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第28回 ─ 宇宙人についての仮説(2) ~こりん星の観光事業について

連載
踏 切 次 第
公開
2008/04/03   02:00
更新
2008/04/03   17:13
ソース
『bounce』 297号(2008/3/25)
テキスト
文/次松 大助

次松大助が見つめる、とある町の日常──


●まず、通貨について

 〈青い海、青い空、緑の山、白い砂、地球!〉というパンフレットの惑星旅行だとしても、「地球ノ〈わに〉テ恐竜ノ皮ノばっぐガ丈夫デぴかぴかラシイデ」とか「チッサイ島ノ一部デ売ッテル〈タコヤキ〉テイウ〈コナモン〉ガウマイラシデ」という情報を宇宙人が得てしまったら、欲しくなる、食べたくなるというのが人情でしょうから、こりん星ほどの文明惑星での観光事業においては、当然〈ショッピング〉もツアーの重要な一部として組み込まれていると推測されます。それに際して問題となるのが〈通貨〉です。りんごももか姫(ゆうこりん)いわく、こりん星の通貨は〈もも〉という単位なので、地球でショッピングする為には〈もも〉を(おそらくは)〈ドル〉に変換しなくてはいけません。その為、観光会社は多額のドルを(前回記述した理由により)秘密裏に用意しなければなりません。とはいえ、額が額なだけに〈西成のガード下で裏ビ○オを売る〉というやり方では到底賄いきれず、欲を言えば〈石油王〉くらいの収入が欲しいはずです。しかし、地球をリゾートと考える彼らの場合、〈石油を掘り当てる技術〉を売ることはしても、〈石油自体〉を売ることは考えにくいです。有限であり、油田の所在地に国が絡んでくるからです。結果、僕がいちばんスムーズだと考える仮説は、〈ビル・ゲイツりん説〉です。1.いままで地球にあった素材で、2.いままで地球に無かった技術(システム)を生み出し、3.多額の通貨を安定して得ている、という理由です。ビル・ゲイツ自身がこりん星人である必要はありませんが、ビル・ゲイツを通じてこりん星人が地球の通貨を得ているということです。

●その他、観光についての規約

 これだけ惑星観光が発達したこりん星においては、観光先の環境保持(保存)に対して慎重に配慮しており、そのなかでも顕著な例が〈有機化合物保護法(税)〉です。例えばこりん星人がおみやげにワニ皮のバッグを買った際、帰りの税関でワニ皮バッグに含まれるタンパク質などの量に応じて税金を徴収し、同量のタンパク質を後日地球に返還する、という規約です。これは観光先の惑星自体の成分バランスを保つ為であり、ひと昔前、牛の体に穴をあけ、臓器が抜き取られる事件が報道されましたが、それはこりん星人の化学チームが〈地球性のタンパク質〉を効率的に培養・生成するのに牛の臓器がもっとも適した素材であると判断した為です。それにより、こりん星で量産された准地球性のタンパク質は約3か月に1度地球に届けられます。規約にはその他、〈地球の食糧を摂取した場合には、地球で排便してから帰ること〉も義務付けられています。

今月のBGM

TAKACS QUARTET
『Bartok : 6 String Quartet』

Polydor
今月はとじた蛤のように眠っていただけなので音楽はほとんど聴いていません。ので、いつか1万円拾ったら買いに行こうと思っているCDを紹介します。確か高価な逸品だった気が……。

PROFILE

次松大助
99年に大阪で結成されたスカ・バンド、The Miceteethのヴォーカリスト。バンドのアルバム『07』、ソロ・プロジェクトである箱のファースト・アルバム『long conte』が好評リリース中。ただいま曲作りに専念しているところ。その他の詳細は〈www.miceteeth.net〉にて。