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第325回 ─ SCUM PUNKS

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/04/03   02:00
更新
2008/04/03   18:49
ソース
『bounce』 297号(2008/3/25)
テキスト
文/吾郎 メモ

USにはこんなにも過激なパンク・シーンもあるんです!!

 USパンク・ロックのカルトな側面を象徴する2組を捉えた映像作品が、それぞれ同時に日本盤化された。一本はサイコビリーのパイオニアとも言われるクランプスが78年にカリフォルニアの精神病院で行ったフリー・ライヴのDVD「ザ・クランプス 精神病院ライブ」。ターゲット・ヴィデオ所蔵の映像で、ファンの間ではすでに出回っていたものである。当時は革新的であったホラー的な解釈のロカビリーを演奏するクランプスに戸惑いながらも反応し、感じるままに踊り盛り上がるオーディエンスの姿はライヴDVDとしてもかなり異様なものだといえよう。初期のヴィデオ・カメラ特有の粗っぽいモノクロ映像がその〈異様さ〉をさらに際立たせ、恐ろしさすら覚える。そしてもう一本はステージで全裸になり、みずから排泄した糞便を撒き散らすなど暴力的なパフォーマンスで知られるGGアリンのドキュメンタリーDVD「全身ハードコア GGアリン」。本作もブート盤が一時輸入されていたが、このたび字幕入りで正規リリースされ、作品への理解がより深まることと思う。ヘイト・アティテュード全開のGGに密着し、観客やメンバーの証言も織り交ぜながら、その狂気と形容されるような彼の態度と行動を紐解こうという試みがなされた内容だ。

 これら2作品は観客のひとりが証言するように見世物小屋的ワルふざけなのだろうか……とも一瞬思うが、そんな簡単に片付けられるものではない。クランプスとGGの両者に共通して感じるのはロックンロールに対する深い愛であり、ゆえに真剣になりすぎて極端になっていってしまった、ということ。加えて、GGの場合は世間に対する疑問や怒りを多数抱えており、それを突き詰めていった先にあのようなスタイルが完成されたとも取れる。この2組はアンダーグラウンドとはいえかなり有名な存在ではあるのだが、やはり知らない人が観れば大きな衝撃を受けるだろう。しかし、USのアンダーグラウンド・シーンはここまでの振り幅をごく普通に持っている、という事実を知っていても損ではないと思う。ヒット・チャートに入るようなものとは対極にありながら、またこれもひとつの真実なのだ。