ザッキー)。
エンターテイメント性が高く、音楽性はもっと高い。『カザアナ』の奥からびゅうびゅう吹いてくる風は、この夏多くの人々の細胞を震わせるはずだ。
▼POMERANIANSのアルバムを一部紹介。